第3話

0時、寝ようと思ってベッドに入ってから引っ越すことを友達に言っていないことに気づき、再び起き上がり、部屋の電気を付け、スマホを手にとった。隣から両親の声が聞こえた。言い争いをしているように聞こえて、部屋を出た。両親の部屋の扉を少し開け、耳をすました。

「どうして、私たちが篦懸町のけまちに行かなきゃいけないの…。」

「仕方がないだろう。国が決めたことなんだから。」

お母さんが泣いていた。今日1日そんな素振り、見せなかったのに。

あたしは、静かに扉を閉め、自分の部屋に戻った。

なんとなくだけど、今日1日、引っ越しについて聞いて欲しくない空気があったのには気づいていた。きっと、望んでいない引っ越しなんだろう。友達にも言ってはいけない気がして、机にスマホを置き、電気を消してベッドに入った。

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