第2話
「終わった…。」
1日かかった。部屋がダンボールだらけ。あたしってこんなに物持ってたんだ。友達が部屋に来ると決まって、物無さすぎって言うけど、みんなどんだけ持ってるんだろう…?確かに友達ん家行ったとき部屋に沢山物があったけどさ。
「あ〜、疲れた。今、5時半でしょ〜……。」
よし、寝よう。
早速ベッドに入り、目を瞑った。
部屋の扉を叩く音がして目が覚めた。デジタル時計は19時を表示していた。返事をすると夕飯ができたからお父さんを呼んできてと言われた。
ベッドから降りて、階段を降りる。玄関を出て左へ、2つ目の角を右へ行けば家から歩いて5分もしないで、工場に着く。
お父さんの工場は、自動車部品の製造をやっている。おじいちゃんの代からやっていて、そのせいか、工場はかなり古く、3年前に耐震工事を行なった。塗装の匂いや溶接作業時の音がする、この工場の周りは住宅地で、昼間、家にいる人も多い。住宅地になったのはあたしが小さい頃で、その頃は工場を別の場所に移すとか移さないとか結構揉めたらしい。
今日は土曜日で、工場はお休み。作業の音がしないここはまるで廃工場のようだ。あたしは工場の裏にまわり、事務室の窓を覗いた。お父さんがパソコンとにらめっこしている。パソコンが不得意というわけではないんだけど、使うときは必ずしかめっ面。眉間にシワができるからやめた方がいいって言ってるのに。
窓を叩くと、お父さんが顔をあげた。ゆっくり席を立ち、こちらに近づく。そして、窓が開いた。
「夕飯ができたから、帰ってきてってお母さんが。」
「すぐに片付けるよ。」
お父さんは席に戻り、パソコンの電源を落とした。ファイルを棚にしまい、鍵をかけ、電気を消して、裏口を出た。
「よし、帰ろう。」
鍵をかけながらお父さんが言った。
前を歩くお父さんは、とても歩きづらそう。工場の裏口に行く道は身体を少し曲げないと通れないくらい狭い。人の1.5倍くらいの幅のあるお父さんは、カニ歩きしてもお腹が壁に触れる。裏口に行けなくなったら、ダイエットしないとな、って言ってたけど、あたしはこの場合でもダイエットしないといけないと思う。言ってもムダなの知ってるけど。
家に帰るまで、あたし達は一言も喋らなかった。
家に着き、玄関を開けると、リビングからおかえり、と声が聞こえた。ただいま、といい、リビングの扉の前を通り、奥の洗面台に向かった。手洗いを済まし、リビングへ。扉を開けると、カレーの匂いがした。お父さんは席につき、あたしはカレーを運ぶ。お母さんはお父さんにお酒を出し、席についた。いただきます、と全員が言い、一言も喋らず、黙々と食べた。こんな静かな夕食になったのは、両親が大喧嘩したとき以来だった。テレビだけが賑やかに騒いでいた。
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