3
モーフィアスとハイド二人はアパート内に入る。深夜なので一階のロビーには誰もいない。
モーフィアスは腕時計を見る。深夜の一時過ぎだった。
「何か飲もう」
モーフィアスはロビーから共同リビングに入る。
「何を飲むんだよ」
「まぁ何かあるだろう」
モーフィアスは冷蔵庫を開け、牛乳を取り出した。紙パックには、セシルと緑のマジックで名前が書いてあった。
「牛乳でいいだろ?」
「俺、牛乳飲むと腹痛くなるんだ」
ハイドはソファに座る。
「じゃお前はなしだ」
モーフィアスはシンクの横に逆さで置いてあるのグラスを手に取り、匂いを嗅いでから、それに牛乳を注ぐ。
「うまいか?」
「まぁまぁだよ」
モーフィアスは紙パックに書いてある成分表を見る。
「そういえば、ジョンの奴が出所したらしいな」
ハイドは胸ポケットから煙草を出す。一本取り出して、口に咥えると、マッチで火をつける。
「知ってるよ」
モーフィアスはグラスに残っていた牛乳を一気に飲み干した。グラスの内側には白い粘膜のようなものが張り付いていた。
モーフィアスはシンクに水を落とし、その水流にグラスの縁を差し込んだ。たちまち白く濁った水でグラスが満たされた。
「十年だよ、あいつが服役してから」
「パフは何か言ってるのか?」
モーフィアスはグラスを満たしていた白濁の水をシンクに流す。
「知らないよ。パフは俺のボスじゃない」
「そりゃそうだ」
「けど、もう十年も前の話だ。ジョンがこの街に戻ってこなければ、何も起きないだろうよ」
「もう終わったことだからな」
シンクの中に、濡れたグラスをモーフィアスは置いた。ハイドは煙草の煙を口から吐き出した。
「そろそろ、行こう」
モーフィアスは牛乳を冷蔵庫に片付ける。
「ちょっと待てよ、俺はまだ吸ってるんだよ」
「俺はもう飲んだ」
「じゃ一人で行けよ、俺はこれを吸ってから行く。三階の二号室だろ?」
「ああ」
モーフィアスは共同リビングを出て、階段に向かった。
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