3-4露呈

「ほら、もうすぐ私が拠点にしている場所に着くわ」


 前方に、白い光が洞窟の出口から漏れているのが見えた。それから少し歩いて、三人はようやく長い洞窟を抜けた。


 その空間は吹き抜けのように天井が高かったが、夕希らが落ちてきた場所のように柱が突き刺さっている様子はなく、ただ風化して崩れたところから光が漏れているだけの広い空間だった。


 かがりは松明を吹き消すと、無数にある洞窟への入り口に一つを指し示した。

「あの穴をずっと行った先が火山地帯の近くに通じているわ。他の場所に出られる道もあるけど、入り組んでいるからやめておいたほうがいいわね」


 それとも、やっぱり私が案内しましょうか? かがりの言葉に、運命が即座に断った。


「いや、急いでるんだ。おしゃべりしながら遠回りする必要はない」

 礼も言わずにその場から去ろうとする運命。夕希は慌ててかがりに深く頭を下げた。


「本当に、ありがとうございます! あの、こんなこと言うのっておかしいと思うんですけど、かがりさんが転生できるの、祈ってます!」

「ふふふふ。ありがとう」


 笑顔のかがりに夕希もまた微笑み返し、背を向けたまま待っている運命の元へ駆け寄ろうとした時だった。


「お祈りついでに、最後にひとつ聞いてもいいかしら」


 踏み出そうとした足を止め、夕希は振り返った。かがりは天井から射す光を仰いでいた。やがて向き直ったかがりの表情は、先ほどと変わらない優しい微笑を湛えている。


「どうして、そんなに急いでいるのかしら」


 心臓が跳ねた。穏やかな表情のまま、かがりの問いは続く。


「亡者どうしの、当てのない旅を急ぐのはどうして? 何か転生の手がかりがあるのなら、あたしにも教えて欲しいのだけれど」

「———理由なんてお前に関係ない」

 表情を固まらせた運命は、あくまでしらを切る。だが、かがりは問いを止めない。


 ——とある鬼徒に気をつけよ。


 傍観者の言葉が思い出された。穏やかな表情を微動だにせず口を動かす女の様子に、夕希はじわじわと恐怖が増していった。


「遠回りって、どういうことなのかしら。火山に何かあるのかしら。それこそ、糸?」


「夕希、こっちに来い」


「それはおかしいわよね。だって亡者には見えないんですもの。地獄には長いことお世話になっているけれど、一度だって見たことがないのだから」


「おい夕希」


「話が変わってしまうのだけれど、夕希ちゃん、あなたみたいな亡者に会ったのって初めて。転生できることを祈っている、なんて。他の亡者の転生を気遣うなんて、そんなの亡者じゃないわ。あなたは明らかに異質なのよ。そこの坊やも、わがままで傲慢で冷淡なのに、夕希ちゃんを連れているのはなぜ? 弱者を連れる理由は? 夕希ちゃんの価値は?」


「バカ離れろ!」


 足がすくんで硬直していると、後ろから首根っこをつかまれた。


「夕希ちゃん、カシシャね?」

 女は頬を裂くように、うすい唇を引き上げて笑った。

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