第3話

――初期国家を選択してください――


ここで選べる国は4つある。

中世風国家トラウゼン。

近未来風国家センテマー。

和風国家ダイニチヤマト。

魔界風国家グラスター。


自分が一番最初に獲得したいアーツで所属国を決めるのだ。

剣か魔法ならばトラウゼンへ。

ロボットや銃火器ならばセンテマーへ。

陰陽術や降霊術ならばダイニチヤマトへ。

格闘術ならばグラスターへ。


別に他の国に行けないわけでもないし、アーツが獲得できなくなるわけではないが、お金も移動時間もかかるし……なにより『剣』を使いたいのにわざわざ『銃』の使い方を知る必要はない。

チュートリアルで初期装備と初期装備でのアーツを獲得出来るのだから。

そして国都周辺の敵さんはその特色に合わせた武器や鍛冶素材を落としてくれるらしいのだ。

道草は後から食えばいい、と。


では俺はどこへ行くか。

友人のいる国で問題ない。

合わなければ後で考える。


ここでリセットはないのか?と思うだろうが、リセットには3日かかるのだ。

悪質なプレイヤーが過去、リセットを繰り返してオイタをしたことがあったらしく、公開一週間でこれが導入されたらしい。

どこにでも悪質な人間はいるんだな。

っと、話が逸れた。


「トラウゼンで」


――畏まりました。それでは<はじまりの平原>へと移動します――


アイがそう言うと真っ白な空間から一転して地面へと降り立った。

上を向けば真っ青な空と白い雲があり、爽やかな風が肌を撫でていく。

靴越しに地面の感触があって、風は土と草の匂いを運んでくる。

ちらほらと人の姿も見えて、俺と同じようにあちこちへと顔を向けている。


「凄いな、マジで平原にいるみたいだ」


――……続いて『アーツ』、そして『ポテンシャル』の説明に入ります――


感心する俺をスルーして次の説明に入るとか……感動が足りなくないか?

いいけど。


『アーツ』とは技能である。

剣用アーツ、槍用アーツ等、武器を装備した状態で使う種類もあるし、鍛冶や農作用のアーツもある。

使い込む程アーツレベルが上がり、補正値がアップする。

他のゲームでもあるスキルだとか技だとか、そういうものだな。


アーツとは別にポテンシャルと呼ばれるものも存在する。

ポテンシャルはアーツと似ていてレベルはあるものの、アーツとして使用することは出来ない。

だけどこれはあって困るものではない。

例えば『鷹の目』というポテンシャルがあるが、これは命中率に補正がかかる。

弓や投擲系だと重宝するのは、わかってもらえるだろう。

他の職でも命中率に補正がかかるから、アーツも必要だがポテンシャルはもっと必要性が高い。

俺自身の強化だと考えてもらえればよさげだ。


――それではステータスの確認をお願いします。これは口頭でも脳内でも構いません。『ステータス』で開示されます――


「へえ……ステータス」


呟くようにステータスと口にすれば、空中にふぉん、とウィンドウが浮かんだ。


――――――――――――――――――――


NAME:海月


HP:60/60

MP:50/50

AP:30/30


武器:[なし]

防具(上):[初心者用シャツ]

防具(下):[初心者用ズボン]

腕:[なし]

靴:[初心者用サンダル]

アクセサリー1:[なし]

アクセサリー2:[なし]


               ▼1/2

――――――――――――――――――――


このゲームにはSTRだとかの表記はないらしい。

HPは体力で、MPは魔力……APがアーツだったはずだ。


――――――――――――――――――――


アーツ:



ポテンシャル:[料理:1][掃除:1]



EX:[自動翻訳][異邦人(プレイヤー)]

   [勇者?]

   [$$*¥&#%##]

               ▼2/2

――――――――――――――――――――


「……うん?」


最後の辺りによくわからない文字が見えて首を傾げる。


――文字をタップすると簡易説明文を読むことが出来ます――


アイからのアシストで俺はその文字へと指を伸ばす。


[勇者?:勇者になる運命だった?が他者により捻じ曲げられ、勇者になれなかった者……かな?]

[$$*¥&#%##:解析中……]


文字化けはまあ、この際いいとして、だな。

衝撃の事実……なのかこれ?

疑問形になっているが、俺はどうやら勇者になり損なっていたらしい。

いつだろうか、と更に首を傾げて思考の引き出しを漁る。

勇者といえば『異世界に転移、転生』がラノベのテンプレだろうか。

そうして引っかかったのはテンプレ……テンプレならばトラックか。

過去の、あの事故が脳裏に流れる。


「……わお」


もしかするとあれがコレだろうか。

今ではもう確認のしようがないが、大きな事故はあれぐらいしかない。

となるとあそこでもし、俺がトラックに轢かれていたら勇者になっていたのかも……。


「ま、そこはどうでもいいか」


ならばあの時、俺を救ってくれたアイツがもしかしたら……。


――……確認は終わりましたでしょうか――


「あ、ああ」


――では続きまして戦闘チュートリアルを開始しますが、よろしいでしょうか――


「ああ、頼む」


今確認出来ないことは置いておくことにしよう。

そういや今何時だ?


思考を切り替えようと頭を振り、前を見据えたら視界の右上に[13:46]と見えてビックリした。

今までそんなもの表示されていなかったのに。


アイに聞いてみると、HP等や時計、システムに関しては意識すると表示されるようになるらしい。

便利なものだ。

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