アンサー
近く、起き上がることもできなくなると知ってから庭に植えた紫陽花は、陽当たりが良いのか土が良いのか時たま庭師を呼ぶだけでも色とりどりに佳く育った。そこまでしてやる自分に一時期呆れ、せめて自分の好みで埋めつくそうと思いはしたものの、私というのは些か抜けたところのある人間なので株を間違え、結局彼女が好きだと話していた空の色ばかりになってしまった。その大きく開いた花弁のひとつひとつを、天涙が打つ。ぽっ、ぽとん、と気まぐれに奏でられる音が、雨上がりを報せた。「雨が上がるまで」と願ってしまったし、忍耐より先に身体が朽ちるか、と思うと喉の奥に笑いがこみあげるほどだった。我ながら鷹揚も過ぎたものだ。だからもう、赦してしまおうかと目を閉じた時、彼女に手を取られた。はっ、として見遣ると、彼女はどう見ても思い出の刻から進んでいなくて、やはり相変わらず読み取りづらい薄い表情で、そんな浮世離れした雰囲気に慣れていたものだから彼女の身体に紫陽花が咲いているのもそんなものかと見過ごした。
「本当に粗忽ね、君は」
「そういう貴女は遅すぎます」
「ちゃんと伝言したじゃない、「雨乞いの花開く折に迎えに来る」って」
「後半伝わってなかったんですよ」
だからそういう大切なことは、
「直接言ってくださらないと」
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