Thesaurus

くるみ

特別な一日



の国から切り離された島。

その名もスエルテ島。

ここは交易の島として栄えている。



「失礼します」



——トントン



「お嬢さま?まだ寝ておられるのですか?」



部屋のノックにも応じない様子から、グレイスは小さくため息をついた。



「全く…。今日はお嬢様の成人のお祝いの日だというのに…」



今部屋で眠っているであろう




「入りますよ?」



——ガチャ



部屋に入ってベッドに近寄れば、案の定すやすやと眠っている少女。

彼女の名前はクラリス・ティア。



「お嬢さま!起きて下さい!」



そんな彼女の執事であるグレイスことセイルド・グレイスは小さな体を揺する。



「ん、あと十分…」



しかし夢うつつの状態で毛布を被り直すティア。



「今日は騙されませんよ?

前にそう言って一時間お眠りになっていたことは忘れてませんからね」



そう言うが一向に起きそうにない彼女をみやるとグレイスはシャッとカーテンを開けた。



「グレイス…。眩し…い」

「ええ。今日はとてもいい天気です!

さぁ、早くお着替え下さい!」



「ん…」



ほらっ、という掛け声とともにティアがかけていたブランケットがバサッと剥ぎ取られる。



「さ、寒い…」



その声もまるで聞こえないかのようにグレイスはテキパキとブランケットを片付けると部屋の窓も開け放った。



「ちょっと!グレイス!」



ティアが慌てて立ち上がるとグレイスは嬉しそうな表情を浮かべる。



「お嬢さま!やっと起きられたのですね!ではそのまま鏡台の前に座ってお待ち下さい。髪をお結びします」

「……はぁ」



あまりのグレイスの強引さにため息をついたティアは大人しく鏡台の前に向かった。



「今日は特別な日ですから盛大に…」



ティアが座った椅子の後ろで鏡を見ながらぶつぶつと呟くグレイス。



——トントン



「全く。こんな時間に誰です…?」



それを遮るかのようなノックの音に少々苛立ちを隠せなかった彼はティアに断りを入れてからドアに向かって歩いて行った。



「はい。全く誰で「「「お嬢様ー!!」」」ぶぇっ」



物凄い勢いで突進してきた何かによってグレイスは思い切り吹き飛ばされた。



「グ、グレイス?!大丈夫?!」

「お嬢様……。大丈夫です…よ」



床で伸びきっているグレイスに駆け寄って声をかけるティアはそのまま扉に目をやった。



「もう!ディアにヨルア!危ないでしょ?」



そこに立っていたのは金髪の長い髪を一つに結わいた少女と青い髪をお団子に結った少女だった。


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Thesaurus くるみ @yume_koi

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