4-5残
それは、久しく見ていない眩い光だった。
一か八かで振り投げた少女の体は、火口上空に達した瞬間、突如として火口から現れた白光のなかに消えた。
「———くっ!」
巨大な光の柱はまるで天に向かって昇る滝のようで、その勢いと衝撃が空気を揺らしてこちらまで伝わってきた。それと同時に、あたりも白い闇に包まれる。目がくらむほどの明かりから目を逸らしながら、運命はその衝撃に耐えた。
全てはほんの数秒のことで、すぐに何事もなかったかのような静寂が訪れた。そっと目を開け、運命はあたりを見回す。皆吹き飛ばされてしまったのか、火口の近くにいた亡者の影は消え去っていた。そのほかのひしめいている亡者たちも、鬼すらも、自分たちの身に何が起こったのか理解できずに、ただ唖然としているようだ。
「ああ、くそが」
結局、残るのは自分か。
そうは思うものの、運命は全く、露ほども、かつて感じていたはずの怒りや生き返ることへの焦りは感じなかった。
やがて我に返り始めた亡者が、運命の姿を見つけて再び群がってきた。どうやらまだ、糸がすでにここから消えてしまったということを理解していないらしい。後ろは火口。左右からもまた亡者と鬼たち。逃げ場はどこにもない。
運命は自らの得物を右手に持ち替え、赤銅の影を大きく片翼のように広げた。そしてこの場を切り抜けるべく高く飛び、不敵に笑う。
待ってろ、と。
もう一度呟き、少年はうごめく亡者共の海に身を降らせた。
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