ララバイ

彼は随分と足早にこの季節を通り過ぎた。まだまだこれからだったのに、なんて、来るも逝くも刻限を知らないわたしたちに言えるはずはないけれど、僅かばかりでも同じ庭にいたわたしには、えも言われぬ虚しさが残ってしまった。もうひとり残ったあの子はあまり多くを語らないが、少しだけやつれて見える。このままわたしだけが遺されるのだとしたら、どうか、懇願したい。還す時もまた、同じ庭に入れてはくれまいか。偶然が出会わせた、それだけに過ぎないと知っていても我儘な茶番で家族になれるなら、わたしはそこから愛を芽吹かせよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る