第15話

「じゃあ、始めようか。」

 光流くんは、一旦家に帰ってパソコンを持って俺の家に来た。

「よっしーが言ったみたいに、成人前の人の注目を集めるなら、やっぱりネットだろうね。オレの経験上、メディアにバレたら、もみ消されるよ。」

 彼は、今から俺がやるような事を7年前に行い、逮捕されかけた事がある。まだ未成年だった事もあり、事情を聞かれて帰されただけだったらしいが。

「バレたら、俺、捕まるかな?」

「即死刑、だったりして。」

「縁起でもない……。」

 そんな話をしている間、光流くんはキーボードを叩いている。機械に疎い俺は、それを見ても全くわからない。彼は、そういうプログラム系の資格を持っているらしい。キーボードの音が止んだ。

「……これは?」

「サイト。広告はお金がかかるし見つかりやすいから、ここのURLを付けて、チェーンメールとして中高生に送る。これならすぐにはバレない。あとは期限を設けて、それに合わせてよっしーがやりたい事をこのサイトで行う。」

「……それだけ?」

 光流くんは頷いた。

「でも、成功率は高くないよ。よっしーが注目を集めてやりたい事がどれだけ中高生に響くかが重要。」

 俺は、ゆっくりと頷いた。ここまでやってもらったんだ、もう腹を括るしかない。

「よし、じゃあ期限を設けよう。いつがいい?」

「まかせる。」

 少しは考えてよ、と少し笑いながら言われた。

「うーん、1週間は長いよな。——……じゃあ、水曜日にメールを流して、3日後の土曜日の正午に決行にしよう。」

 わかった、と俺は言い、光流くんに頭を下げた。


 水曜日、俺は有給を取り、家で光流くんと土曜日に向けて作業をしていた。

「よっしー! しっかりしてよ! 当日、オレいないんだよ!」

「わ、わかってるよ。」

 サイトの動かし方を教えてもらっているが、これがまた、なかなか覚えられない。かれこれ3時間ほどパソコンとにらめっこだ。そういえば、沙月に、パソコンに向かっている時のおじさんの顔はお父さんによく似ていると言われたな。思い出し笑いをしていると、光流くんに睨まれた。


「——……まあ、これだけできれば大丈夫でしょ。よっしー、頑張ってよ〜。」

「う、うん……。ありがとう。」

 一日中座っていただけなのに、激しい運動をしたみたいに疲れた。

 光流くんを見送り、俺は、メールの送信ボタンを押した。

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