地図に載らない街

エピローグ

　あれから、１か月が経った。変わったことといえば、篦懸町が地図に載った事と、自由に町を出られるようになったという事。交通の便があまり良くないから、外に出る人はあんまりいない。

　あたし達は、来年から高校１年生として入学することが出来るらしい。高校に行けると思っていなかったから、まともに勉強していない！ と弥恵ちゃん達は、必死に勉強中だ。

　働く事も可能となって、町の外に出て、就職する人もいれば、農業を営み始めた人もいる。夏衣さんは金融関係の仕事に、明美さんは旅行会社に就職が決まったらしい。

　１週間前、おじさんが篦懸町に来た。あの時の騒動の発端はおじさんだったらしい。警察に捕まったとも言っていた。罪に問われるものではなかったから、話を聞いて終わりだったらしいけど、お父さんは少し怒っていた。ちなみに、あたしがおじさんに送ったカセットテープの中身は、バースデーソングだった。それを使ったんだ、っておじさんは言っていたけど、どう使ったんだろう？ 聞いたけど、教えてはくれなかった。

　優花は、何が必要なのかを町の人に聞くために、よくこの町に来る。１か月前、町の人の殆どが優花に腹を立てていたけど、町のために必死になって行動しているのが伝わったのか、今は優花をとても信頼している。

　——地図に載っていなかったこの町は、今、地図に載っているごく普通の町に変わった。——