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「しかし、今回の奴、殺す意味あったのか?」


面倒そうな奴には見えなかったけどな。


ちらりと腕時計を確認しながらそう言うと、男性は彼女を膝の上から降ろした。


その意味を理解しているのか不服そうに顔を曇らせる彼女。


「気に入らなかったよ」


最初からプレゼントを用意できる筈がないと分かっていた。


クリスマスで別れを切り出すつもりだった。


「今までのバカと違って純粋すぎるくらいバカだったのよ。なんだか腹が立ったの」


彼にあったのは純粋すぎるくらいの彼女への信頼と愛だった。


それが彼女には居心地が悪かった。


「下心ない人間なんて気持ち悪いわ」


ちらりと隣でスーツに着替え始める男性を見ると、彼女は悔しそうに下唇を噛んだ。


有名企業の幹部に属する男性は裏の世界にも精通している。


その関係で当時、彼女の勤めていたクラブにやってきた男性に彼女は心奪われた。

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