第36話

 二限目前の休み時間に同様に屋上に女子学生をおびき出した。インターフィア自体は簡単に済んだものの、相手を戻らせないために和馬には直接対面してもらっていた。

 和馬はその見た目とは裏腹に存外女性の扱いには長けていないようで。穏便に相手の誘惑を受け流したころには既に二限目が始まっていた。

 それから一度ずつ凛音と和馬に囮役をしてもらった。


「はぁ、散々だったぜ……」

「あの学生も白だったわ。あと怪しい学生の数は50人ほど。他ゼミに潜伏していないことを祈るしかないわね」

「昼間は使えないことを考慮すると一日12人、単純計算して4日ってところね」

「いつアイドレーターが動き出すかもわからないし、そんなに時間はかけられないわ……放課後も、作戦を継続して行った方がいいかもしれないわね」

「思ったんだが、シエナが学生を構内アナウンスで呼び出すのはダメなのか? こんな大所帯なことしなくても、穏便に進められる気がするんだが」

「毎時毎時、アナウンスで呼び出してたらそれこそ怪しいでしょ」


 こんなこといつまで滞りなく続けられるか心配になってくる。

 昼休憩と言うことで学生たちは固まって会話をしている。この状況では当然インターフィアはできない。作戦の本場にいながらもなかなか身動きが出来ない現状。ジレンマばかりが胸をついていた。

 

「あの、烏川さんでしたよね」

「アンタは……風間だったか」

 

 時雨達の会話が終わるのを見計らっていたように少女が話しかけてくる。最近見た顔だ。確か風間泉澄かざまいずみといったか。

 端正な顔立ちは毛先の整えられたショートヘアにより真面目さを醸している。特徴的なスラックス姿はすでに違和感を感じえないほどにまで日常に浸透していた。


「はい、少々お伺いしたいことがあるのですが……」

「どうした?」

「烏川さんや聖さん方は、スファナルージュ理事のつてで編入したと聞いたのですが」


 ああその話かと真那が時雨と目配せをする。これまでも何度か同じようなことを聞かれた。まあ色々と曰く付きな時雨たちであるわけで、学生たちの興味の的になるのは致し方ない。

 それについては昨晩のうちにシエナとつじつま合わせをしていた。


「個人的な知り合いなんだ。いわゆる裏口入学っていうやつだ」


 隠し通すのも無理があると判断してそう教えることにしていた。


「理事とお知り合いなんですか、羨ましいです」

「羨ましい?」

「はい、僕はちょっとした理事のファンなんです。理事が今のリミテッドを支えていると言っても過言ではないですから。尊敬しています」

「はぁ」

「突然変なことをきいて申し訳ありません。では僕は失礼しますね」


 彼女は朗らかな笑みを携えて小さく頭をさげた。他の学生たちとはだいぶ違った反応だった。皆時雨たちのことを不審そうに見たりするのだが。


「烏川くん、その、ごめんね」


 泉澄に入れ替わるように紲が声をかけてくる。シエナが取り計らったのか時雨と紲はすべての講義が同じだった。そういうこともあって彼女は比較的親近的に時雨に接してくる。


「何故謝る」

「その、実は烏川くんたちがシエナ理事の知り合いだって言うことなんだけど。皆に広まっちゃったのは、多分私のせいなんだよ。初めて会った時、おとといの夜中だね。その、皆がシエナ理事と一緒にいるのを見たでしょ? 私。あの後、シエナ理事に送ってもらったんだけど、家に帰る間にゼミの子に出くわしちゃって……見たことを教えちゃったの」

「そういうことなら仕方ないだろ。織寧が悪いわけじゃない」

「でも……」

「気にするな」


 どうせ近いうちにばれることである。問題なのは時雨たちがこの学園でしていることが漏れることだ。そうならない限りはことは重大にはなりえない。なんといってもこの学園にいるのはただの民間人たちなのだから。


「それよりアンタ、織寧紲との関係はどうなのよ」


 そんな時雨の会話を聞いていたのか唯奈が耳打ちしてくる。

 

「関係? なんのことだ」

「もしかして忘れてるんじゃないわよね。皇棗に指示されてたでしょ。織寧紲に個人的に接触し交友関係を築けって」

「忘れてるわけじゃないんだが、簡単にはいかないだろ、そういうのって」

「別に心からの親友になれって言ってんじゃないの。表向きだけでもいい。アンタが織寧紲に信頼されればいいだけでしょ」

「だから簡単に言うな。こちとら積極的に関わろうとはしてる。ただ……」

「芳しくないのは見てれば分かる。でもアンタが動かないとそっちに関しては、何も進まないのも事実なんだから、しっかりしてよね」


 唯奈が厳しくそういうのは解る。棗曰く紲とあと半月で仲良くならねばならないのだ。閉鎖空間で生きてきた時雨には苦行すぎる。

 そもそも何故よりにもよって自分なのか。真那は時雨以上にそういうのは不向きな気がする。和馬に関しては紲の方が恋愛に発展しかねないし唯奈は考えるまでもない。

 凛音は一番仲良くなれそうではあるが、問題なのは性格上任務を忘れてしまいかねないことだ。その任務の要となる役目を一任するのは確かに危険だ。


「なんだろうな、この完成されたようで実はダメな奴を寄せ集めた組織」

「どういう意味よ」


 むっとしたように睨んでくる。だがしばしして諦めたようにため息をついた。

 

「はぁ……まあ今回の潜入任務では、アンタの負担が明らかに多すぎるのは確かね。アナライザーを使っての作戦を考案したのは私。その責任はあるわね」

「そういうつもりで言ったわけじゃない」

「頭ではそう思ってなくても、アンタの身体が疲労蓄積してるのは一目瞭然だし……仕方ないから最大限私もサポートしたげる」

「なら、織寧の攻略は柊がしてくれ」

「ふざけてんの? 私がライフル以外手懐けられると思ってるの?」

「もっともらしく言うなよ」


 実際唯奈は交友関係を築いているよりも、スナイパーライフルを整備している姿の方が似合う。


「サポートって言ったでしょ。あくまでも私はアンタの手助けをするだけよ」

「ならどうやったら織寧と仲良くなれるか教えてくれ」

「そんなもん分かってたら苦労しないわよ。てか私の話聞いてた?」


 ごもっともだが、このサポートあまり役に立たなそうだ。


「作戦について談義しているのはいいけど、そろそろ昼休憩が終わるわ」

「ああ、もうこんな時間か」


 真那の指摘で時刻確認をした。退屈な授業には参加しないため校舎内の見回りを任されているのだ。席から立ち上がる。


「それよりも時雨様。何かをお忘れではないですか?」

「何の話だ」

「はぁ、やっぱり忘れていましたか……さすがニワトリ頭のど忘れ時雨様です」

「いやだから何言ってる」

「その答えは、時雨様の左こめかみが教えてくださいますよ」

「は? なん――――ッ!?」


 その言葉の真意を探ろうとこめかみに触れようとした時。飛来してきた何かが手の甲に着弾した。

 途端に白い大量の粒が撒き散らされ視界が真っ白く染まる。米粒だった。


「な、なんだ? どこから飛んできたんだこれ」

「ジャパニーズNIGIRIは、本当につぶせば手裏剣になるのですね」

「NIGIRI……あ」


 はっとして窓を見やる。開け放たれたそのはるか先。ここからだと丁度直線上に位置する屋上の給水塔。

 そこにマフラーが翻るのが見えた気がした。


「女性の御弁当のお誘いを断るだなんて、とんだ思い上がり野郎ですね、時雨様は」


 べたんと、たくあんが床に叩きつけられた。



 ◇



「おかえりなさい、です」


 寮の扉を開けると同時、ガスマスクを抱えていないクレアが時雨を出迎える。誰かに出迎えられるというのは妙に新鮮だ。

 クレアと凛音は正式に女子寮に移動する運びとなったが、寮の空室の警備状況を万全に保つべく数日時間を要するということだった。そのため数日は時雨の部屋に駐留せよとのこと。


「ニヤニヤしやがらないでください。しキぐモれ様」

「そういう文字に起こさないと判らないような罵倒はやめろ」

「どうでしたか? 任務の方は」

「成果なしだ。さっぱり進展していない」


 放課後、校内に残っていた数名の学生を呼び出した。いずれもはずれだったが。そう簡単にアイドレーター局員が見つかると思ってはいない。


「クレア、おぬし、こんな部屋に閉じこもって退屈ではないのか?」

「退屈でないと言えば嘘になりますけど。でもその、皆さんが頑張られている中なのです。私はそんなわがままを言っていられないので」


 凛音の鞄を受け取りながらクレアはそう述べた。13歳だというのによくできた子だ。普通ならば育ち盛り遊び盛り衝動盛りだろうに。姉の方は一切の我慢などしていないようだが。


「つまり我慢してるのではないか。我慢はよくないのだ。とーさまが言っていたのだ。我慢やストレスは、ガロウファミリーの落とし穴なのだと」


 なるほど意味が解らない。


「落とし穴、ですか?」

「我慢やストレスで、とーさまみたいになっちゃうらしいのだ」


 そういうことか。ご愁傷様としか言えない植毛必須地帯。

 

「凛音様の父親ですし、C.C.Rionを頭からかければ生えてくるかもしれませんね。実行したら殺されるでしょうが」

「シグレ、どうしてクレアはここから出てはならぬのだ?」

「学生じゃないからだ。これ以上目立つ行動は避けた方がいい」

「むぅ、とーさまはショードーにしたがえと言っていたではないか。なぁなぁシグレ、よいだろ? クレアも外出したいに決まっておるのだ」

「凛音さん、その、私は構わない、ので……」

「クレア、おねーちゃんに任せるのだ。リオンはおねーちゃんとして、クレアのためにならねばならないのだぞ。おねーちゃんとしてなのだっ」

「2回言ったところから鑑みても」

「なるほど、お姉さんぶりたいわけですね。月瑠様にセンパイと呼ばれたことがうれしかったのでしょうか」


 とはいえ凛音の言うことにも一理ある。シエナたちとの決定でクレアの外出は原則なしとなった。だがそれはあくまでも校内で彼女の存在が問題になることを避けたかったが故だ。校内に連れ込まず人知れず寮から連れ出せば問題ないかもしれない。


「今度な」

「リオンは今夜どこかに遊びに行きたい気分なのだーっ」

「お前自身が遊びたいだけじゃないか」

「その、ありがとうございます、時雨さん。外に出れる時を、楽しみにしておきますね」

「ぬぅ、クレアがいいならそれでいいのだ……むにゃー!」


 あくまでも姉の顔をしたかったのだろう。だが数秒も持たずに凛音はベッドの上で暴れ始めた。


「まるで、散歩に連れて行けと駄々をこねる飼い犬のようですね」

「り、凛音さん……っ、お願いですからやめてくださぃ」


 姉の醜態が現在進行形でさらされているのを見ていられなくなったのか。クレアはガスマスクを抱えて申し訳なさそうに謝ってきた。


「来たけど」


 いつの間にか部屋の扉を開けていたのか。制服姿からノーマル衣装に着替えた唯奈がいた。彼女は腕を組んだままベッドに腰かける。


「わざわざ来てもらって悪いな」

「まあ、言い出しっぺだし構わないわ。それでどうするの?」

「どうすればいい?」

「最初から他力本願上等なんてやめてよ」

「時雨様はドMですので、何を要求されても拒んだりはしません。唯奈様の意見や要望に、きっとなんでも応えてくれます。そういう下世話な合図なんですよ、この返答は」

「そうなの? それならちょうどいいわ。アンタこの部屋から出て行ってくれる?」

「何故に」

「邪魔だからに決まってんでしょ。こんな天国……じゃなくて幼い少女二人の空間にアンタがいるのは不健全って言ってんの」

「その言葉に合間から垣間見える柊の本音も……大概、不健全な気がするんだが」

「……まぁそれで、端的に用件を済ませたいから、さっさと決めるわよ」


 気まずくなったようにわざとらしく柏手を打って話題の転換を試みた。わざわざ地雷を踏む必要もないためにあえて追求は避ける。


「まず今回決めることですが。この潜入作戦における本作戦、つまりアイドレーター局員の特定ではありません。時雨様に個人的に充てられた任務、すなわち、一学生に接触することですね。ターゲットは、織寧重工グループ令嬢・織寧紲」

「そうだな……」

「身長160センチ、体重47キロ。スリーサイズは上から、85,56、84」


 そんな情報はいらん。


「ちなみのそのスリーサイズですが、レジスタンス学生陣最高のわがままボディな唯奈様と比較させていただきますと、」

「ちょっ、」

「上から順に、マイナス1、マイナス1、マイナス2。となります。さすがの紲様でも、唯奈様の色気にはおよば――」

「黙れっていってんでしょ!」


 地面に浮遊していたビジュアライザーの円盤型投影機。唯奈がそれを力任せに蹴り飛ばすとネイのホログラムが掻き消える。だが間をあけずに、部屋の据え置き型投影機上に出現した。


「失礼いたしました。ですが時雨様の視線が唯奈様の胸部に思わず釘つけになっている瞬間をシャッターに収めました。悔いはありません」

「なってねえ」

「とにかく! 学校で話した通りよ。私は烏川時雨、アンタが織寧紲に接触するにあたって可能な限りのサポートをする」

「助かる。だが具体的にどうしたものか」

「それを考えるために、私はここに呼ばれたんでしょ」

「あの、お話をお伺いした限り、時雨さんに充てられた任務のお話ですか?」


 一連の会話を聞いていたクレアが控えめに問うてくる。


「ああ、織寧紲、織寧重工グループの一人娘だ。生憎、俺たち皆して友達作りに疎くてな」

「私もお友達を作ったことはないので、意見という意見を出せるか解らないんですけど……お話し合いに参加してもいいですか?」

「もちろんよ。年頃の女子の意見は助かるし。少なくともそこのデリカシー皆無な木偶の棒に比べたら百人力ね」

「リオンも参加するのだ」


 いつの間にか静まっていたと思ったらどうやら凛音も聞き耳を立てていたらしい。


「意見は多いに越したことはない」

「ブレイクスニーキングというやつなのだなっ」

「破壊しながら潜入してどうすんのよ。ブレインストーミングよ」

「ではリオンから意見を出すぞ? キズナのおっぱいはユイナくらいあるから、シエナにキズパイマンを開発してもらえばいいのだ」


 早速戦力外通告を出したくなってきた。


「ちょっとなによキズパイマンって」

「それより柊、お前は何か意見はないか?」

「あからさまに話を逸らしてきたわね……まあいいわ。あるにはあるけど、これは最終手段。普通に交友関係を築くのが無理な以上、裏の手口から攻めるのが一番手っ取り早いわね」

「どういう意味だ?」

「私たちの立場を利用するのよ。あえて、シエナの関係者だということをアピールする。幸い織寧紲はシエナとある程度の交友はあるみたいだし」

「その方法だと仲良くなれないんじゃないか。明らかに仕組まれた接触だ」

「最終手段だって言ったでしょ。あんまりあてにしないで」


 まあ確かに最終的にはシエナの権力を借りる手立てを考案することになるかもしれない。

 棗が規定日にどんな作戦を予定しているのかはわからないが。最悪その方法でつじつま合わせを取ることにもなりかねない。


「あの、私は小等部までしか通っていないんですが、大学部にも行事とかないのでしょうか。行事があれば、仲良くなれるんじゃないか、と」

「行事か……何かあったか」

「妙案ですね。丁度10月19日に学園祭があります」

「だがその学園祭でどうやって織寧と仲良くなるというんだ。そもそも期限は9日だぞ」

「物はやりようね。学園祭には実行委員とかあるんでしょ? それに烏川時雨と織寧紲を抜粋すればいいじゃない」

「残念ながら、実行委員はすでに決まっているようです。さすがに決定した人員を変更しては不審すぎますね」


 実行委員ではなくても他の方向から攻めていくことはできそうだ。


「気が重いな……もし織寧と仲良くなれたとして、織寧は普通に友達として接してくる。だのに俺は、任務のためにいろいろと下準備して関係の構築をするわけか」

「何既に攻略した気になってんですか、浮かれてんじゃないですよ脳内お花畑時雨野郎様」

「そもそも何かしらの形で関係を持てても、仲良くなれる保証なんてどこにもないでしょ」


 まあその通りなのだが。

 

「うまく行かない場合の作戦も講じておきたいところだけど……妥協案なんてでなそうね」

「紲様の趣味嗜好にあった接し方をするのはいかがでしょうか」

「織寧の趣味か。直接聞くわけにもいかないし。女子の意見を聞いた方がいいか。皆は何が趣味なんだ?」

 

 レジスタンスメンバーとは言っても目の前の少女たちはあくまでも未成年あるいは成人したての女子なのである。娯楽などに疎い時雨の意見よりかは参考になるだろう。


「NEXUSなのだ」

「ライフル整備ね」

「時雨様弄りという名の罵倒です」

「えっと、とんこつラーメン、なのです?」

「……お前らを女子と勘違いした俺が悪かった」

「なんか、非常に癪に障る言われようね」


 そもそも最後のは趣味ですらない。


「まあ、なるようにしかならないか……今日は助かった」

「話し合いで決められることなんてこのくらいね」


 今日はもうお開きにしようと思って立ちあがる。明日からはまた多忙の日々だ。早めに就寝した方がいいだろう。


「9時50分か……戻るのも面倒ね」

「どうした?」

「あと十分ほどここにいさせてもらうわ」

「構わないが、何故だ」

「べ、別にいいでしょ……」


 何かを言い淀んで唯奈はさりげなくベッドに座っている姉妹をチラ見する。そう言えば普段から十時になったら唯奈に半強制的に風呂に入れさせられるんだった。


「何よその目」

「いや、別に何でも……まあ、勝手にしてくれ」


 今の時点で連れて行ってもいい気はするが。まあ唯奈なりに何やら考える所があるのだろう。


「ちなみにリオンは、ユイナとお風呂に入りたいのだっ」

「わ、私も、大丈夫なのです」

「そう? ま、まあ私はアンタたちの意見なんてどうでもいいけど……まあ、アンタたちがどうしてもって言うなら仕方ないわね。犬を風呂に入れる感覚で、背中流してあげてもいいわ」


 超早口でまくしたてられても説得力はない。


「ちょっと早いけど、まあ今日は三人だしいいか。それじゃ烏川時雨、バスルーム借りるわよ」

「男子寮の風呂は狭いぞ……は? 借りる? 何を?」

「アンタ自分でいま口ずさんでたじゃない。浴室よ浴室。毎度毎度女子寮連れてくの面倒なのよ。それにあの明智とか言う変態がうろついてたら危険だし。極力そこの姉妹二人を夜道歩かせるのはよくないしね」

「キター! キタコレ! と時雨様のUMN細胞数値が、つぶさに内心での高揚を現しています。レッツ覗き見ですよおこぼれ頂戴時雨様」


 そういえば唯奈は何やら小さな袋を持ってきていた。なるほどあれはアメニティセットか。


「部屋にも備え付けのシャンプーとかはある」

「着替えに決まってんでしょ、わざわざ言わせないでよ」

「柊、湯上りは下着なしで。と言う時雨様なりのアプローチですよ」

「……烏川時雨、アンタどういう教育してたら、AIがこんな性格になんのよ」


 どうやら本当に時雨がそんなことを考えているわけではないと判ったらしい。だが何だろう違う方面から侮蔑の念を押し付けられた気がする。

 また面倒ごとに発展しかねないし今日はもう寝よう。

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