第3話
生あるものは皆同じ。
追い込まれ危機にさらされると、生あるものが考えることは一つだけ。
自らのサバイバル。
―――――
二人で話しては落ちこむ。でも、ここからは逃げられない。そして、私もそれを武器として生きていく覚悟だ。
ドメスティックな暴力が見逃されてしまう原因はこれだろう。暴力を振るう者にとって、その事態を発見されることは、即ち『死』なのだ。この点は飛躍が激しいものの、一部は真実と化している。
時々『こども110番の家』というものも見かけるが、ここに駆け込める子供は稀ではないかと思ってしまう。発覚しづらい原因の一つは、暴力を振るう者達がそれを『教育』として子供に教え込んでいるからだ。子供達にとってはそれが『いい事』となってしまっている。
仮に辛さのあまり駆け込むことが出来たとしても、親は『そんなことは無い』と訴える。何故かこの時ばかりは殆ど観たこともないほどに真剣になり、感情豊かに語り、時には涙を滲ませることもある。そして、家に帰ると、何処かへ訴えたことを理由に暴力暴言の嵐となる。『恥をさらした』などと言う無茶苦茶なことを口にしながら繰り返す。そして、徐々に子供が何処かへ訴えないように日常生活に脅迫的な仕込みを増やす。
何らかの力を持つ者達が自宅の戸を叩いても、決して家には入れない。それこそが命綱だからだ。
そして、私は生命の危機を乗り越えた。彼と同じような『力』を得た。力に向かう可能性。世界を知るための観察眼を。
子供達が『死』に関する言葉を連発することもある。(※そういう私もまだ『子供』だが)私に向かって放つこともある。それでも、自分の生を肯定し続ける。それだけでよかった。
つまり、私が見るところのある時点での世界の全ては、
言われた通りにやらないと、ガミガミ
言われた通りにやっても、ガミガミ
何もしなくても、ガミガミ
遠くにいっても、ガミガミ
であった。
二人で抱き合って泣いたこともあった。あんなシーンもさ……
―――
どうして殴るんですか? だって?
それは、『どうして殴るんですか?』と聞くからだ。
―――
そして私は、知った。
むやみやたらと暴力を振りかざす者達は、暴力を振るわれることを恐れている。
体力も腕力も鍛えることが出来る。
持久戦になれば、こっちが有利だ。
命を粗末に扱われた者が、相手を巻き込んでの自爆をためらうと思うだろうか?
憎悪しか抱かない相手の言葉を、聞くと思うだろうか?
―――――
己はあたかも蔦の如く、この私という大木の幹を覆い隠し、その樹液を吸って生い茂る有様、聴いておらぬな!
聴いております。ええ、一生懸命!
―――――
文字というのは面白い。古代エジプトの文字は絵のようだ。漢字も絵から変化していったようだ。
アルファベット、というのは何らかの意味のある記号ということのようだ。ギリシャ文字の最初の二つ、アルファとベータを合わせたものが語源であるとも聞く。私は若干英語に馴染みがあるので、英語の文字のことだけをさすと思っていた。ギリシャ文字やキリル文字はアルファベットとして受け入れるのに時間がかかったものだ。
北欧神話の中で使われる『ルーン文字』というものもその流れの何処かにあったのだろう。やはり文字が力を持っているようだ。
そこで、一つの恐れの象徴として描かれるのが、それを間違った形で使った際の事。そして、それを悪用した際の事。もっとも、これはどんな物語にもみられることだが。
高度な魔術によるものは、高度な魔術を扱えるものでないと解呪出来ないとも聞く。そらをよく知り、よく学び、何かに活かしていけば、また新たなものも見えるかもしれない。
というわけで、彼の力も借りながら、有名な詩の一部を自分流に置き換えてみた。一節によるとノストラダムスも魔術師だったらしい。
世界の終りまで追いつめられたギリギリの時
さらなる恐怖により命が脅かされた
そして目覚める、アンガー・モア(もっと怒りを)
それに支配された闘争の日々は、敵の排除に向けて自らへの攻撃は止むだろう
これを膨らませるのもいいかもしれない。
これに類するものを見るのはホラー映画に多いように思う。
私達がホラー系が苦手なのは、モンスターのおどろおどろしさよりも、それに脅かされる人々の振る舞いが恐怖を掻き立てるからだろう。私達がいずれ向かう姿かもしれない。
それほどの恐怖に曝されなければ、私の本能は目覚めなかったというわけだ。奴らはそれも知っていた。私を殺さずにいたぶる方法を。
―――――
ああ、不甲斐ない。その時どれほど泣いたか憶えていない、せめてここでもう一度泣かせてい貰いましょう。お話を伺っただけで思わず涙を誘われます。
―――――
例え使命を全うしても、私達は元には戻れない。でも、元ってなんだろう? 私達はどんな風だったんだろう?
(続くかも)
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