エピソード01 ー病の覚醒ー

「ショーヤ、罰ゲームは顔に落書きね」

「あたし一度も負けたことないのですよ?」

「お手柔らかに」

 俺たちはしばらく神経衰弱で遊んだ。決まって一位はマリアーナちゃんで、二位はジョアンナさん。そして俺はドベ。

「ショーヤ惨敗ね」

「宣言通りでしょう? お兄ちゃん」

「なんでいつもマリアーナちゃんが勝つのかな? 八回やって八回一位じゃん」

「さーて顔に落書き」

 俺は罰ゲームで顔に落書きをされる。どんな状態になっているのかはわからないが、リビングにいた父さんや母さんまでもが顔をみて、「クスクス」と笑っている。

 そこへ手鏡を持ってきたジョアンナさんが、俺の目の前に差し出してきた。自分自身おかしくなって笑っていまった。

 鼻にチューリップが書かれていて、ほっぺには渦巻、眉毛は太くされて俺の顔はまるで現代アートだった。

「顔を洗ってくるよ」

 洗面所に行き顔を洗っているとジョアンナさんが後ろからタオルを持ってきて、手渡してきた。


 そしてリビングに戻ると、

「――来る!」

 一家が笑う中で突然、マリアーナちゃんが真剣な眼差しになり、リビングを勢いよく飛び出したかともうと玄関を開けて外に飛び出していった。

 俺たち一家は外に出てみたがマリアーナちゃんの姿どこにもなかった。

「異国の街なのにこんな夜遅く出歩いちゃまずいな。警察に連絡しよう」

「待ってください。マリアーナはすぐに戻ってきます」

「どうしてわかるんだ?」

「信じてください。お願いします!」

 父さんと母さんは顔を見合わせて、ジョアンナさんの肩をポンと叩くと家の中に入って、マリアーナちゃんの帰りを待った。

 三〇分したころにジョアンナさんが立ちあがり、「戻ってきた」と言って玄関の扉を開けると、傷らだけのマリアーナちゃんが倒れていた。


 俺がマリアーナちゃんの体に触れたときものすご熱があって、「はあはあ」と吐息をしていた。

「なんでこんなに熱があるんだ? それにこのケガどうしたんだよ」

「彼女に触れないで。責任は私が持つから」

 急に冷たくなったジョアンナさんに、俺は怒りをぶつけてしまった。

「居候のくせになんだよ」

「ごめんなさい。いろいろ事情がるの」

 そういうと二人が寝泊まりする部屋に入っていった。

「勝也、今の言い方よくないぞ!」

 父さんがいつになく真剣な表情で怒鳴ってきた

「だって――」

「人はそれぞれ事情があるの」

 母さんまでもが俺を責めたててる。やるせなくなった俺はリビングを飛び出して階段を駆け上がり、部屋に閉じこもった。

 そして気づいたら壁を殴っていた。

「なんだよみんなして。何か隠してるのかよ」

 俺は鏡をみて驚愕した。自分の顔がライオンみたいになっていた。

 そこへジョアンナさんの声が聞こえてきて、ドアを何度もノックしてきた。

「ショーヤ。さっきはごめんなさい」

「入ってくるな!」

 俺は思はず強い口調で叫んでいた。

「本当にごめんなさい」

 そう一言添えてジョアンナさんは階段を下りて行くのが足音でわかった。


 ――俺はライオン男になってしまったのだろうか?


 そう考えているうちに、もう一度鏡を見たらいつものナイスガイな顔になっていた。幻だったのだろうか――

 俺は風呂に入り十時くらいに消灯した。


 だが気になるのは三年前にイタリアで起きたテロ事件のことだった。その事件は怪物が人間を襲うというものだった。

 怪物の集団は銃殺され人間の姿に戻ったという。

 その事件に興味がわきスマホで検索したら、どうやら人間の未知なる細胞が覚醒して、動植物のような異形の姿になるというものだった。

「もしかして、俺もこのに犯されているのか?」

 俺はリオン細胞の事も詳しく調べた。


 意外にもリオン細胞の事は詳しく書かれていて、その研究の第一責任者は日本人の女性だった。名を、大八木啓子おおやぎけいこ


 俺はスマホを閉じて眠りについた。

 また少年の夢を見て汗だくで起きてしまった。そして顔を触ると獣のような感触があったので鏡を見るとライオンの顔になっていた。間違いなく、リオン細胞に侵されていると確信し、学校を休み病院に行くことにした。

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