6月17日(土) マッスルゴリラ様様だ
シャワーを浴びて遅めの朝ごはんを食べていたときに、松代さんが私の放置自転車をわざわざ届けに来てくれた。
ジムに行くついでに寄っただけだと言って、ピチピチのトレーニングウェア姿で現れた松代さん。
いつもなら、スーツ姿の時以上に強調された分厚い胸板や盛り上がった腕の筋肉に「ゴリエストキモッ!」と引いたはずだけど……。
昨日はこの筋肉のおかげで手代木さんの自転車に追いついて助けてもらったわけだから、マッスルゴリラ様様だと素直に感謝できた。
ついでに言うと、今日も鼻につく(それでも以前よりはだいぶ弱まった)ジャングル臭も、動揺していたタクシーの中では職場の嗅ぎ慣れた匂いとして多少の安心材料になった気がしなくもない。
だからって、ジャングル臭が許せるわけではないけども!!
マッスルゴリラが素敵に思えるわけではないけどもっ!!!
昨日は気が動転していてちゃんとお礼を伝えていなかったことを思い出し、自転車をわざわざ届けてくれたお礼も合わせてきちんと頭を下げて謝意を伝えた。
ついでに、なぜ松代さんがあの場に居合わせたのかを聞いてみた。
すると、月曜日に私が職場の会議テーブルでお昼ご飯を食べながら不審自転車の話をしていたのを耳にしていたとのこと。
それで、昨日は私が残業で遅くなったから、心配になってジョギングがてら私の自転車の後を追って走っていたんだって。
途中、松代さんを追い越した手代木さんの自転車が急にスピードを緩めて私の後を尾行しだして(その時は暗くて手代木さんってわからなかったらしい)、怪しいって思って必死でついて走ったとか。
「盗み聞きするつもりはなかったけど、梅園さんも興奮していたのか結構声が大きかったし、聞いてしまった以上は心配になってしまってね」
「すみませんでした」ともう一度頭を下げたら、とにかく無事解決してよかったと、眉骨にのったゲジ眉を上げながら鼻の穴を丸く広げて笑顔を見せた。
「手代木君も内気で声がかけられなかっただけで悪気はないから、許してあげて」
最後に手代木さんを庇うような言葉を残して、松代さんは去って行った。
お母さんは、お礼がしたいってお茶菓子を出そうとしてたけど、トレーニング前だし、朝早くだから申し訳ないって頑なに断っていた。
お母さんは「礼儀正しくていい人ね」って。
我が母にゴリラ耐性があったことに驚きだ。
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