第2話 しゅっぱつ

「あははははははははははははははははははッ!!」

 もう一人の「かばん」が不気味に笑いながら、顔を上げる。

しかし。

「かばんちゃんじゃ、、ない、、、、?」

 その顔はかばんのものではなく、目は釣り上がり、頬にはピンクと緑の線が入っていた。

「そうよ。よく気づいたわね。私はセルリアン・クイーン。セルリアンの頂点に立つ存在。」

「セルリアン・クイーン、、?」

 サーバルがポツリという。

「久しぶりだな、サーバル。この時を待っていたぞ。」

クイーンがサーバルに目を向け、言う。

「サーバル、あいつを知っているのか!?」

ヒグマが緊迫した声で言う。しかし、サーバルは、、、、

「知らないよ〜!セルリアンクイーンなんて、、、、ッ!」

その瞬間、サーバルの脳内に記憶が蘇る。

 白い服を着て、かばんと同じ帽子を被っている「ヒト」。そして、その隣には自分に似た–––。

 そこで、記憶が途絶えてしまった。

「思い出したか、サーバル。、、だがその様子だと僅かしか思い出せていないようだな。まぁいい。今度こそ、あの計画を、、、!」

「あの計画、、?」

 かばんが言う。

「そうだ。私達セルリアンが全ての輝きを奪い、世界を贄として保存する!」

クイーンが高らかに叫ぶ。

「世界を贄として、、、?!ふざけるな!!」

臨戦体制に入る一同。しかしクイーンはそれを挑発するように制止する。

「まぁ待て。今すぐに実行する訳ではない。完全体としては復活していないからな。しかし実行の時までは一ヶ月。その間に私を止められるかな?」

 そう言い残し、クイーンは、消えた。

 そして訪れる、先より重苦しい沈黙。 その中で、かばんは一人葛藤する。

『僕はまた何も出来ないのか。また皆に頼ってばかりで、助けられて、、、』

かばんは大セルリアンとの戦いを思い出す。

戦闘の中でサーバルに助けられたことを。 それが原因でサーバルが大セルリアンに食べられたことを。

『それじゃダメだ。』

かばんは決心する

「僕、守ります!このジャパリパークを!」

 かばんが大声で言う。

「僕は皆さんにいつも助けられてばかりで、何もできていなかったから、、今度は僕が皆さんを、このパークを助けます!」

「かばんちゃん、、、」

 しかし、、、

「ダメなのです。」

アフリカオオコノハズク––コノハ博士が反対する。

「何ですか!!」

「ダメなのです!!、、、、かばん一人で行かせるなんて。」

「博士、、、」

かばんがポツリ言う。

「確かにそうだな。」

ヒグマが小さく頷きながら言う。

「かばん、お前だけじゃ危険だ。オレたちもここを守りたいし、セルリアンハンターだから少しは戦力になるだろう。オレもついていくぜ、かばん。」

「かばんさんだけでは行かせないのだ〜!アライさんもついていくのだ〜〜!!」

「私もかばんさんたちについていくよー。」

 とアライグマとフェネック。

「私もかばんちゃん一人では行かせないよ。だって、私たち、お友達でしょ?」

 サーバルも続ける。

「皆さん、、、!」

 かばんが目に涙をためて言う。

「それに、『自分は何もできないなんて言うなよな。お前のおかげであの大セルリアンを倒せたんだ。」

「そうなのだ!かばんさんはすごいのだ!」

「いろいろなことができますしね。何よりかばんは料理ができるので。」

「そうだよ!紙飛行機を折ったり、いろいろ思いついたり、すごく器用で、、、何もできなくなんかないよ!」

「ヒグマさん、アライさん、博士さん、サーバルちゃん、、!」

 かばんの目から一粒の涙が流れる。

「ありがとうございます!」

「それじゃ、決まりだな。」

「じゃあ、行こうか。」

『チョット 待って。』

フレンズ達の前に現れる一つの影。

その姿はマントに包まれていて、確認できない。

「誰だ!」

警戒する一同。 それを静かに制止する「フレンズ」

『だいじょうぶ。 ワタシ てきじゃ ないよ』

警戒を少し緩める一同。それを確かめ、「フレンズ」は続ける。

『クイーン たおすの かんたんじゃ ない。 だから チカラ ひつよう。 チカラ ろくにんまでしか つかえない 』

「フレンズ」は皆を見渡す。そして、

『 かばん、サーバル、ヒグマ、アライグマ、アフリカオオコノハズク、ワシミミズク あなたたちに あたえる きて。』







....................................







「それでは、気をつけて行ってくるのであります!」

プレーリードッグがいつもの口調で見送る。

「頑張って行ってこいよ、かばん!私たちはここを守っているからな!」

「それじゃ、頑張ってきてねー。」

ヘラジカとライオンが言う。

「フェネック、アライさんについてきて欲しいのだ!」

「もちろんだよー。アライさん達について行くよー。」

『あなた チカラ 与えられない いいの?』

「大丈夫大丈夫。アライさんのサポートにまわるから。」

と、いつもの調子のアライグマとフェネック。

「かばん、必ず帰ってくるのよ。」

と心配そうに言うカバ。

「皆さん、、、行ってきます!」

それに続き、サーバルも大声で言う。

「みんなー!行ってくるよー!」

「うるさいのですよ、サーバル。」

「なんで〜!ひどいよー!」

笑いに包まれる一同。

こうして、パークを救う旅が始まった。






この時、かばん達はまだ知らない。

この後に訪れる困難を。そして、、、



悲劇を。















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