1-21

男性の隣にいたい一心で、彼女はある提案をした。


男性の邪魔になる存在を騙し、金銭を奪い、あまつさえ抹消する。


既に家庭を持ち、愛妻家・子煩悩というイメージが定着している男性を留めておくにはこれしか方法がなかったのだ。


私なら貴方の力になれると。


その見返りとして彼女を傍に置き、彼女のお小遣い稼ぎの一環として不特定多数の男性を騙して、面倒なことになりそうなら抹消する。


歪に歪んだ愛。


「あんな人間、いてたまるもんですか」


売却コースに入れられた彼から貰った鞄をホテルの壁に投げつけると彼女は小さく舌打ちをした。


男性は着替え終わっていた。


その瞳に彼女を映してはいない。


スマートフォンの待ち受けが愛妻と子供だということを知っている彼女は苛立たし気に着替え始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る