第122話 異形の異教徒と色無き魂。俺がまた喧嘩の観客となること。

 昼間に見るサモワールは、夜に見るのとは全く違っていた。

 おどろおどろしい門の女性像は日の光の下、どこか呑気で間が抜けていたし、あんなに厳めしく感じた本棟も、こうして見るとごくごくありきたりな、大きいばかりの建造物としか映らなかった。

 上の階には、まだリケとの戦いの傷跡が深々と残ってはいたけれど、修復は概ね順調そうである。


 俺達は馬車を降りて、暇そうに欠伸をしている若い門番のところへ歩いて行った。

 まだ十代といった初々しい顔貌の若い門番は俺達の姿を認めるなり、大慌てで畏まった。


「あっ、ひっ、ひひ姫様!? …………と、勇者様!! なぜ正門の方へ!? 裏門からいらっしゃると伺っていたのですが…………。と、とにかく、よ、よようこそお越しくださいました!!」


 リーザロットは静々と彼の前に歩んでいくと、微笑んで言った。


「おはようございます。トリスさんのところまで案内をお願いできますか?」

「は、はい!! こ、ここ、こ、こちらへどうぞ!!」


 門番がやけに肩肘張って、妙な姿勢で歩き出す。

 ナタリーと来た時とはえらい対応の違いだなと思いつつ、俺はリーザロットと一緒に彼について行った。門番はチラチラと鼻の下を伸ばしてリーザロットを盗み見しながら(気持ちはよくわかる。今日も彼女はとても愛らしい)、なぜか俺に尋ねてきた。


「あ、あの…………ど、どうして正門へいらしたのでしょうか? 俺…………あ、いやっ、ワタクシ、裏門の方からお越しになると思い込んでいまして…………うっかり、欠伸なんてしてしまって…………その、すみません…………」


 俺はこの純朴そうな顔の門番に何となく親近感を覚えた。俺より一回り若いが、どうにも顔つきが似ている気がする。整えられていないフサフサの眉毛とか、プツプツと額に吹き出たニキビとか、高校生の頃のタカシそっくりで実に微笑ましい。

 俺はなるべく相手を安心させるように、穏やかに話した。


「驚かせてすみません。それ、俺が言ったからなんです。裏口の方が事故か何かで騒がしかったから、こっちに回ろうって話したんです」


 俺の答えに、門番はポカンと口を開けた。


「はぇっ、事故なんてあったんですか?」

「詳細はわかりませんけども、人だかりができていましたよ」

「近くで何かあれば、私にも連絡が来るようになってるんですが…………。どうしたんでしょうか?」

「さぁ…………」


 俺に聞いてもしょうがないだろうと思いつつ、小さく肩をすくめてみせる。門番は口を開けたまま、首を傾げながら歩いて行った。リーザロットはそんな門番におもむろに近づいていくと、ひょっこりと彼の顔を覗き込んだ。


「気になりますか? 裏手の事件」

「へ!? あ、蒼姫様!? あっ、ああ、あの、それはその…………」

「お顔に書いてあります。心配です、って。…………貴方は仲間思いの方なのね」

「えっ!? あ、あの、確かに、とても良い先輩たちだし、この間の事件のこともあるので…………」

「そうだったのですか。…………実は、私もちょっぴり興味があるんです。よろしければ一緒に見に行ってくれませんか?」


 門番が間抜けそのものの顔で姫に見惚れている様を眺めながら、俺は我が身を反省した。自分も他人からあんな風に見えているのだろうか…………。

 門番はしばらく悩んでいたが、やがて張り切った感じで返事した。


「は、はい!!! で、では、喜んでご案内させて頂きます!!!」


 リーザロットは少女のように無邪気にこちらを振り返って、笑った。


「ごめんね、コウ君。…………ちょっとだけ、付き合ってください」


 やれやれ。せっかく迂回してきたっていうのに。

 俺は好奇心旺盛な姫様に苦笑しつつ、二人と共に裏口へと向かった。



 サモワールの裏通りには、先ほどよりもさらに多くの人が集っていた。

 人の輪の端っこで、厳つい体躯の男達が喧騒を眺めている。

 俺達を先導していた門番は彼らの元へ小走りで寄っていくと、あっけらかんとした声で尋ねた。


「先輩! あのっ、これ、一体何の騒ぎなんです!?」


 先輩門番達のうちの一人が振り返り、険しい顔つきで答えた。


「どうもこうも、「太母の護手」さ。アイツらがまた何か、奇怪な術を使おうとしているんだ。今は自警団が対応しているが、一応、俺らも見張っている」

「また「護手」ッスか!? いくら何でも、最近多過ぎじゃないですかねぇ?」


 後輩の言葉に、先輩は深い溜息を吐いて首を振った。


「まったく、いい迷惑だ。商会連合のアホ共が考え無しに店を増やしてから、ひっきりなしに群がってきやがる。…………しかもまた面倒なことに、やって来た自警団のお嬢ちゃんが「無色の魂カラーレスらしくてさ。ヤツらを余計に興奮させちまってんだ」

「マジッすか? ってか、「無色の魂」なのに自警団ってなれるものなんスか?」

「俺が知るかよ。っつぅか、お前、正門の警備はどうした!? そろそろ蒼姫様達が到着なさる頃だろう。もしかしたら騒ぎを避けられて、あちらにお着きになるかもしれん。早く戻れ!」

「あっ、それなら大丈夫ッス!」

「何だと?」

「姫様と勇者様なら、そこに」


 後輩の指し示した先へ、先輩門番の視線が伸びる。彼は俺達を認めるなりたちまち色をなし、後輩を怒鳴った。


「何が大丈夫だ、馬鹿野郎!!! 何でこんな所にお連れしたんだ!? 大体、護衛がお傍を離れてどうする!? 阿呆か!! ワンダの方がまだマシな仕事をするぞ!!」

「ヒッ、すみません!!!」


 後輩門番が頭を抱えて縮こまる。(うむ、しみじみする程どこかで見た光景)

 リーザロットと俺は涙目になっている後輩門番の方へ歩いていき、取りなした。


「ごめんなさい。どうか彼を叱らないであげてください。私が行きたいと無理を言ったんです」

「そ、そうなのですか? しかしですね…………」


 先輩門番は人だかりへチラと目をやり、たじろぎながら言葉を継いだ。


「申し訳ありませんが、こちらは今、ご覧の通り危険な状態です。何事も無いうちに、早く館の中へ入って頂けると幸いです」

「一応、俺も先に連れて行こうとしたんですよぅ~」

「お前は黙っていろ。さぁ、蒼姫様、こちらへ」

「ですが…………。って、あら、コウ君?」


 門番達がリーザロットを連れて行こうとする脇を抜けて、俺は人だかりの中を覗き込んだ。さっき門番達が話していた内容からすると、騒ぎの中心にいるのは、もしや…………。


 俺は予想通りの、背の高い身の引き締まった女性の後ろ姿を目の当たりにして、思わず叫んだ。


「ナタリー!」


 女性がアクセサリーをシャンと爽やかに鳴らして振り返る。相変わらずの、パッと明るい派手な顔立ち。翠玉色の涼やかな瞳。

 ナタリーはその目を大きく瞬かせて答えた。


「ミナセさん!? どうしてここに!?」


 俺は彼女と相対する、漆黒のローブに同色のフードを目深にかぶった、胡乱な出で立ちの人間たちを見やって言った。


「たまたまサモワールに用があったんだよ。それよりも、あれが「太母の護手」? 何を揉めているんだ?」


 ナタリーはキッと眉を吊り上げると、彼女にしては冷たい、怒りに満ちた口調で話した。


「あの人達、この街中で魔獣を呼ぼうとしているんです。止めなくちゃ」

「魔獣って、魂獣みたいなもの?」

「そう。魔獣は魔術で操られた、っていうか、改造されちゃった魂獣。…………とにかく、危険なんです!」


 ナタリーが護手たちを睨み付ける。護手たちは瞬きもせず、一心不乱にナイフで魔法陣を道路に刻んでおり、彼女には目もくれない。フードと口元を覆う大きなマフラーのせいで顔は良く見えなかったが、垣間見える充血した目つきには明らかな狂気が宿っていた。


「ねぇ。まだ何も言わないなら、もう一度行くよ。もう容赦はしないから」


 ナタリーが言うと、人だかりが俄かにざわめきだす。俺は人々を見回して、それからようやく道路や道沿いの家に目をやった。

 よく見れば、建物の壁や道の所々がハンマーで殴られたみたいに激しくえぐれている。人々はどよめきながら、少しずつナタリー達から距離を取って輪を広げつつあった。

 俺はナタリーに尋ねた。


「な、何をするの?」

「何って、決まっているじゃないスか!」


 ナタリーの翠玉色の瞳が、真夏の陽に晒された南国の海のように眩しくきらめく。俺はそれと同時に、彼女の瑞々しい青葉の魔力をひしと味わった。若い四肢に漲る、血潮のざわめきが俺にまで伝わってくる。

 ふいに、俺の頭にリーザロットの声がよぎった。


(コウ君、下がって。ナタリーさんが強化術を使います)


 突然の念話に、俺は驚いてリーザロット達が立っている方を見た。人の隙間から見えるリーザロットは、キラキラと目を輝かせて、手を胸の前で組んでいた。


(強化術特化型の「無色の魂」! 楽しみですね!)

(「ね!」と言われても…………)


 俺は最早二の句が継げず、スススとナタリーから離れた。


 ナタリーは真っ直ぐに前を見据え、片膝と両手を地につけ、クラウチングスタートのような恰好を取った。豊かな髪が横顔にフサリとかかり、彼女を一層精悍に、獣らしく見せる。

 左腕の海獣の刺青が、今日も鮮やかだった。


 ナタリーの気迫に当てられてか、護手の内の一人がユラリと立ち上がって彼女と向かい合う。

 今まで気づかなかったが、恐ろしくノッポな男だった。手足の長さが常軌を逸している。感情の一切見えない目とも相まって、蜘蛛を彷彿とさせた。


 護手の男は大きく腕を広げると、唐突に詠唱とも金切り声ともつかない奇声を発した。

 俺は喉の奥から舌へぐんと這い上ってくる、ひんやりとした粘っこい魔力に眉を顰めた。味のしない水飴じみた、無機質な力だ。


 彼が叫ぶや、ナタリーが弾かれたように飛び出す。

 彼女は真っ向から男に拳をぶつけにいった。

 だが男の身体はナタリーの拳を食らったかと思った途端、ぐにゃりと――――それこそ、本当に水飴で出来ているかのように、奇妙にねじ曲がって衝撃を受け流した。


「ゲゲッ、キモ!!」


 俺が思わず引くのに被せて、男がもう一段甲高い声を上げる。

 彼は長い腕を鞭のようにしならせると、ナタリーへ向かってぐわんと打ってかかった。

 ナタリーはしなる腕の内へ果敢に飛び込んでいく。彼女は華麗に前転宙返りを決めて攻撃を掻い潜り、男の顎に強烈な蹴りを見舞った。


「――――ギィィッ!!!」


 人の声とは思えない悲鳴が男から漏れる。よろめいた彼は、今度は背中側へブリッジして何度か後転し、再びぐりんと立ち上がった。本当に、骨が通っていないではないかという柔らかさだ。

 ナタリーはすかさず彼を追いかけ、


「やぁっ!!!」


 と、威勢の良い掛け声と共に、大きく踏み込んだ。男の顔面めがけて放たれた拳は、しかし、突如男の眼前に出現した高速回転する黒い円盤に弾かれた。


ったぁっ!!!」

「ナタリー!!」


 ナタリーが血の噴き出た拳を振るって勇ましく構え直す。

 男の前に現れた黒い円盤は、ナタリーの打撃によって砕かれた破片を即座に集結させ、先よりも激しい勢いで回転し始めた。


「な、何あれ? 魔術?」

(「薄黒はっこくの盾」。護身用の魔具です)


 リーザロットから素早く念話が届く。俺は魔弾のようなものかと密かに納得した。

 ポタポタとナタリーの拳から血が滴り落ち、たちまち石畳の道路に染み込んでいく。対する男は薄黒の盾をユラユラと身体の前で揺らしながら、だらしなく腕を伸ばして立っていた。


 一瞬、翠玉色の瞳が鋭く閃く。

 ナタリーが打って出た。


「そんな盾ッ!」


 ナタリーは叫ぶなり、石畳に激しくヒビを入れて宙高く跳ね上がった。男は空中の彼女めがけて鞭状の腕を振る。ナタリーは予測していたのか、身を翻して攻撃を避け、近くの建物の壁へ飛びついた。


 間髪入れず、ナタリーが壁を蹴って男へ殴り掛かる。

 男は雑巾のように身体を捻った。

 ぶん回された長い腕が、ナタリーを打ちにいく。2本の腕が波打つ大繩のように、彼女の細い身体に襲いかかった。


「ナタリー、危ない!!」


 ナタリーはかろうじて腹部への直撃を防いだ。


「――――――――ッ!!!」


 ほとんど一直線の軌跡を描いて吹っ飛ばされるナタリーに、俺も観衆も息を飲む。俺は身を乗り出し、夢中で彼女の名を呼んだ。


「ナタリー!! 大丈夫か!?」


 ナタリーは真向いの建物に激しく叩き付けられ、呻いていた。

 バラバラと落ちる瓦礫と、しな垂れた女の子の身体が砂煙の内に見える。機を逃さず、男が脱兎の如く駆け出した。


 男が薄黒の盾を直上へ大きく振り被る。鉛直に傾けられた盾はまるで電動ノコギリのように無慈悲にナタリーの脳天へ迫っていった。

 俺は堪らず、飛び出した。


(ダメだ、間に合わない――――…………!)


 俺が絶望に蒼ざめた刹那、突如見開かれたナタリーの翠玉色がギラリと冴え渡った。

 彼女は降りかかる盾を、紙一重で頭を傾けて躱すと、目にも留まらぬ機敏さで男の懐へ入り込んだ。その拳はすでに、目一杯深く引かれている。

 虚を突かれた男の顔が引き攣る。

 ナタリーの拳が無防備な男のみぞおちへ、重く、完璧に叩き込まれた。


 盛大に打ち飛ばされた男が無様に道路を転がっていく。観衆はどよめきながら、さらに輪を広げた。

 俺はナタリーに駆け寄ろうとして、足を止めた。

 ナタリーの瞳は未だ燦然と輝いている。

 彼女はシャランと凛々しくアクセサリーを鳴らし、またクラウチングスタートのような姿勢を取った。


「…………次、そっち」


 彼女はすぐさま、放たれた矢の如く護手達のいる魔法陣へと向かって行った。

 陣の内で屈んでいた二人の護手が、すっくと身を起こす。

 彼らは双子のようにそっくりな、筋骨隆々とした男達だった。さっきの蜘蛛男とは対照的に、背が小さい。だが、ずんぐりとしたその手足は背丈に不釣り合いな程巨大で、岩のような強固な皮膚に覆われていた。


「…………ドワーフ?」


 俺は重量級の鉄槌を左右対称に傲然と構える彼らを見て、思いついたままを呟いた。一面髭に覆われた顔と厳めしい目つきは、ファンタジー映画で見たそれとそっくりだ。


 裸足のドワーフ達はズン、と重たい一歩を踏み出すと、重機のように道路を踏み砕きながら、ナタリーへ突進していった。


「オオォ――――――――ッ!!!」


 ドワーフ達の雄叫びはまさに、岩の吠え声であった。

 己の背丈程もある鉄槌を悠々と振り回し、彼らは縦横無尽に暴れ回る。ほとんど岩石の化物そのものと言っても差し支えない。


 ドワーフの一人がナタリーを狙って、鉄槌をフルスイングする。ナタリーは後方へ躱したが、もう一人が避けた彼女へ向かって跳躍、鉄槌を振り下ろしにかかった。

 ナタリーはさらに下がって飛び鉄槌を躱し、近所の店の壁へと跳ねた。

 勢い余ったドワーフの鉄槌が店の立て看板と商品を粉々に破壊する。

 俺の背後から悲痛な叫び声が響いた。


「ああ――――ッ!!! ウチの店がぁぁぁ――――!!!」


 ご愁傷様です。

 ナタリーはグッと足に力を込めると、壁に強烈なヒビを入れ、ドワーフ達の頭上を軽々と飛び越えて向かいの壁へと着地した。

 彼女はさらに二度、三度と壁を蹴って相手の視線を泳がせる。やがてドワーフ達の背後に着地するなり、すぐさま攻撃へ移った。


「やぁっ!!!」


 ドワーフの頭へナタリーの長い足が伸びる。ドワーフは半歩引いたが、及ばず鼻を打たれた。

 飛び散った鼻血が石畳に赤い斑点を付ける。よろめいたドワーフと立ち代わりに、もう一人が鉄槌を槍のように構えて突撃してきた。


「オオォ――――――――ッ!!!」


 ナタリーが木の葉のように身を翻す。そこへ髭を鼻血まみれしたもう一人のドワーフが鉄槌を突きつけるも、ナタリーはさらに滑らかに後方宙返りして退避、再度構えた。ドワーフ達のせいで最早道路は瓦礫だらけだったが、彼女は苦にもしない。


 ドワーフ達が聞き慣れぬ言語で何か怒鳴る。ナタリーは取り合わず、ダッシュで彼らとの距離を詰めた。乱れた髪の隙間から覗くアクセサリーが、陽光を眩く反射する。


 鼻血のドワーフが眉間一杯に皺をよせ、鉄槌をフルスイングすべく構えた。もう一人もまたその後ろで腕を掲げ、次こそは少女の頭を打ち砕かんと渾身の気合を込める。このまま突っ込んでは、彼女に逃げ場は無い。


 ドワーフ達が吠える。

 と、急に彼らの眼前からナタリーの姿が消えた。


「――――!?」


 スイングされた鉄槌が虚しく宙を舞う。誰しもが我が目を疑った。

 直後、後方にいたドワーフが野太い打撃音と共に大きく後ろへのけぞった。顎から鮮やかに血が迸っている。

 唐突に昏倒した相方を、もう一人が目を剥いて振り返った。刹那、そいつの横っ面に下方から凄まじい回し蹴りが入った。


「――――――――ウグゥッ!」


 不意打ちを喰らったドワーフが景気良く吹っ飛っばされる。観衆は大慌てで逃げ惑い、ドワーフは凄まじい音を立てて誰かの店先に突っ込んでいった。


「ウチの店が――――ッ!!!」


 通りに悲鳴が響き渡る。俺は目にも留まらぬ一連の出来事に、ただただ呆然とするばかりだった。

 何が起こったんだ?


 ドワーフが飛ばされてきた方向を見ると、そこには片足を真っ赤に染めたナタリーが立っていた。血濡れながらも綺麗に伸びたその足には、擦り傷と汚れがこびりついている。どうやら、豪胆にも彼女は鉄槌の一撃をスライディングしてくぐり抜け、起き上がり様に二人を倒してしまったようだった。


 ナタリーは一息ついて服の埃を払うと、こともなげに顔にかかった髪を掻き上げて言った。


「さぁ、あとはアナタだけ」


 彼女は魔法陣の中に一人胡坐をかく、ふてぶてしい男を指差して啖呵を切った。


「出てきなさい!

 …………「無色の魂カラーレス」の色、教えてあげる」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る