第20話 俺の命令
少女は俺を虚ろな目で見ていた。
「お前、誰だ」
「私はある方のお使いで来たの」
少女の目は絶望を見ている様な、光がない目だった。まるで何もかもが色がない様な。
「そのある方って誰だ」
「……ついて来てみれば分かる」
そう言って少女は俺の腕を握った。すると一瞬で森の中に入った。
「ここは……」
俺が見渡していると少女は前へと歩いて行った。とても薄気味悪い森の中へと……。
何分歩いたのか分からない。だが、少女は歩き続けていた。
「おい、どこへ行くんだ」
少女の肩を掴み、目をじっと見て頭の中をのぞいた。だが、少女の頭の中は暗闇しかなかった。
しばらくして森の奥から男が出て来た。
「初めまして、ノア=シュレインゴッツくん」
「誰だ、お前」
俺は腰にさげていた剣の鞘を掴み、男を睨みつけた。
「そんな怖い顔をしないでほしいな。俺はただ君を我が屋敷に招待しようと思っただけだよ」
「そう言う奴は大抵俺を何かに利用しようとしている。それが何なのかは分からんが」
俺は能力で男の目を見て心を読んだ。
『さすが賢者の孫と言ったところか。まあ、何故あの方が興味を持ったのか分からないが』
俺は少し笑った。
「何がおかしいのかな?」
「いや、お世辞を言わず本音を言った方がいいと思っただけだ。あの方ってのはあんたもあった事がない人らしい。用件も知らされていないのに呼びに来るとは信頼しているんだな」
『この餓鬼。調子に乗りやがって』
「悪いが、俺はあんたよりも強いんだ。それに図星突かれてむきになってんじゃねーよ」
俺がそう言うと男は俺に刃物を向けて突っ込んできた。
「おっと。あぶねーな。そんな殺気だだもれで俺を殺せると思ったら大間違いだ。それにお前、もう歩けないぞ」
そう言った俺は足を指差した。男が足を見ると片方の足が無くなっている。
「あがぁぁぁぁぁぁ!!」
「あんたの動きは遅い。それじゃ、もう片方も行っときますかー」
俺が剣を抜くと、小刀が後ろから飛んできた。
「やっと出て来たか、ボス」
それはやせて眼鏡をかけたインテリ君の父親っぽい人だった。
「私の部下が失礼したな。だが、その辺にしておいてくれないか」
「いいが、条件がある」
「なんだね?」
俺は少女を抱き寄せた。
「こいつは俺が貰う」
「……いいだろう」
俺はにやりと笑って指をパチンと鳴らした。
「なっ!」
男はとても驚いた様に横たわっていた男を見ていた。
「幻覚魔導だ。俺はこいつに傷をつけてなんていない。つまりあんたは俺の魔導の術にまんまと引っ掛かってくれたってわけだ。あ、さっきの条件は有効な。口約束とはいえ約束は約束だ。んじゃ、ばーい!」
俺はそのまま”
「流石賢者の孫という訳か……」
部屋に帰った俺は少女をソファに横たわらせた。そして頭に手を乗せ、詠唱を始めた。
「深淵の闇に沈む意識よ、闇の彼方より目覚めん。”
そうして少女は目を覚ました。少女の目にはすっかり光が戻っている。
「こ、ここは……」
「ここは俺の家だ。お前、家は?」
そう言うと驚いたような顔をして俺を見ていた。だが、状況を理解したのか少し顔がスッキリしていた。
「わ、私、家がないんです。元々奴隷の身でしたので。家族もいません」
「そうか」
俺はこうなる事をある程度考えていた。そして俺は少女の顔と同じくらいに膝を折って話しかけた。
「じゃあ、俺の家族になってみないか?俺の妹って事で」
そう言うと喜んだ様子でソファの上に立った。
「で、でも、あなた様に迷惑だと思います。只でさえ助けていただいたと言うのに、その上家族にしてもらうなんて」
「じゃあ、こうしよう。お前は今何歳だ?」
「歳は6つです」
「じゃ、成人。つまり、10歳になるまでこの家にいて成人になったら俺やお世話になった人に恩返しをすればいい。取り敢えずお前は成人になるまで俺の手元にいろ。これは命の恩人である俺からの命令だ。分かったな?」
そう言うと少し泣きながら少女は「はい!」と答えた。
「よし。んじゃ、これから出かけるから着替えないとな。取り敢えず、リビアが昔来てた服を渡すから」
そうして俺はリビアの部屋から洋服を出した。
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