アイのミツに濡れる
「おはよう」
同じ学年のサークル仲間の女の子
「おはよう」
私も同じように壁際に座り、その練習姿を見ることにした。
ジメジメとする空気は体育館の中にも漂っていた。ただ立っているだけで汗ばんでくる。
「はあ……もうすぐサークルにも出られなくなるねぇ」
卯月がしみじみと呟く。
「そうだね」
「大学祭が私達の最後の舞台になるかもね」
「でも、ダンスはやれるんじゃない? 社会人になっても」
「そうだけどさぁ、こんな風にみんなとダンスできるかどうか分かんないじゃん」
「かもねぇ」
「あ、そっか。ダンス教室に通えばいいんだよね?」
「ダンス教室ねぇ~。どんくらいかかるんだろう?」
「あ、それがあったかぁ」
卯月は頭を抱える。
「安い所なら探せばあるでしょ」
「ダンス教室に通えるお金を確保できる仕事に就かないとなぁ。それかー、ダンス教室を自分で開いちゃったりね」
「え!? 自分で開くの?」
「良くない!? 自分のダンス教室」
「卯月のダンス教室かぁー」
私は苦笑いを浮かべる。
「何でそんな嫌そうな顔すんのー?」
「いやだってさー」
「なに?」
「卯月が指導してたら生徒が置いていかれそうな気がする」
「うっ……痛い所を」
卯月はダンスサークルの中でも一目を置かれている。だけど、人にダンスを教えるのは苦手なのだ。それを本人も自覚しているようで、渋い表情をしている。
「あ~! 手頃な値段でダンスできたらいいのになぁ」
「お金があっても時間があるかどうか」
「そういうのは無理矢理作るのが大人でしょ!」
「そう?」
「そうよ! 仕事だけの日々なんてあり得ない! ノーダンス、ノーライフ!」
「全然カッコよくないよ?」
「うるさいなぁ~」
☆ ☆ ☆ ☆
サークル活動を終え、卯月を含めた女友達と一緒にカラオケに行くことになった。私は久々に女同士で楽しもうと大学を出た。
何を歌おうかと考えながら友達と歩いている最中、私の携帯が鳴った。
私は携帯をポケットから取り出し、画面をつける。佐々木君からのメールだった。
『今日会える?』
私は少し思慮してメールを返した。
『ごめん、今日はいいや』
私は携帯をしまってカラオケ気分を楽しもうと思った。
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