キスができたら

甲由

第1話 約束

 カップルにとっての身長差とはすなわち、唇と唇の距離の差である。

 しかしこの二人にとっての差とは絶望的なまでに立ちはだかる壁であった。

 

 最初の告白は小学二年の時。

 明るく活発でスポーツ万能で、年中日焼けした背の高い少年『曲里直高まがりなおたか』。

 彼に想いを寄せる、少し背が低いけど前向きな幼馴染の『支木小実ささきこのみ』。

 

 小実は彼への想いを募らせてついに告白した。

 しかし直高からの返事はこうだった――――


「お前がズルなしで立ったままキスできたら付き合ってやる」


 幼い小実はその返事に胸を躍らせた。

 その条件が達成できたら大好きな彼と恋人になれるのだから。

 それが長年彼女を苦しめる恋の呪縛となろうとは、この時は思いもしなかった。

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