第十三球目「美静(2)」
「あ、お兄ちゃん。そろそろ帰って来いって。」
「ん、まぁ帰るつもりだったし。」
「え、あ...ふ、2人とも...また明日!」
「ん...また明日。」
帰ってきてすぐに勉強をやり出したお兄ちゃんの後ろに立って話をする。
「ねぇお兄ちゃん。」
「ん?」
「静葉ちゃんの事どう思う?」
「...えっと...どういう意味で?」
「好きな捉え方でいいよ。」
「...まぁ、大事にしてあげたいと思ったかな?あいつの妹なのにしっかりしてるなーって思ったかな。」
「へー...」
思った通りの反応だった。
流石にまだ脈はないよね。
あったら絶対大声で笑ってたし。
「あー...ところで...美穂...」
「僕が一人暮らしするって言ったらどう思う?」
中学生で一人暮らし。
あまりありえるとは言えないだろう。
まぁ少しだけおかしいとは思っていた。
部屋がいつもより綺麗すぎるのだ。
「するの?」
「来月からね。」
「どこ?」
「そこまで遠くない。」
「ふーん。」
平気なフリをしたけど、内心めちゃくちゃ動揺していた。
流石にいきなりすぎたから。
「学校は?」
「変わらないよ。」
「へぇ。」
自分でもたまに呆れるくらい私はお兄ちゃんが大好きだ。
...その日の夜はあまり寝れなかった。
「美穂ちゃん...眠そうだね...?」
「あー...うん...ちょっとね...」
「どうしたの?」
「実は...」
「え!?先輩一人暮らしするの!?」
「うん...私もびっくりした...家は近いみたいだし、学校も変わらないってさ...」
「そ、そうなんだ...」
「心配しなくても静葉ちゃんの大好きな先輩は全然変わらないよ。」
「そうだよ...ね...!?いやいやいやいや!な、ななな何を申し上げてるんですか!?そ、そんなわけないよ!」
「おい敬語の使い方おかしいぞ。というかその反応しておいてそれは流石にもう無理だと思うんだけど。」
「う〜...なんでバレたの...?」
「...お兄ちゃんが出てきたら焦る...お兄ちゃんを見る視線が妙に熱い...正直バレバレだったよ?」
「そ、そんなバハマ...」
「それ、フリ?」
「いや別に...」
「そお〜れ!ここ!」
「ごめん。」
「ファンタスティック!」
「ごめんって。」
それから数ヶ月後。
恋に動きがあった。
そして私は今...
とある女子をを壁ドンしている。
...いや、百合とかじゃないんだ。
「舐めてると痛い目見るよ?」
お兄ちゃんと静葉ちゃんが付き合うことになった。
凄く私も嬉しいし、祝ってあげたかったのだが...話を聞いて、それどころではなくなってしまった。
なんと静葉ちゃんは自殺をしようとしたのだ!私に何も相談せずに!
静葉ちゃんに問い詰めてみたら、実は中学校でもいじめられていたことを明かしてくれた。
私はその女子の取り巻きを片っ端から潰していっている。
静葉ちゃんのためだと思うと俄然やる気が出てくるものだ。
私のことを肯定してくれた親友をいじめたことを後悔させてやる...!
「ひ...ごめんなさ...」
「だからさぁ...それはさ?私じゃなくて...静葉ちゃんに言う言葉だよね?」
「わ、わかりました!」
「じゃあね...謝らなかったら...腹パン一発入れるからね。」
「ひっ...!」
嫌われてもよかった。
それほど静葉ちゃんには幸せになってもらいたいんだ。
私が幸せになれたのは静葉ちゃんがそのままでいいと言ってくれたからなんだ。
「ねぇちょっと、あんたあんた!ちょっとだけ話があるんだけどさ〜!」
「はぁ?何よ?」
...静葉ちゃんが幸せになるのを邪魔する奴は、絶対に許さない。
一稀先輩と付き合うことになった数日後、奇妙な事が起こった。
「色々すみませんでした!」
「いや、あの...大丈夫...大丈夫、ですから...顔を上げてください...」
私をいじめてると思われていた女子のグループの人達が取り巻きを含めて全員が私に向かって土下座してきた。
「彼氏が静葉さんにちょっと見惚れていただけで悪口を書いたりして本当に自分が恥です!ごめんなさい!」
「いや本当に!本当に大丈夫ですから!ほ、本当に...!ちょっと...」
「「「すいませんでしたぁ!」」」
私、今日日直なんですけど...!
...今日は部活が休みなので、美穂ちゃんと一稀先輩と帰ることになった。
美穂ちゃんは気を使ってくれて「一緒に帰りなよ」と言ってくれたのだが、私は聞きたいことがあったのでその優しさを受け取るのは明日に回すことにした。
「え、えっと...ふ、二人ともおめでとうございます...?」
「そうじゃないよね。」
「ウィッス。」
「...無茶なことはしなくていいんだよ?」
「...だって...許せなかったし...」
「うん。それはありがとう。でも...」
「...わかった。無茶なことしない。」
「うん!約束だよ!」
「...終わった?」
「は、はい!すいません先輩...」
「...相談はしてほしかったけど、まぁ、別にいいよ。次からは相談してね?」
「先輩...」
先輩は優しかった。
私がいじめられていたことを相談しなかったことも、美穂ちゃんが私を助けるために無茶をしたことも、一つの注意で許して、笑顔で返してくれた。
...こんな事されたら、もう同じことは出来ないなぁ...。
私は付き合ってまもないのに、もう一稀先輩への好感度がカンストした気がした。
...何故かカラオケ中に思い出を全部思い出していたようだ。
「何が歌に自信がなくて...だよ!90点以上連発してるじゃんか!」
「そう言ってる美穂ちゃんだって90点以上連発してるよね!美穂ちゃんも私歌下手だから...とか言ってたよね!」
「静葉ちゃん歌上手いね!」
「ありがとう!そっちもね!」
「ありがとう!」
「...良くても75から80くらいの私達の前であんなハイレベルな喧嘩しないでほしいよねぇ?ねぇ美咲。」
「まったくです。しかも途中から喧嘩じゃなくなってますし...」
「ほんっと、仲いいよね〜?お互いを信用しきってるっていうかさ?」
「本当ですよね...」
「次デュエットしよっか!」
「うん!」
私達は、いつまでも親友だ。
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