第2話 承
「落ち着きました・・・?」
女性は終始僕の背中をさすってくれていた。時間にして五分近く泣いていたように思う。泣いて少しだけすっきりした。
「すいません。みっともない姿を見せてしまって」
「男の方がこんなに泣いているの始めてみました。辛かったんですね」
「そうですかね・・・」
僕は誤魔化すようにそう言った。
「よかったら、話きかせてもらえませんか」
女性の突然の申し出に僕は目を丸くした。でも、ここまでやって貰って何もありませんというのも不自然な話だと思い、僕は女性に彼女のことや女性が死んだ彼女に似ていることなどを話した。
「そうだったんですね」
女性は一通り聞き終えると納得したのかそう言った。
僕は一つだけ女性に対して言わなかったことがある。それは未だに彼女の死を正面から受け止めきれず、後悔していることだった。
女性はもしかしたら僕の振る舞いや言動からそれを察しているかもしれなかったが、口に出してしまうのが恐かった。
「何だか私のせいですよね・・・すいません」
「謝らないで下さい。僕の勝手な勘違いで・・・」
「こんなことってあるもんなんですね」
「そうですね。不思議ですね」
それ以上会話は弾まず、二人の間に沈黙が訪れる。僕はどうにもその空気に居心地の悪さを感じ、無意味に空を見上げてみる。
「いい天気ですよね」
不意打ちだった。
「そうですね」
僕は面食らってしまいつまらない返事をしてしまう。
「私、この季節好きなんですよ。日差しが気持ちよくて」
暦の上では七月中旬。太陽が沈みかけているにも関わらず、うだるような暑さである。
「そうなんですか。僕は暑いの得意じゃなくて」
「そうですよね。さっきから凄い汗かいてますよね」
女性の言うとおり僕の額からは玉のような汗が出続けている。ハンカチでは拭い取れないくらいだ。
「そうだ、そこの喫茶店にでも入りますか?」
女性は僕のことを気遣い、数10メートル先にある喫茶店を指差す。僕が仕事終わりにたまによる店だ。確かにあそこの喫茶店は居心地がいい。
「お時間大丈夫なんですか?僕は全然大丈夫ですけど・・・」
女性はニコッと笑顔を返した。僕はそれをOKのサインと受け取り、喫茶店へと向かった。
女性と僕は横並びに、まるで恋人同士であるかのように並んで歩いた。横顔まで死んだ彼女にそっくりで僕はいつまでも見ていたい気持ちになった。
向日葵を君に捧げる 神父SON @emina12
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