第8話 友人?の頼み
待ち合わせの場所に行くと、カリストファーが立っていた。
「よっす!ノア」
「ああ。で、用って何だよ?」
そう言うと、カリストファーはショックを受けたような顔で俺を見た。
「そんな冷たく…俺達友達だろ?!」
「え、そうだったの。ごめん、今知ったわ。てか、早く用件言えよ」
俺はそう言ってカリストファーを蹴った。蹴ったと言っても、ポンッと押しただけだ。
「いや、特に用件は無い」
「あっそ。じゃ、俺帰る」
そう言うとカリストファーは俺の足にしがみ付いた。
「すいません!あります、あります!!」
俺は取り敢えず、馬車に乗った。こいつ、多分話聞くまで俺に付きまとってくるだろうし。
「実はさ、俺の妹が消えたんだよ」
カリストファーは真剣に俺を見てそう言った。
「いつ」
「昨日の夕方、友達と会ってくるって言って帰って来ないんだ」
「お前がいるからじゃん?」
「真面目に答えろよ!!」
「めんどくせぇーな。で、俺にどうしろと言うんだよ」
そう言うとカリストファーは俺の肩を持って必死な目になっていた。
「言わなくても分かるわー。この前の試験で俺の魔導を見てこいつなら!みたいな感じだろ?」
カリストファーはコクリと頷いた。正直、こういうことはあまり好きじゃない。てか、めんどくせぇ。
まあ、友人(カリストファーの中では)に頼まれちゃやるしかないけど。
「もちろん、報酬は用意する……」
「報酬はいらない。つーか、お前に貰っても嬉しくない」
「んだと!嬉しくないってなんだよ!?」
「うるさいな、耳元で叫ぶな。耳がいてぇだろうが。この俺が引き受けてやるって言ってんだ。有難く思えよ。それと、お前も付いてくるんだからな」
そう言うと、カリストファーは笑みを浮かべてから「もちろんだ!」と言った。まあ、一応俺は家に帰るんだけどね。
「ただいま」
「どうした?そんな顔して」
「え?ああ、ちょっと出てくる」
そう言うとリビアの顔は一瞬にして戦場を楽しんでいる人間の顔になった。
「お前の出てくるは大抵危ない事だが、ちょっと違うようだな。そこまで言ってくるんだ?」
「鉱山跡。言っておくけど、あんたは来ないでよ。連れがうるさいから」
「分かっている。男の戦いに私が入るわけがないだろう?」
「嘘付け」
俺は笑って家を後にした。
俺は待ってもらっていたカリストファーの元へ行った。
「準備はいいか?」
「あ、ああ。でも、場所なんて分かるのか?」
その疑問に俺はフッと鼻で笑った。
「妹の名前と特徴は?」
「えっと、名前はエミリア。髪が腰まであって髪色は赤。背丈はお前よりも少し小さいくらいだ。これくらいで大丈夫か?」
「ああ。十分だ」
俺は地図を地面に広げ、目を瞑った。
「”
そう言うと、地図は赤い小さな光が灯った。
「見付けた」
「見付けたのか?」
「ああ。そう遠くない。それに、ここ行ったことあるな」
そう言うとカリストファーは飛ぶ気満々で俺を待っていた。
「え、飛んで行くのか?」
「え、それ以外に何があるんだ?」
「あるぞ。超簡単で楽な魔導が」
そう言うと、カリストファーはもっと早く言えと言わんばかりの顔で俺を見ていた。
「お前、分かり過ぎだろ」
「え?」
「何でもない。取り敢えず、俺の肩に捕まっておけよ」
カリストファーは慌てたように俺の肩に手を乗せた。
「”
そう言うと一瞬でその目的地に着いた。
「な!今のって超高位魔導じゃないか!!」
「お前、今頃か?俺は古代魔導を使うんだぞ?」
「あ、そっか」
「ったく。間抜けだな」
「んだとー!?」
そう言った瞬間、俺は口に指を立ててシッとカリストファーを宥めた。目の前には洞窟がある。そこに耳を傾けると話声が聞こえた。
「おい、カリストファー。お前、準2級の魔導は使えるか?」
「まだだ。少ししか使えない」
あ、ちなみに準2級とは上から5番目に高位の魔導である。魔導が低い順から6級、5級、4級、3級、2級、準2級、1級、準1級、特級、超特級とあり、俺の魔導はこの級では測れないらしい。
「ちっ」
「舌打ちすんなよ!」
「高等級のくせに使えないのかよ」
「しゃーないだろ!」
「はいはい」
俺は軽くあしらう様に答えた。
「カリストファー。お前はここで待ってろ」
「待ってくれよ!俺だって戦える!!」
「準2級も使えない奴がいても邪魔なだけだ」
俺はきっぱりと厳しく言った。
「……分かった」
納得してねーな。まあいいや、ほんとに邪魔だし。
「ま、すぐ戻って来てやるよ。ここに隠れてろよ。何があってもここからでてくんな。分かったな?」
「分かったよ」
俺は念を押した。その理由はこいつにとってあまりよくない事が起きるかもしれないと言う事だ。”
洞窟の中に入ると、もう全員倒れていて一人の男だけが立っていた。妹は無事だ。俺が腰に下げた剣を密かに持とうとすると、男は俺の方に体を向けた。
「こんな夜中にどうしたのかな?もしかして、この女の子の兄妹か何か?」
「いや、俺じゃない。が、外で兄貴の方が待ってる。それと、こんな夜中に何をしていたんだ?」
俺は質問を聞き返した。
「まあ、見周りかな?」
俺は顔が見えないと思い”
「お前、何者だ」
「僕は通りすがりのイケメンだよ」
「悪い。それはさすがにキモイ」
そう言うと、その男は大笑いをした。
「あっはっはっは!ごめんね、久しぶりにそんな答えが返って来たからビックリしたよ」
「それは良かったですね。で、お前は俺を殺すの?」
そう言うと少し考えるポーズをしていた。
「うーん。今回は止めとくよ。笑わせてくれたお礼。君にはまた会える気がするよ。その時はよろしくね」
そう言うと、男は暗闇の中に消えた。
俺が帰ってくると、カリストファーは泣きながら妹を抱きしめていた。まあ、帰って来なかった妹が帰ってきたらそうなるわな。
にしても、さっきの男はなんだったんだろうか。
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