1-8

―現在―


アスファルトに寝転がったまま、彼はぼそぼそと話し続ける。


少女はその傍で聞いているのか分からない表情で黙って座っている。


しかし、その瞳だけは輝きを失うことなく…更に澄んでいくような気がした。


「クリスマスまでに間に合わなかったんだ」


彼女が欲しがったプレゼントを用意することが出来なかったのだと彼は苦笑した。


デートもせず明け暮れたバイトの日々、学業との両立の限界。


それでも彼女が欲しがった鞄を購入するに至らなかった。


「彼女ならいつもの笑顔でいいよって言ってくれると思ったんだ」


日はすっかり昇りきっていた。


しかし、路地には誰にも通らず未だに二人だけの世界が続いている。

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