第九球目「年の差カップル」

まず今の状況をまとめよう。

俺は友樹の家に今日遊びに行く予定だった。

だから、時間より少し早めに友樹の家まで来た。

そうしたら理恵さんがいた。

ふむ、なるほど。

わからん。

「か、和馬君!なんであの時居なくなったのさ!?」

「そ、それは...ひ、引っ越すことになってしまって...病院に行けなくて...」

「あー...なるほど...最悪のタイミングだったっていうわけだ。」

でも、まぁ嬉しいものだ。

俺の初恋の人と再会したのだから。

「...えっと...でもなんで友樹の家にいるんですか?」

「ん?あ、そっか、知らないんだ...えっと...私、友樹の従姉なんだ。」

「えっ...」

「だから言ったじゃん...理恵って名前を知ってる気がするって...」

そんなん予想出来るか。

「まぁ二人とも入って来いよ。」

「お、おう...」

その後、慌てた様子の一稀と静葉ちゃんがやって来て話が始まったのだが、一稀と静葉ちゃんは話があまりわかってないのでいちゃいちゃしてやがるし、友樹は説明が凄く大雑把だし...うん。

ほぼ、俺達が話していたな。

一稀と静葉ちゃんは本気で何しに来たんだよ。

「...まぁ...君の事とかもよくわかったよ...うん...」

「俺も...わかったです...後...無事で...本当に...よかったです。」

「あ...うん。よかった。」

「あれ?理恵姉って彼氏いたっけ?」

「作らないって言ったでしょ...和馬君が同じ気持ちだったら話は別だけど。」

「和馬は理恵さんを諦めきれずに告白全部振ってるもんね。」

一稀が余計な事を言う。

そんな事を言うくらいなら静葉ちゃんといちゃいちゃしていてくれよ...

若干一稀を睨んでいたので、理恵さんが顔を赤くして俯いているのに気付くのが遅れた。

「え...あ...ほ、ほん...と...?」

「...本当です。」

「そ、その...なんていうか...さ...」


「俺と付き合ってください。」


考えるより先に言葉が出ていた。

あの時言おうと思ってた言葉だったのに、だいぶ遅れてしまった。

意表をつかれた様子の理恵さんが少し固まった後、返事を返してくれる。


「...はい。」


こうして、俺は理恵さんと付き合うことになった。




俺が理恵さんと付き合うようになってから少し経った。

理恵さんはこっちに引っ越すことになったそうで、しばらくは友樹の家の空いている部屋を使うらしい。

いつでも遊びに来ていいと言ってくれたが、静葉ちゃんから美穂まで一瞬で伝わるだろうから油断出来ない。

「おいっす。今私の事考えてた?」

思ってたら来た。

爆弾。

その名は美穂。

「あぁ...まぁな...」

「大丈夫だって、年の差だったら私もそうだからさ。」

「誰から聞いたんだよ...」

「さて問題。誰でしょうか?

①お兄ちゃん②静葉ちゃん

③友樹④理恵さん

さて、どーれだ?」

「...全員だろ。」

「お、よくわかったね!私は皆からいち早く情報を流してもらえるんだよね。静葉ちゃんはめちゃくちゃ早かったよ?多分予想してメッセージを完成させてたんだろうね。」

こいつは自分を「居ても居なくてもいい友達」とか言ってるが、こいつは上っ面だけの友人関係を作らない。

こいつは友達全員を親友だと考えているおめでたい野郎だ。

ただ、それは優しさでもある。

そうだ、こいつは優しいんだ。

だからこいつは親友を困らせる事を避けて、自分の事を話さない。

...少し...いや、だいぶ怖い奴だ。

「ってかさ、年の差ってやっぱりおかしいって思う?」

「...そんな事ないだろ。」

「...だよね...?」

珍しい。

こいつがこんな表情するなんて。

何時も無理に笑ってて、嫌だとは思ってたが、実際こういう一面を見ると、こいつの支えのありがたみがわかる。

だから今回は俺が支えてやろう。

「どうした?何かあったか?」

「え?いや別に?」

「何も無い奴があんな顔するかよ。」

「うっ...はぁ...私ね、大吾の事は遊びとか弟みたいとかそんなんじゃなくて、本気で好きなの。それなのに世間から見たら高校生と小学生が付き合うのがおかしいっていうのが、少しだけ...いや、だいぶ気に食わないの。」

...俺は少しこいつの事を誤解していたみたいだ。

俺は正直、美穂は大吾に付き合ってくれてるのだと思っていた。

でも考えればわかった話だ。

こいつは友達全員を親友と考えるような奴だ。

そんな奴が遊びで付き合うとか、付き合わされてるなんて事を思うわけがなかったのだ。

「...ごめん。」

謝りたくなった。

美穂を誤解していたことに。

「...何...急に謝って...」

「俺はお前のこと誤解してたよ。」

「...あー、なるほどね。そういうことならいいよ。仕方...ないし...」

まだ何か隠している気がしたが、それを問い詰めるのも良くないので、何を話せばいいかわからず、お互いの中で沈黙が続く。

「...ま、私は年の差の先輩だからさ、何か聞きたいことあったら聞けよ後輩!」

「はいはい、先輩先輩。」

...この時は本当にこいつの助言に頼りまくることになるだなんて考えてもいなかった...

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