第12話

「え? こっちから連絡を取る方法?」

 次の日、あたしは秀くんの家に来ていた。朝9時に家を出て、道行く人に場所を聞きながら3時間かけて来た。秀くんに用事があったわけじゃない。夏衣さんに聞きたい事があって来たのだ。

「前も言ったけど、方法は手紙しかないかな。中身はチェックされて、破棄されてしまうものもあるけど。」

「どうして、破棄されたってわかるんですか?」

「破棄しましたって通知が届くからね。ちょっと待ってね、確か持っていたはず……。」

 夏衣さんは机の引き出しを開けて、封筒を出し、それをあたしに渡した。開けてごらん、と言われたので、封筒を開け、中身を取り出す。

『宮内 夏衣様

 先日出されました手紙は、内容が適切ではない為、こちらで破棄致しました。』

 とだけ、書かれていた。

「内容が適切ではないってどういう事ですか?」

「この時は確か、町での生活について触れたんだよね。成人式で大体の事は教えられるんだけど、実際の生活ってここにいないと分かんないじゃない? そういうのを書いて送ろうとしたらダメだったんだよね。」

 年賀状は送れたよ、と夏衣さんは言った。

「例えば、あたしが芸能事務所にデモテープを送ったら、届きますか?」

「どうかな? 届かないかもしれないし、仮に届いたとしても社会から消された人達の町からだからな……、どんなにいい曲でも、世間に出る事はないだろうね。」

「そうですか……、ありがとうございました。」

 あたしは立ち上がった。家まで送るよ、と言う夏衣さんの申し出を断り、あたしは、30分かけて家に帰った。


「——……なあ兄貴、あいつ、何を聞きに来たんだ?」

「んー? 外と連絡を取る方法を聞きに来たみたいだよ。」

「その割には、随分深刻そうな顔してたけど。」

「そうだね。……秀、もしかしたらあの子は、この仕組みを終わらせる救世主かもね。」

「……はあ?」

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