第18話 目に見えない成長

アリサに魔導を指導して早1ヵ月が経った。細かった腕は少し筋肉質になり、足もちゃんと筋肉がついていた。もう試験の前日。だが、アリサはまだ納得できていないらしい。まだ自分が無力だと思っているのだ。

「ノア様。私、一度しかカリストファー様に勝てていません。なのに昇格なんて……」

「まあSクラスのカリストファーに一度勝てればいいんじゃないのか?それに、お前は十分強いと思うがな」

「ありがとうございます。お世辞を言っていただいて……」

「お世辞じゃないよ」

そう言ったのはアダムだった。

「ノアってお世辞とか冗談が嫌いなタイプなんだ。だから、絶対言わない。つまり、本心で言っているんだよ」

「そうだぜ!それにアリサちゃんと戦って俺も成長したんだ!だから大丈夫だって!!」

「でも……」

「ったく。じゃあ、こっちに来い」

俺は腕を掴んで、ある所に連れて行った。

「ここは?」

「杖を持て。そして自分の一番特異な魔導を出してみろ」

俺は強引に魔導を出させた。

「炎よ来たれ。紅蓮の詠奏。”炎球ファイヤーボール”」

そう唱え終わると途轍もなくでかい球が出て来た。

「こ、これって!!」

「これはお前の実力の10分の1に過ぎない。そして今のお前ならできる魔導を教えてやる……」

そうして、試験当日になった。そこにはガングさんも立ちあいをしていた。

「まじかよ。国王陛下直々に見に来るなんて……」

「まあ、王女の御三方がいれば見にも来るだろ」

それもあるだろうが絶対俺も見に来たな。あの人。

俺はすぐに試験が終わった。終わった時にすぐ向かったのはアリサの元だった。

「アリサ」

「ノア様。皆さんも」

俺は肩を持って優しい声で言った。

「大丈夫か?」

「は、はい。だ、大丈夫れす」

「思いっきり噛んでるじゃないか。まったく」

そう言うと、アリサは少し顔を赤くして俺を見た。

「あ、あの、お願いを聞いてもらってもいいでしょうか?」

「ああ」

「その、抱いてもらってもいいですか?名前が呼ばれるまで」

そう言うと、俺は「お安い御用だ」と言って抱いた。

「ありがとうございます」

そして3分くらい経った時、アリサの名前が呼ばれた。その瞬間にアダム達が到着した。

「アリサ=レーヴェンハルト。前へ」

「は、はい!」

俺はカチコチの肩を持って言った。

「大丈夫だよ。だから自信を持ってね!」

「俺に勝ったんだ!大丈夫だぞ!!」

「お前は一生懸命やった。いつも通りにすれば何とかなる。まあ、試験に合格したらご褒美というか、俺が何でもしてやるから」

そう言うと、とても嬉しそうにアリサは返事をした。

「はい!行ってきます!!」

そう言うと、堂々と歩いて行った。

「魔導が満たなければ、そなたは退学だ。分かっておるな」

「はい」

そう言うと、大きく深呼吸をして俺達の方を見た。俺はコクリと頷いた。

「精錬の風よ、私の呼びに答えその力を現し給え。”聖なる風ホーリーシルフィード”」

そう言うと竜巻が起こった。そしてその竜巻の前でまた杖を構えた。

「豪炎の炎よ、私の呼びに答えその力を現し給え。”大球の炎バルフレイム”」

そう言うと、炎と風の魔導を上乗せした炎の風を生み出した。

「文句なしの合格じゃ!そなたはSクラスへ昇格じゃ!!」

そう言うと、試験場は歓声で賑わった。そしてアリサは俺に抱きついて喜んでいた。

まあ、いつもなら抵抗するだが今回は許すとしようかな。

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