第3話 濁った水
駆け寄ってきたラザルは、オスカーの後ろにいたティナーシャに気づくと驚きの声をあげた。
「ティナーシャさんこんなところにいらしたんですか! 今みんな貴女を探してますよ!」
「え」
ばつの悪い顔になったティナーシャの頭をオスカーがぽんぽんと叩く。
「遊んでるからだ。説教だな、きっと」
「それどころじゃないんですよ! 人が殺されました!」
「え」
ラザルの言葉に、今度は二人の驚きの声が揃った。
「死体は見られるか?」
「こちらに……」
ティナーシャとラザルを伴ったオスカーが問題の路地裏に現れると、兵士や魔法士たちの人垣が割れて魔法士長であるクムが出てきた。彼は頭を下げると、オスカーを普段ほとんど人が通らない路地の中央に誘う。
地面に掛けられた黒い布をクムが持ち上げると、そこにあったのは人間の原型を留めていない、ただの黒焦げの肉塊だった。
「うっ……」
ラザルを始め、それを見てしまった人間たちが口元を抑えて後ずさる一方、オスカーは平然と、ティナーシャは目を細めて、かつて人間であったものを観察する。
「誰だか分かっているのか?」
「魔法士のテミスです。装飾品が焼け残っていました」
「あ!」
ティナーシャの声に、周りの視線が一斉に集まった。 オスカーは複雑な表情をしている彼女を見下ろす。
「知っているのか?」
「今日、隣りを担当していた方です。挨拶しました」
「そう、それで貴女を探していたんですよ、ティナーシャ殿。テミスの光球が消えて死体が発見されるまでの三十分間、貴女の光球は灯っていたにもかかわらず貴女は濠の前から姿を消していた……。いったい何処にいたんですか?」
クムの声が、祝祭も終わりかける街に朗々と響いた。
テミスの光球が消失したと確認されたのが夜の八時三十分過ぎ。
それは、すぐ傍で子供が溺れる騒ぎがあった一時間後であり、彼の恋人が訪ねてきて彼がいないことに気づいた直後である。
まだ当番終了の時間ではなかったため、他の魔法士や恋人が彼を探し回ったのだが付近には見つからず、九時頃、濠から少し離れた路地裏で変死体が発見された。
「私、かなり怪しいですよね」
「第一容疑者じゃないか?」
そう意見が一致しながらも何処か緊張感のないオスカーとティナーシャは、小声で囁きあいながら、他の将軍や魔法士の後ろについて謁見の間に向かっていた。
「まぁいざとなったら正体を明かせばいいんじゃないか?」
「それはそれで犯人よりひどい目に遭いそうなんですが……」
そんなことを言っている間に長い廊下は終わり、飾り気は少ないが古く大きな扉の前に到着する。オスカーが前に出ると、脇に控えていた兵士が扉を開けた。
将軍や魔法士たちは頭を下げたまま入室し、玉座を前に左右に綺麗に分かれて並んだ。ティナーシャはその中央に、オスカーは玉座のすぐ傍に立つ。
部屋に入ってきた王は、五十歳を少し過ぎたばかりの比較的若い王だった。オスカーと同じ髪と目の色をしているがその雰囲気は柔和で、優しげな目にはティナーシャのかつての契約者の面影がある。
「君が息子が連れてきた魔法士か」
王はじっとティナーシャを見つめる。 彼女はその視線を物怖じもせず受けた。
「何処かで会ったことあるかい?」
その質問にオスカーとティナーシャはぎょっとしたが二人とも表面には出さなかった。
ティナーシャは七十年前ファルサスを去って以来、この国に姿を現したことはない。しかし或いは王には、かつての王を契約者として戦線に立った魔女のことを伝える何かがあるのかもしれなかった。
だが今はそれを気にしている時ではない。ティナーシャは鮮やかに微笑む。
「いえ、お初にお目にかかります。ティナーシャと申します」
彼女は片足を後ろに引くと膝を深く折って礼をした。その流麗な動作に場が自然と惹きつけられる。
王はそれでも何か引っかかるものがあるのか首を傾げていたが、左右に控える一同を順番に見回し、最後に再びティナーシャを見ると口を開いた。
「魔法士が一人殺されたそうだが、君は関与している?」
「いいえ。あずかり知らぬことでございます」
彼女はゆるぎなく即答した。誰のものとも分からぬ溜息が場に満ち、ざわめきが起こる。
王は長く息を吐くと傍に立つオスカーを見上げた。
「任せるよ。適任者を選んで収めなさい」
「分かった」
王が席を立ち奥の扉から出て行くと、深く礼をした一同はそれぞれが次にすることを求めて動き始めた。
文官の重臣たちは祝祭の事後処理のために出て行き、別室にはアルス将軍を始め事件の対応にあたる人員が集まった。円状に座る彼らの間で死体の状況や時系列が矢継ぎ早に確認されていく。
ティナーシャはその中央で、怯むでも開き直るでもなく、ただ黙して自分を追及する話を聞いていた。
「担当の場所にいなかったということがそもそも怪しいじゃないか」
「一体何処で何をしてたやら」
「そもそも本当に魔法を使えるのかも確かめられているのか? 光はランプか何かじゃないだろうな」
「あ、あれは魔法の光だ。俺見たし」
そう言って手を挙げたのはアルスである。
「途中から光量が増したし、間近で見たが魔法の光球だった」
初めて出た彼女を肯定する言葉に、他の者たちは一瞬言葉を詰まらせる。その気まずい沈黙を打破してメレディナが続けた。
「あの子供が溺れてた時には、まだテミスはあそこに居たわよね」
「ああ、確かに見た覚えがある」
アルスは手をあげて挨拶する魔法士の姿を説明する。その腕に黒い魔法の紋様が入っていて印象的だったのだと、彼は補足した。
だが緩みかけた空気を遮って、男の魔法士が立ち上がる。
「あれが確かに魔法の光というなら、何故近くにいなかったのか、それが問題じゃないか? 随分とおかしな話だ」
「いや待て」
熱くなっている男を制したのは魔法士長のクムであった。もうすぐ老齢に差し掛かるであろう彼は、自身の剃られた色黒の頭を撫でつつ、ティナーシャを手の平で示す。
「彼女は塔出身だ。我々とは魔法の形式が違うのかもしれない。そもそも途中で光量を増やしたということについても、簡単に出来ることではない。元々長時間維持することを意図して作られた光球だ。不意の出来事に対応して光を調整するなど、この中の何人も出来ることではない。離れた場所から光球が維持できるくらいは驚かんよ」
クムの思考の柔軟さに、今まで黙っていたティナーシャは少し感心した。
さすがは何十年もファルサスにあって不動と言われる魔法士である。その強力な魔法と高い判断力の評判は、使い魔を経て時折塔に届くことがあった。
同時に彼女は何処まで自分の手の内を見せるべきか考えを巡らせ始める。
クムの視線が彼女の方を向き意見を促すように見えた時、入り口の扉が開いて、ちょうど別の仕事を終えたオスカーが入ってきた。
「どうなった?」
「今、彼女に詳しいことを聞こうかと……」
「何処で何をしていたんです!」
クムの言葉にかぶって、先ほど制された魔法士がティナーシャに詰め寄る。しかし彼女が応えて口を開きかけた時、オスカーが無造作に言った。
「俺といたぞ。ラザルも見てる」
その事実に一同が大きくざわめいた。
クムは目を丸くし、メレディナは一瞬顔をひきつらせた。アルスはそれに気づいて肩をすくめる。
しかし波紋を作った張本人である男は、臣下たちの驚きにまったく頓着せず彼らを見回した。
「間違った答に固執して時間を潰すな。犯人はこいつじゃない。俺が保証する。……ティナーシャ!」
「あ、はい」
ティナーシャは苦笑すると立ち上がった。両手のひらを返して周りの人間に見せる。
「私は確かにクム師の仰る通り、少し変わった形式の魔法を操ります。光球など精霊系の魔法はわりと得意なので……これくらいのことはできます」
彼女の両手のひらの間に光の球が出現した。
それは一度天井まで浮かび上がると、滑るように窓に向かい、その隙間をすりぬけて夜の彼方まで飛んで行く。見えなくなるほど遠く、小さくなるまで、その光を失わない光球を見て人々は長さの違う溜息をもらした。
「持ち場を離れたのは軽率でした。このようなことになって、誤解されることもやむを得ないと存じます。本当に申し訳ありません」
深く頭を下げた彼女を、一部を除いて皆がばつの悪そうな顔で見やる。
オスカーはその空気に一息つくと、一人のん気な顔をしているアルスを名指しした。
「アルス、お前が調査しろ。メレディナも手伝ってやれ」
その命令に、二人は顔を見合わせると黙って恭しく一礼した。
※ ※ ※ ※
調査を命じられたアルスとメレディナは、もうすぐ日が変わろうかという夜中、再び現場を見るために城の廊下を門へと歩いていた。
「本当に彼女が犯人じゃないのかしら。だって光球がついててもその場を離れられるなら、より怪しくなっただけじゃない?」
「メレディナは殿下が彼女をかばってると思ってるのか?」
彼女は幼馴染の問いに明確には答えなかったが、そう思っていることは苦渋の滲む表情から明らかだった。アルスは小さく肩をすくめる。
「まぁ、当然の可能性ではあるが、俺はそうは思わないな。ラザルも言ってたし、彼女が殿下と居たのは本当だろう。それにちょっとな、違和感を覚える」
「違和感?」
「勘だけどな。彼女はもっと本当は……怖い人間なんじゃないだろうか」
メレディナは場違いな言葉を笑い飛ばしかけて、だがアルスが真剣な顔をしていることに気づいたらしい。男の顔を覗きこむ。
「どうしたの? 本気?」
「本気。こう……さっき近くに居て分かったが、時々肌がピリッとすることがある。本能的に身構えたくなるというか。彼女は本当はそういう人間で、普段はそれを隠してるんじゃないだろうか」
「じゃあ余計に怪しいじゃない」
「いやそういう感じじゃなくて……まぁいい。忘れてくれ」
アルスは苦笑すると頭を振った。
ティナーシャの闇色の瞳が、時折本当の夜の深遠に見えるこの感覚はおそらくメレディナには伝わらないだろう。
あの魔法士が本当に人を殺したいと思ったなら、おそらく場所や人など関係ないのだ。もっと跡形も無く、或いはもっと公然と行うはずだ。それが出来る人間だ。
果たしてオスカーはそれを承知で彼女を傍に置いているのだろうか。
アルスは仕えるべき主君の姿を思い浮かべて、軽くかぶりを振ったのだった。
二人は現場に行く前に、死体を検分した魔法士と合流した。
小柄な魔法士はカーヴと名乗る金色がかった茶色の髪の男で、クムと共に先ほどまで検分をしていたらしい。彼は二人と並んで歩きながらその結果を説明してくれた。
「死因は毒殺のようです。焼き損ねた吐瀉物が路地に少し残っていたんですが、そこから毒が出ました。古い魔法薬の一種でリマスといいます。無味無臭で服用すると、嘔吐と、あと全身が充血して鼻血が出たりしますね。数分で死に至ります」
「手に入りやすい毒なの?」
「知識があれば作れる代物です。探せば売ってるかもしれませんが、ファルサスでは無理でしょうね」
カーヴは手元に持っている書類の枚数を確認しながら答えた。アルスは更に突っこんで聞く。
「じゃあたとえば、うちの魔法士ならみんな作れるか?」
「半分くらいは作れます。ただ、私は魔法薬が専門なんですが、誰かを殺したいと思った時にリマスは作りません。おそらく他の者もそうでしょう」
「何故?」
「面倒なんですよ。手順や材料が。昔の魔法薬ですから。魔法薬は術式をかけて仕上げるものですが、その術式自体も精霊魔法の影響が色濃くて……とても古いです。今はもっと簡単に作れる毒薬があります」
「その毒自体は犯人の見当をつけられるほど特殊なものではないが、何故か面倒な毒を使ったってことか」
アルスは顰めた眉を指でほぐしながらカーヴに確認した。
「で、バラバラになってたり焼けたりしてたのは?」
カーヴは書類をめくると、忌まわしいものに触れるような表情をした。
「死体をばらしたのは死後しばらく経ってからです。出血があまりなかったのはそのためですね。首・両腕・両脚は切り落され、胴体は二つにばらされています。いずれも斧か何かを振り下ろして切断したようです。一回で切れてるところと数回やってる部分とありますね。で、その後焼却です。油をかけた後火をつけてますね」
「壮絶だな」
三人ともがそれぞれ嫌な顔をした。
現場の路地裏に着いた時は既に真夜中であったが、街のあちこちからはまだ酒を飲む賑やかな声が聞こえてきている。
しかしその場所は通りからは死角になっている上、元々行き止まりだ。左右の建物には窓が無く、辺りの喧騒とは別世界のように思えた。焦げた地面を見ると静寂に死の匂いが漂うような気さえする。
「最初に見つけたのは誰?」
「うちの魔法士です。テミスを探していて見つけました。テミスの恋人にも見つかっちゃって半狂乱になったらしいですよ。とりあえず今は城で休んでもらってます」
「あの状態じゃね……」
メレディナは寒気でもするのか自分を両腕で抱きしめた。
「何か分かった? アルス」
アルスは現場から少し戻って通りの方を見ていたが、その声に二人のところまで戻ってきた。
「濠もちょっと見てみたいな。でももう暗いから明日か。明日濠を見て、話を聞いて、それで殿下に報告に行く」
「分かったの?」
目を丸くするメレディナにアルスは眠そうに手を振った。
「いや全然」
がっくりする二人をよそに、アルスは星が浮かぶ空を見上げる。
「でも何となく怪しいってのはあるんだよな。例えば、死体をバラバラにしたり焼いたりするのって何故だと思う?」
「何かの儀式?」
「怨恨ですか?」
ほぼ同時に違う答えを出してくるメレディナとカーヴにアルスは首を振った。
「俺が疑うなら、『入れ替わり』と『処理のしやすさ』だ。……まぁ今日はもう帰ろう。いい加減酒飲んで寝たい」
アルスは首をさすりながらどんどん歩き出す。 メレディナは慌ててその後を追った。
朝、カーヴの協力の下に濠を調べてから、アルスは殺された魔法士の恋人であった女性に会いに行った。彼女はすっかり半狂乱であり、「恋人を殺した犯人を捜して欲しい」と叫ぶばかりで何も有力な情報は得られない。金きり声を聞き続けたアルスは頭痛を覚える。
「結局、殺された人はどういう人だったの?」
メレディナはアルス、カーヴと共についた昼食の席で疑問を口にした。カーヴはその問いにカップを持ったまま首を捻る。
「強いて言えば……要領のいい人でしたね。何でもさらっとこなしてて、女性受けもいいですよ」
「軽い?」
「軽いといえば軽いですね。でも愛想や面倒見はいいし、恨まれたりはしてなかったです」
カーヴはそういうと、一旦言葉を切って茹でたジャガイモを口に放り込んだ。聞いていたアルスが苦笑する。
「まぁ人は見かけによらないからな」
「実際のところは分からないわね」
アルスとメレディナは同じ定食を頼んでいる。
城から程近い食堂は、ちょうどお昼時で賑わっていた。談笑する者たちが多数の店内で、まさか猟奇殺人事件についての議論がなされていると思う人間はいないだろう。
若き将軍はカップに口をつけながら考えを纏める。幼馴染の思考を補うかのようにメレディナは質問を重ねた。
「人柄以外はどうなの? 利害とか」
「城内でいうなら、彼が死んで得をする人は思いつきません。そもそも皆違うことを研究してますし……。出世も争うという感じではないですからね」
「何を研究してたの?」
彼女は更に視線を落としたまま尋ねる。その手元では麺を慎重に絡め取ろうとしていた。
「魔法湖と精霊魔法です。魔法湖は中でも旧ドルーザにある魔法湖を扱っていたようです」
「魔法湖? って何」
「本当に湖があるわけではないのですが、魔力が地中にかなりの濃度で停滞している場所というのが、世界に幾つかあるんですよ。それを魔法湖といいます。テミスは中でも、七十年前の戦争の舞台となった、ドルーザの魔法湖の調査をしていました。月に一度はあそこに出かけてましたよ」
アルスとメレディナはよく知る単語に驚いて顔を見合わせる。
「七十年前の戦争ってあれだろ、魔獣と魔女が戦ったっていう」
「それです」
昼食のテーブルに一瞬重い沈黙が訪れた。
ファルサスにとって、七十年前攻め込んできた隣国ドルーザとの戦いは忘れられない歴史の一つである。
ドルーザは魔法士たちを駆使して当時の軍を苦戦させ、ファルサスはその猛攻の前に一度は国土へのかなりの侵攻を許した。
なかでも最悪だったのは『魔獣』と呼ばれる巨大魔法兵器で、突如戦線に現れたこの生き物は圧倒的な破壊力を以ってファルサス軍を蹴散らした。なす術もない程強大な相手に、将軍たちも魔法士たちもみな絶望を感じたのだという。
そこで当時の王レギウスは、魔女の助力を得てドルーザの持ち出した最悪の魔法兵器である魔獣を退けることになる。
結果、ファルサスは勝利はしたもののかなりの人的被害を受け、その復興に三十年を費やすことになった。
一方敗北したドルーザは、当時の政治の不安定さもあってか急激に衰退し、今は四つの小国に分裂してしまっている。
「魔獣は死んでないらしいじゃないか。そんなところ行って危なくないのか?」
「だから行ってたんですよ。魔獣の封印が解けそうになれば、魔法湖に影響が出るはずですから」
「うーん……。何か話が大きくなってきたな。犯人の見当がさっぱりつかんぞ」
「さっき分かったって言ってたじゃない」
「あれはやり方がわかっただけで、犯人はさっぱりだ」
アルスは当然のようにメレディナの皿から付け合せの野菜を摘んで口に入れた。彼女は呆れて溜息をつくと、気を取り直してカーヴに向き直る。
「精霊魔法の方は? 精霊術士だったの?」
「違います。精霊術士って非常に少ないんですよ。それに閉鎖的ですし。うちには精霊魔法を使える人間は何人かいますが、純粋な精霊術士はいません」
「へぇ、そうなんだ。意外」
「純粋な精霊術士って何か違うのか?」
アルスの疑問に、魔法士の男は食べ終わった皿を端に退けると両手を広げて見せた。
「威力が全然違います。精霊術士は自然物を操ることに長けていますが、小隊分も人数がいれば一国と戦争できますよ」
「うわ、すごいなそれ」
「その代わり彼らはほとんど歴史の表に表れません。生来の素質も必要ですし、精霊術士って純潔が条件なんです。純潔でなくなればその力は失われます。そんななもので少人数で固まって、あまり外部の人間と関わらないでいるみたいですね。テミスはそのあまり表に出ない精霊魔法を少しでも解析しようとする試みもしていたようです。彼が入れていた紋様も精霊魔法のものですよ」
「あーあれかー。結構研究熱心だな」
アルスは腕一面に彫られていた黒い紋様を思い出した。
彼は空っぽになった自分とメレディナの皿を名残惜しそうに見ると、両腕を上げて背伸びをする。
「一度殿下のところに報告に行ってみるか。お知恵を拝借しよう」
その言葉に応えて、彼らは食堂を後にすることとなった。
調査の概要報告を受けたオスカーは、アルスにからかうような笑みを向けた。
「何? 分かったって?」
「おそらくこういう方法じゃないかというやり方は」
「犯人の目星は?」
「さっぱりです」
そのあっさりとした返事に、オスカーはかえって機嫌よく笑った。
「じゃあそのやり方を聞かせてもらおうか。ああ、関係者を全員集めた上で、にしよう。皆の反応が見たい」
「かしこまりました」
アルスが退出すると、オスカーは無人の背後に声をかけた。
「だそうだ。お前も来るといい。ティナーシャ」
返事はなかったが、すぐ傍で女が溜息をつく気配がしてオスカーは可笑しそうに笑った。
関係者が集められたのは、普段は魔法実習に使われる広い部屋である。
部屋には被害者と親交があった、もしくは間接的にでも関係がありそうな魔法士、兵士、文官が集められた。
部屋の一番奥にオスカーが座り、両脇にアルスとクム、さらにその隣りにメレディナが座って他の者も大きな円状に座る。
ティナーシャは輪の外、オスカーの背後に壁に寄りかかるように立ち、その向かい側、ドアの前にはテミスの恋人であったフューラが座った。
被害者は身寄りがなく、親族は一人も居ない。 その為フューラ以外は皆、城に属する者である。
「さてじゃあ、皆揃ったようだ。アルス将軍の調査、推論を聞いてもらおう」
オスカーはそれだけ言うと、左に控えるアルスに場を譲った。アルスは一歩円の内側に入ると順に皆を見回す。その中にはカーヴの姿もあった。
「まず当日のテミスの行動から纏めたいと思います。濠を担当する魔法士たちは六時に担当区域に到着し光球を作成しました。勿論彼もです。彼は直後……問題になったティナーシャ嬢と会い、会話をしています」
アルスは言いながら振り返ってティナーシャを確認した。 彼女は苦笑して会釈を返してくる。
「その後しばらく彼の目撃情報はありません。あの人ごみですし、いてもいなくても分からないでしょう。ただ七時三十分頃、隣りのティナーシャ嬢のところで子供が溺れる騒ぎがあり、その時に彼も目撃されています。したのは主に俺ですが。少し離れたところから手をあげて挨拶する魔法士を確かに見ました」
彼はその時の様子の右手をあげて、会釈をして再現した。
「その後八時三十分過ぎに、そちらの彼女……フューラ嬢が訪ねてきて、テミスがいないことに気づきます。彼女は周りの魔法士にそのことを尋ね、皆が彼の不在に気づいた時、光球が消滅。その後の捜索で九時頃にテミスの遺体が発見されました」
アルスは円の中心まで歩いていき、くるっと周囲を見渡した。 それぞれが思い思いの表情で彼の話を聞いている。
「今まではその為八時三十分過ぎから九時までの間に殺害が行われたと思われていました。そしてその時間同様に不在だったティナーシャ嬢が疑われたわけです。―――― しかし、三十分で彼を殺害し、出血しないようしばらく待ってから遺体を解体し焼く……これはちょっと強行じゃないでしょうか」
アルスはカーヴに目配せをする。それを受けてカーヴは隣室に出て行った。
「だから俺は今日テミスの担当していた濠の区域に潜りました。二日続けて濠に潜ることになるとは思ってもみませんでしたよ」
そうおどけてみせていると、カーヴがあるものを抱えて戻ってきた。アルスはそれを指し示す。
「そこで俺はあれをみつけたわけです」
カーヴが両手に抱えているものは大きな青いガラスで出来た球体だった。ガラス球は内側から煤けており、下に蝋の溶けたものが固まっている。
「結構大きいので一つしか持ってきませんでしたが、等間隔で六つくらい底に沈んでましたよ」
それが何を意味するのか半数ほどの人間はすぐに理解した。彼らは唖然とした表情でアルスと、カーヴの持つ球体を交互に見やる。
「密封してあるから中に水は勿論何も入りません。けど魔法でなら外から蝋燭に火をつけることは出来るはずです」
その言葉を受けて、クムは力無く「ああ……」と肯定した。
「勿論中の空気や蝋からいって、ある程度の時間が経てば自然に消えます。テミスの光球が一度消えて再点灯したという情報はありませんし、最初から彼の光球はこのガラス球だったのでしょう。彼はティナーシャ嬢に言ったそうですよ。『しばらくはこの辺りにいるから』と。本来ずっとそこにいるはずの彼は、しばらくしたらその場を離れるつもりだった。光を魔法で維持していないのは、ティナーシャ嬢ではなくテミスの方だったんです」
参加者の、声にならない息が場の空気を揺らした。
オスカーは足を組んで、さりげなく聞きながらも全員の反応を観察している。
ティナーシャは目を閉じてただ話を聞いていた。
「これによって、光がついているということが、そのままテミスがその場に生存しているということを証明する図式は成り立たなくなりました。では殺害が行われたのは、俺が目撃した七時三十分以降か、となりますが、ちょっとここで俺はある推論をお話したい」
アルスは一度目を閉じ、深呼吸すると話し始めた。
「犯人はおそらく、テミスとあらかじめ約束していたんでしょう。前もってガラス球を二人で用意し沈めておいた。そしてテミスはそれに火をつけ、まるで光球があるようにみせる。その後犯人に会う為にその場を離れたわけです。そして犯人は問題の路地裏でテミスを毒殺した。―――― 彼が殺された時、蝋燭の光が消えるまではまだ余裕がありました。でもそこで予想外のことが起こった……子供が溺れる騒ぎがあったのです」
彼はメレディナを見た。彼女はきょとんとした目で彼を見返してくる。
「あの時既にテミスは死んでいた、こう考えてはどうでしょう。現場からちょっと角を曲がると、建物越しに濠の様子が伺えます。犯人はそのこともあってその場所を選んだのでしょうが……その人物は騒ぎに気づいてかなりあせったはずです。人が潜れば光球が魔法の光でないことに気づかれてしまう。そうでなくても騒ぎになればテミスがいないことに誰か気づくかもしれません。犯人は慌てて、テミスのローブをかぶり、濠へと戻った。そして潜られた場所がテミスの担当区域ではないことを確認し、更にテミスの振りをして俺に挨拶をしてみせた。危機を見事好機に変えたわけです」
「いや待ってくれ」
クムが手を上げて話を遮った。一同の注目がそちらにむく。
「アルス将軍だったからよかったものの、腕を上げたんだろう? 魔法士ならばその紋様がテミスのものじゃないと気づいたはずだ。そんな危ない橋を渡ったのか?」
「だから、テミスの腕を上げたんですよ。解体してあったでしょう? 腕以外はローブの下に隠せなかった。だから腕だけ持ってきたんです」
アルスの言葉に、ほぼ全員が絶句した。
犯人の大胆さと合理的な凶行が、その場を震撼させる。
メレディナは緑の目を丸くして、わずかに開いた唇から言葉にならない息をもらした。
「犯人はその後現場に戻ると、腕を切り取ったことに気づかれないよう他の部分も解体した。そして、発見された時に血の乾き具合などから殺害時間が絞られないように、もしくは毒物を判別できないように、遺体に油をかけて焼いたわけです」
アルスはどこか冷ややかな目で床に視線を落としながら続ける。
「こう考えると、犯人の絞り方はまったく異なってくる。その人物はテミスと親しく、テミスの光が消えるまでの間不在がちだった人間で、そして光が消えた後はおそらく所在を明確にしている。そんな人物だと推察されます。俺の調査と考えはここまでです」
アルスは振り返り、オスカーに向かって一礼すると自分の席に戻った。
後にはそれぞれが他の人間を探るように見回す、疑心暗鬼の沈黙が残る。その空気を切ってオスカーは口を開いた。
「ご苦労だった。さて諸君、心当たりはあるか?」
気まずい緊張が部屋を満たす。誰もが自分の無実や他人の疑惑を口に出そうとして、出来ないでいる。
そんな中、オスカーは既に答えが分かっているかのようにある人物を注視していた。その人物はアルスの話の途中から、驚くわけでもなく妙に落ち着き払ってただ床の一点を見ているように見える。
どう切り込もうか、オスカーが思案した時、背後から彼の守護者の細い声が響いた。
「あなた、精霊術士ですね。元かな? テミスに紋様を授けたのもあなたでしょう?」
ティナーシャにそう言われて、顔をあげたのはテミスの恋人のフューラだった。
ティナーシャの言葉にフューラが何か言うより先に、周囲が騒然となった。
主に驚愕の色を明らかにしているのは魔法士で、アルスとメレディナも驚いた顔でティナーシャを振り返っている。
そんな中代表してクムがティナーシャに問いかけた。
「何故分かる?」
「何故って……私もそうですから。精霊術士かどうかは、元であっても見れば分かります。あとテミスの紋様は精霊魔法が専門じゃない人にはかけられない難度のものでしたよ。お会いしたことない精霊術士が城にいるのかと思っていましたが、どうやら違うようですね」
そこで一旦言葉を切ると、ティナーシャは何処か悲しげにフューラを見つめた。静かな声で彼女に問う。
「貴女がその純潔と力を捧げたのは彼でしたか? 貴女はそれを後悔しているのですか?」
フューラは、まっすぐにティナーシャの闇色の瞳を見返した。そこには空虚な意志の力がこもっている。
やがて彼女はにっこり微笑むと、口を開いた。
「森を出て……こんな異国まで来て、しかも王宮で精霊術士に会うとは思ってもみなかった。これは誤算。見ただけで分かるなんて、相当強力な精霊術士のようね。疑惑をかけられることになって御免なさい」
彼女の目には、凪いでいる水面のような静けさがあった。寿命を終え死に行く老人に似た、透き通った諦観が全身を覆っている。
「多くを語るつもりはないわ。正当化するつもりもない。ただ私は……魔法を使えなくなった私を見下す彼の目が耐えられなかった。彼の優越感を受け止められなかったし、彼の体を見る度に、私のかけた守護の……私の浅はかさをみるようで、それが厭だった。私は私の矜持の為に彼を殺した。それだけのことよ」
その声は、理解も同情も必要としていない、彼女自身の言葉だった。
※ ※ ※ ※
「結局、死体を切断したのは、子供の騒ぎの後だったのね」
オスカーのいる執務室に、クムとアルス、メレディナとティナーシャは集まって話をしていた。
フューラへの聞き取りはあらかた終わっており、彼女は取り合えず牢獄へ収監されている。
メレディナはお茶のカップを手に取りながら、聞き取りの内容を書面で確認した。ティナーシャは盆を乗せた台の傍に立ち、茶器にお湯を足しながら答える。
「紋様が出るような魔法は精霊魔法に限らず、最低でも術者が生きている限りその効力を保ちます。彼女の場合もだから、精霊術士としての力を失っても紋様は機能し続けた。本来の力がなくなっても、かけた本人ですからね、紋様を一部自分の体に移し変えるくらいは出来たそうです」
「女の腕だって、何で気づかないのよ」
メレディナにつつかれてアルスは頭を抱えた。それをクムがなだめる。
「ああいう強烈な印象があるものが目に入った場合、人は意外とそれしか頭に入らないものだよ。ましてや遠目じゃ仕方ない」
「まぁ騒ぎに気づいてから腕を切り落とすのは無理だろう。間に合わん。あの女があらかじめ用意していたのは、紋様を消してもわからなくするための焼却準備だけだったというわけか」
オスカーは組んでいた足をほどくと、ティナーシャから菓子を受け取った。アルスは更に頭を抱えている。
メレディナはそんな幼馴染を無視して問いかけた。
「では何故体を解体したんでしょう。そのままの方が入れ替わりがばれなくて済んだんじゃないでしょうか」
それに答えたのはティナーシャである。
「彼女にとって入れ替わりがばれるかどうかは賭けだったみたいですね。濠に沈んだ球も回収できませんし、誰かが勘付く可能性も考えたでしょう。あれがテミスではないのではと疑われたその時、腕が切り取られていたなら皆に可能性がある。でも切断されていない場合、紋様を移すにしろ新しく書くにしろそれが出来るのは精霊術士しかいないわけです。精霊術士であった自分に誇りを持っていた彼女は、万が一でも同胞に疑いが向くことは避けたかった。まぁ今回はそれがかえって災いして入れ替わりに気づかれたわけですが」
「見事にひっかかってるじゃない」
メレディナの冷たい言葉にアルスは顔をあげられない。
「まぁそう苛めるな。アルスのおかげで解決に漕ぎ着けたわけだからな。早い解決で助かったぞ」
オスカーの言葉にアルスは改めて深々と頭を下げた。明らかになった真相に、しかしクムは苦い顔をして首を振る。
「ですがテミスは私に彼女との結婚の予定を相談してきていたんです。彼は本当に彼女をそんな見下すような目で見ていたんでしょうか」
「それが本当なのか、それともあの女の妄想なのかは、もう誰にも分からないさ」
オスカーはそう締めくくると広げられた書面の一枚に署名した。 クムがそれらを纏めて手に取る。
ティナーシャが窓の外を見ると、日は既に傾きかけていた。
話が終わるとクム、アルス、メレディナは仕事に戻る為に執務室を出て行った。
メレディナはティナーシャが残ることを不審に思ったようだが、口には出しては何も言わなかった。当の魔女は他の人間がいなくなった後、黙々とカップを片付けている。
「思うに何故私は女官のようなことをしているんでしょう」
「お前の淹れる茶が美味いからじゃないか」
オスカーの返事に、彼女は釈然としない顔で、お茶を乗せた盆を壁際の台に置いた。
「捕まった彼女はどうなるんですか?」
「親父の決めることだからな……。でもすぐに処刑などはないだろう。魔法士たちは色々聞きたいこともあるみたいだ」
ティナーシャはそれを聞いて、痛々しいものを見るように自分の手の中に目を落とす。
「精霊術士は大きな街に出てくることがほとんどありませんしね」
「お前は大丈夫なのか? 手の内を見せて」
「のらくらかわしますよ。それに不本意ながら貴方のお気に入りだと皆に認識されたようです。あからさまなことはしてこないでしょう」
魔女は嫌そうな顔をしながら、後ろで束ねていた髪をほどいた。お茶を淹れるのに邪魔だったのでまとめてあったのだ。
「よかったじゃないか」
「よくない!」
彼女の返答にオスカーは喉を鳴らして笑いながら別の書類に手をつけていく。ペン先をインクにひたしたところで、彼はあることを思い出して顔を上げた。
「そういえばお前も精霊術士ってことは、純潔じゃなくなると魔女の力もなくなるのか?」
ティナーシャはテーブルを拭きながら、あぁ、と微笑んだ。
「それ本当なんですけど俗説です。実際は性交渉を行うと魂が混じりやすくなるんで、精霊魔法の実行に以前の数倍の魔力を要するようになるだけです。でもそうなると実際ほとんどの術者は精霊魔法が使えなくなっちゃうんですね。簡単なものは別ですが……。殺害に使われたリマスも彼女自身が調合したんじゃないでしょうか。あれは術式自体は簡単ですから」
彼女はそこで言葉を切ると、テーブルを拭き終わった布を畳んでお茶の盆まで置きに行く。手ぶらになると執務机の前まで戻ってきて、肩をすくめた。
「私なんかは元々の魔力が違うんで、あまり困らないんじゃないですかね。精霊魔法しか使えないわけじゃないですし。そりゃかなり大きな術を使う時には苦労しそうですが」
「ほう、それはよかった」
そこまできて、ティナーシャはようやくオスカーの意図に気づいてハッとした。慌てて机を回って彼に詰め寄る。
「いや今の嘘。困ります。かなり困る。魔法使えなくなっちゃいますよ」
彼はティナーシャの剣幕も意に介せず、からかうように笑っている。
「そうなったらそうなったでいいじゃないか。俺がちゃんと責任とって守ってやるぞ」
「よくない!!」
執務室の戸が激しく叩かれたのは、ティナーシャが頭に血を上らせながらオスカーの両肩を前後にゆすっていた、そんな時である。
「どうした」
オスカーの声に応えて駆け込んできた兵士は息を切らしながら言った。
「魔法士殺害のため投獄されていた女が自殺しました!」
その知らせによって、ティナーシャが息を呑む音をオスカーはすぐ耳元で聞くことになった。
フューラにあてがわれた小さな部屋には、既にクムとアルスも到着していた。
部屋の中央にはうつぶせに倒れている女がそのままになっている。彼女は右手に小瓶を握っており、辺りには血がわずかに飛び散っていた。
「殺害に使われたのと同じリマスを服用したようです。食事を絶っていたのか吐瀉物はありませんでしたが、目と鼻から血が出ていました」
「持ち物を調べなかったのか?」
「調べたのですが、その時は発見できなくて……」
発見した見張りの兵士が状況を説明している間、ティナーシャはフューラが握り締めている小瓶を覗き込んだ。白い指を伸ばして、瓶の口にのこっている雫を掬い取る。
他の者は皆オスカーを中心に集まっており、彼女の行動を見咎めるものはいなかった。ティナーシャは口の中で小さく呪文を詠唱すると、指の上の毒薬に向かってその構成を注ぎ始める。
指示を与えられた皆がばらばらに動き始めた時、既に彼女は何もなかったようにその場を離れて部屋の外に立っていた。
オスカーは部屋から出てすぐ、手招きする彼女に気づいてその元に歩み寄ると、身長の低い女に応えて身をかがめる。魔女は軽く背伸びして、長身のオスカーに耳打ちした。
「フューラの周囲をもう一度調べさせた方がいいです。彼女には協力者か黒幕がいます」
オスカーは真面目な顔で頷くと、残っている兵士に命令を出すために部屋の入り口に戻っていく。
再び一人になった魔女は深い溜息をついて、その場を離れた。
再度の調査により、一月ほど前からフューラの周りに見かけない男が出入りしていたということが報告された。更にフューラが捕まり、自殺した当日、やはり見ない顔の魔法士が城内を歩いていたことも。
それらの証言を付き合わせると、どうやら男は同一人物ではないか、という結論に落ち着いたが、肝心のその人物の足取りは全くつかむことができなかった。不穏さの残る事件に、オスカーは気分の悪さを覚える。
フューラの遺骸は、ティナーシャが引き取って何処か遠くの森に埋葬してきたようだ。
男の為に力を捨て、そして自分の矜持の為に男を殺した孤独な魔法士に ティナーシャが何を見たのか―――― 彼女は結局、何も語ることはなかった。
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