神はつまらない

@manasan2017

第1話 神はつまらない

『私は神である。名前は必要ない。』

 

神と言えば私、つまり神が私の名前である。


私は万能。故につまらない。

 



例えばー


ここに救える命がある。


救うのは容易い。が、この命を救えばどこかで命が消える。


何故か、生命の数は決まっているからだ。


その時代、その時間、生存している人の数は私がエクセルで

管理している。だからひとつ助ければ、どこかで一つ減る。


そのことを知る万能の神は救うのがむなしい。




 

・神は一つ歩を進めると再び語り始める。



 


『神は孤独なのだ。故につまらない』

 

神は物理ではない。そんな次元の存在でもない。故に人と話す

ためには人を操るなど何らかの方法で空気を動かさねばならぬ。

 

だが、苦労して話しかけてもこの時代の人間は空耳としか

思わない。


昔は巫女がいて、私の話を真剣に聞いてくれた。


今の巫女はひどい。ここに巫女がいる。神のお告げと言って

偉そうにしているが私は何も言っていない。


試しに聞かせてみよう


「竹屋の竹薮に竹立てかけた。桃もスモモも桃のうち」

 

ほら言えぬ。通じぬということは孤独でむなしい。

 




・神は一つ歩を進めると再び語り始める。



 


『神は嫌なのだ。故につまらない』

 

現代には自称神が多すぎる。この自称神と同列に「神」とされるのが

無償に嫌なのだ。

 

ここに三十路過ぎの女性がいる。水着で写真をとりSNSに上げる。

そして自分で「神!女神降臨!」と書き込む。これが自称神。

 


この男も自称神。

 

何やら幼女の裸体を描き、投稿サイトに投稿し自ら「神!★5!昔から

ファンでした!」とか書き込む。初投稿なのに昔からのファンがいる。

まぁ自分自身だから嘘ではないが。

 

これらも神なら私は自分の存在がむなしい。

 



・神は一つ歩を進めると再び語り始める。




 

『神は時間を自在に超える。故につまらない。』

 

この幼子も瞬きひとつで墓の中。逆もまた然り。

 

時間を高速で行き来していると、人なのか墓なのか区別が

つかなくなってくる。


ま、生死は極端だが例えばー

 

この勤勉な少年。30年後を見てみれば未だに大学受験中。

 

俊足のこちら少年は、30年後は刑務所の中。


神童の演技力と言われるこの子役。30年後はただのデブ。

 

結果が見えていることは、手を貸しても意味がないということであり

故に神はむなしい。






それでも神は存在せねばならぬ。何か面白いことはないのであろうか。

そうだいっそ神がいない世界にしてみよう。





神を消す。これは面白そうだ。さっそく消してみよう。

 



「あっ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神はつまらない @manasan2017

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ