(初めての邂逅)
その日の放課後、ぼくはさっそく最初の委員集会に向かった。
図書委員が集まるのは、もちろん図書室である。ぼくは下校する生徒たちの間を通りぬけて、四階にある図書室にたどりつく。扉を開けると、中にはちらほらと生徒たちの姿があった。
室内を見渡して、窓際のところに空いた席を見つける。長机には女子生徒一人の姿しかなくて、その前に座った。
さっきも言ったようにぼくは一年の時も図書委員で、上級生の顔は大体覚えている。その女子生徒に見覚えはなくて、だから去年の図書委員にはいないはずだった。
ぼくに分かったのは、制服のスカーフから見て彼女が上級生だということだけ。うつむき加減に本に目を落としていて、まるでまわりのことになんて何の興味もない、という感じだった。長い黒髪が印象的だった。
「――よろしくお願いします」
と、ぼくはその人に声をかけてみた。何となく、ではあったけれど。
彼女は読んでいた本から目をあげようともせず、
「……よろしく」
と、ぼそぼそ答えただけだった。
そしてそのことに、何のおかさしも感じていないらしい。
ぼくはだからといって、特に何かを思うわけでもなかった。心の中で、(何なんだ、この人?)くらいに毒づいてもよかった気がするのだけれど、特に何も。まあこういう人なんだろうな、と思っただけだ。
どういうわけか、ぼくは彼女に対してそういうところがあった。怒るとか、不思議に思うとかいう前に、納得してしまうのだ。ああ、この人はこういう人なんだな、と。
それがどうしてなのかは、今でも分からないのだけれど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます