1-10

―14時間前―


彼女に連絡した彼は待ち合わせ場所へと向かっていた。


鞄を買えなかったことを謝罪すると、電話越しの彼女は陽気な声で気にしないでと笑っているようだった。


『今日はイルミネーション観に行きましょ』

駅前のイルミネーションは毎年綺麗なのよ。


彼女の弾んだ声が心地よくて、彼は自然と顔を綻ばせた。


疲れなんて一瞬でなくなってしまうほどに、それほどに彼女の存在が大きかった。


せめてものプレゼントと欲しがっていた鞄によく似たものを買い、少しお洒落な服を選んで彼は家を出た。


両親にはデートかとからかわれたが、恥ずかしいながらもそれすらも心地よかった。


ディナーの場所も良さそうなところを調べて予約をした。


彼はその日、とても幸せだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る