第22話
日付が更新し、療養を受けた時雨たちは本日一日の休暇を与えられた。休暇といってもその実質は、現状出来る任務がないためなのだが。
とはいえ前日の大規模な戦闘によってスタッフの疲労は極限にまで高まっていることだろう。そう考えると棗の下したこの休暇令は、あるいは必要なものだったのかもしれない。
「休暇なんて、逆に使い道に困るがな」
旧東京タワー、その大展望台にて時雨は何をするでもなくリミテッドを俯瞰する。無限に広がる発展区域には無数の高架が伸び、数千というモノレールが巡回している。
この休暇を使ってリミテッドを回るというのはどうだろうか。
「それでしたら、クレア様にお願いいたしましょう」
「何故に」
「先日、そういう話になったではないですか。今度エリア・リミテッドの案内をしてもらう、と」
した記憶はないが特別誰に案内してもらえる予定もないため、最初に名前の上がったクレアを候補に上げる。一階層下の各自部屋エリアに向けて歩を進める。
東京タワーの軸を囲うように建設された部屋は、その設計上もあって歪な形をしていた。そもそも本来エレベーターでは降りられないこの場所にどうやって空間を増設したのか。増設時にかなり目立ったのではないのだろうか。
いまだにここがレジスタンスのアジトであることを防衛省の連中に感づかれていないことに驚きである。
「……いないのかね」
クレアの部屋の前に立ちコールをかけるが返答がない。ドアの生体認証ランプを確かめると点灯しているのだが。
「どうしたのだ? シグレ」
だがすぐにドアが開いた。そこから顔をのぞかせたのはクレアではなく凛音で。そういえばこの姉妹は同じ部屋で寝泊まりしているのである。
「いや、クレアを探してるんだが」
「クレアか? クレアならとーさまとどこかに出かけたぞ」
「用事でもあったか」
「むむ……リオンにはわからぬぞ。とーさまたちはたまに二人でどこかに行っちゃうのだ」
実の娘である凛音にすら告げず、幸正はクレアをどこに連れて行ったというのか。家族事情に部外者である時雨が関与するのもよくない。
「しかしそうなると、本格的にやることがなくなったな」
「暇なのか?」
「暇といえば暇だな」
「ならシグレ、一緒に朝ごはんをどうだ?」
時刻はすでに九時を回っている。だが時雨たちは昨晩の出来事からずっと状況整理に勤しんでいたため、まだ朝食を済ませていなかった。
「構わないが、この本拠点、食堂はあるが別にレストランとか飲食店があるわけでもないよな。そもそも、俺たち以外にスタッフがこの東京タワーにいない。給仕なんているはずもないんだが」
「逆にレストランまであったら、ここが本当に東京タワーなのかと疑ってしまいますね」
「普段は、町中に出て食べるのだ」
「町中って、エリア・リミテッドにか?」
頷く凛音を見て、レジスタンスが当初想像していたよりも大分、エリア・リミテッドの一般市民エリアに溶け込んでいるのだと思った。
世間でもレジスタンスは武装した蜂起軍であると見られがちである。それ故に肩身の狭い気分で隠れながら生活していると思っていたのだが。レジスタンスのメンバーは一般市民エリアでは顔割れしていないということだろう。
いやそもそも時雨が防衛省で務めていたころも、一度としてレジスタンスメンバーの顔を見たことはなかった。防衛省も、まだ構成員リストを確立させられていないということか。
「だがあまり気分が乗らないときは、外に出ずにこの中で済ませるのだ」
「中でって……食料は?」
「タワーの地下に、いっぱい食べ物をためているのだ」
「なるほどな、食糧貯蔵庫があるわけか」
エレベーターを経由し辿り着いた一階層。さらにその下。確かにそこにはかなりの規模の貯蔵庫があった。どれだけの期間をかけて集めたのか解らないほどに大量の食材。
これだけあれば、エリア・リミテッドが食糧飢饉に陥っても数日くらいならやり過ごせそうである。と言うのは流石に誇大表現だが。
「凛音はにっくまーんなのだ~」
六つほど肉まんの包装紙を小さな腕に抱えている凛音。その小さな体にそんなに入るのかと不安になるが、だが狼じみた見た目をしているし健啖家なのだろう。なんといっても妹の方もサイクロン(意味深)なのだから。
「なんといってもこのふわふわふにふにの感触が堪らないのだ」
凛音は抱えた肉まんを棚に置くと、そのうちの二つを両手にそれぞれ掴む。そうして何やら揉みし抱くような仕草をした。
「サイズと感触が、ユイナのおっぱいにそっくりなのだ」
「ちょっ」
時雨が反応する前に後ろ側で誰かが息を詰まらせる。暗くて解らなかったがどうやら先客がいるようだ。特徴的な軍服をまとったその少女は、いくつかの商品をのせたプレートを持ち佇んでいた。
「ぅげ……」
「ちょっとうげって何ようげって」
なんと最悪なタイミングで出くわしてしまったものか。
「何でここに
思わず禁句を呟いた時雨の足が彼女のブーツによって踏みにじられた。突然走りぬけた痛みに言葉もなく固まる時雨を、ジロリと冷たい目で睨みつけてくる。
「何度言ったらわかるの? その名前で呼ばないで」
「…………」
「私は食糧を取りに来ただけよ。アンタ達もそうでしょ……というかそんなことよりアンタねぇ」
唯奈はさっきの凛音の発言をしっかりと耳にしていたのか、凛音の目の前にすたすたと歩み寄っていくとそのフードを掴む。そうして自分と同じ目線まで凛音を持ち上げた。
「なんで私の胸のサイズと感触知ってんのよ」
「前も話したではないか。清掃員の者が、リオンに聞いてくるのだと。今日のユイナの胸はどうだったかとか、匂いはどうだったかとかとな」
「その話聞かされた時から思ってたのよ。匂いはともかく、アンタ、胸のサイズどうやって測ったのよ」
「あ、それは唯奈様が自主的に揉ませていたわけではないのですか」
「ちょっとそれどういう意味?」
虫くらいなら射殺せそうな鋭い視線を向けられ思わず萎縮する。発言したのはネイなのだが。
「リオンはユイナが寝ている間に部屋に侵入して、飽きるまでモミモミしてるのだ」
「な……っ」
純真無垢な表情で爆弾発言が告げられ唯奈は硬直した。時雨も同様に固まる。
反射的に両手を顔面に翳したのは、唯奈の右ストレートが時雨の鼻っ面にぶち込まれることを見越しての物である。
だが相当のショックだったのか唯奈は激昂することを忘れて固まっていた。
「凛音様、どうして、自ら地獄への直行便に……」
「絶対に有り得ないあり得るわけない死にたいいっそのこと死んでやる……」
彼女は頭に血が上っているのか時雨たちのことなど忘れて独り言を呪詛のようにぶつぶつと呟いている。傍から見たら完全に危ない人だった。
そこで時雨は彼女が置いていたプレートに乗せてあるものを見やる。プレートにはみたらし団子や饅頭、缶のしるこに加え数々の和菓子が乗せられている。ついでに日本酒のようなものもあった。
「日中から酒かよ」
「別にいいでしょ。さっさとどっか行ってくれない?」
どこか不機嫌そうな彼女。
「いやまああれです。上層の集合待機室で食べるのでしょう?」
「それが何?」
「それでは一緒にどうでしょうか」
「嫌よなんでアンタなんかと食べなきゃなんないのよ」
威圧感満載な問いかけに思わず立ち竦む。不快そうな目で時雨をジロリと睨み、さっさとどこかに行けとでも言わんばかりな表情を浮かべていた。
「なあユイナ、そのお酒はどうするのだ? 酒盛りでもするのか?」
命知らずがいたものである。隣に無言で佇んでいた凛音が聞かずにはいられないとでも言わんばかりに食いつく。
空気を全く読んでいない発言に時雨は思わず尻目に唯奈の様子を伺った。彼女が何を不快に思っているのかは判らないが、さらに追求されては堪忍袋の緒が切れかねない。
しかし彼女の顔に憤慨はない。その瞳には凛音の無邪気な笑顔が浮かんでいる。
「何? アンタ、興味あるの?」
「大アリなのだ。ヒムロが言っていたのだ。酒は人間を変える。シラフじゃ言えないことも、酒の力を借りれば言えてしまうとな」
「アンタの行動原理、もはや他者の言葉で成り立ってんじゃないの……ま、まあそれなら仕方ないわね……教えてあげるわ」
「何だろうなこの対応の差」
先まではあからさまにも嫌悪感を丸出しにしていたというのに、どうしたことか今ではその片鱗すら覗かせていない。
大方その差異の理由は、その対象が時雨であったからというよりは、凛音であったからという物であるのだろうが。それについて指摘などすれば脳天に風穴でも開きそうなので、敢えて指摘したりはしない。
「別に知っても面白くなんかないわよ」
「まあそうかもですがね」
曖昧に返すネイを尻目に伺い彼女は小さくため息をついた。特に隠すことでもなかったのか、あるいは好奇心旺盛な凛音の瞳に耐えられなくなったのか。どちらにせよその原因は彼女の琴線に触れる物であったらしい。
「なら、ついてくれば。アンタも見る権利はあるだろうから」
「まあ暇だからな、そうさせてもらう」
「でも先に朝食を済ませるわ」
プレートに抱えていたものを持ち合わせの袋に納め、彼女は無数に積まれていた非常食――レーションをいくつか手に取る。
「どうして食料に困ってるわけでもないのに、そんな物を食うんだ」
思わず声をかける。そのレーションはノヴァが侵攻してきた年に防衛省が突如開発を始めたものである。
それは各世帯に毎月必要数配られ、東京都都市化計画に伴って職を失ったものでも食料に困り餓死するという事態は免れた。
時雨も非常食としていくつか携帯しているが、特別美味いわけでもないので率先して食べはしない。この貯蔵庫には無数に食糧があるというのに。
「別に、いいでしょ」
不快指数が我慢のリミットを外されそうになっているように唯奈は振り返ることもせずに吐き捨てた。あんまり踏み込んでくるなとでも言わんばかりの声音に一瞬たじろいだ。
「そんな物ばかり食べていたら、そのスタイルを維持できないのではないでしょうか。胸部に内包されたトリアシルグリセロールのパーセンテージは常人の数倍はあるでしょうに」
「別に私は贅沢がしたくてレジスタンスに入ってるわけじゃない。ただ防衛省の連中に一矢報いるために、革命を起こしてる。困窮した市民が少しでもいる現状、それを差し置いて裕福な生活をするつもりなんてさらさらないわ。別に、正義感を振りまくつもりも毛頭ないけど」
「贅沢するつもりがないなら、その食料品は……」
疑問に唯奈はしばらく答えなかった。横目に時雨のことを見つめ意味深な表情を浮かべる。やがて直に解るわとだけ言って背を向け貯蔵庫を後にする。
凛音の腕に積まれた肉まんの包装紙は八つに増えていた。
「ただ一つだけ教えておくと、食後向かう場所は、この施設の中」
思い出したように扉の向こう側から端的に告げた。
「この建物のさらに上にある……墓地を兼ねた、慰霊碑よ」
◇
食後乗り込んだエレベーターはさらに上の階層へとむけて上昇していく。100メートル近く上り詰めた場所はもともとは特別展望台があった場所だ。
ソリッドグラフィのある大展望台よりフロア面積の狭いその区画の中央には、見慣れない物が鎮座していた。支柱を囲うように、円筒状に設計された大理石。
見上げるほどに高くかなりの幅のあるその大理石表面には原始的にも文字が刻まれている。ホログラフィックが一般化した今の時代では珍しい物だった。唯奈が言っていた慰霊碑とはこのことだろう。
通常慰霊碑は五十音順で並べられる。だがどうやらこれは随時刻み加えられているようで、名前の順はバラバラだった。
「これだけの数の人間が……レジスタンス関係者か」
慰霊碑の前に立って並んだ名前を羅列に目を通した。当然知らない名前ばかりであったが、中にはちらほら見覚えのあるスペルに目が留まる。
防衛省局員時代、レジスタンス構成員の可能性がるとしてリークしていたものたちだ。
「ここに刻まれてるのはこれまで戦死したレジスタンスのメンバーたち。それから、その活動に間接的、直接的区別なく関与した者たちの名前よ」
「これだけの数が……今のレジスタンスは、こんなにも沢山の仲間たちの死の上に成り立っているのか」
「皆が皆、名誉ある死を迎えたわけじゃないけど。でも少なくとも、私たちはこれだけの命を背負って戦ってるの。これを見た後に、逃げ出すことなんてできない」
きっともし時雨たちが戦場で命を落としたのならば、ここの名前たちの中に新しく刻まれることになるのだろう。
唯奈は肩にかけていた袋を下ろし中から日本酒や和菓子を取り出した。みたらし団子に饅頭、缶のしるこ、それらを慰霊碑の前に据え置く。
「アンタはこの名前の中の誰かが、知り合いだったのか?」
彼女は答えない。慰霊碑の前に静かに佇みじっと刻まれた名前たちを見つめている。指先でなぞる刻印は、『BOLUS RONOA』というアルファベットだ。
「ボルス・ロノア。それが、この酒を贈る相手」
どことなく哀愁を漂わせそして慈しみをも感じさせる優しい手つきで慰霊碑を撫でる。時雨は唯奈にかける言葉を持たず無言でそこに立ち尽くしていた。
彼女はきっとこの死者の礎に対し何らかの想いを抱えて生きている。そのボルス・ロノアという人物が一体何者であるのかはわからない。されども足を踏み入れていい領域でないことだけは確かだった。
「お前さんがたも来てたのか」
エレベーターでこのフロアに新しく和馬がやってくる。彼に関しては何も供え物を持っている様子はなかった。
「で、どうしたよ烏川。レジスタンスの死んじまった奴に知り合いでもいたのか?」
「いや、俺は柊についてきただけだ。そういうお前は……」
「ああ別に気にしなくていいぜ。お前の予想している通りだ。俺も柊と同じようなもんよ」
彼は平然とした様子で慰霊碑に向かう。そうしてその表面に手を触れ差すとしばらくしてから離した。
「戦友、か?」
「んにゃ、そういうわけじゃねえんだ」
彼は振り返ると頬をポリポリと掻きながら二の句に悩む仕草をする。
「そもそも、アイツはレジスタンスのメンバーじゃねえんだよ」
「なら……」
「だけど、俺がレジスタンスに入るきっかけを作ったのはアイツだった。俺の人生を大きく狂わせたのもな」
「そいつのことを恨んでいるのか?」
「まさか。逆に感謝してんだ。アイツは俺に知らないところでずっと一人で戦ってたんだ。いろんなもん抱えてさ……だから俺、アイツの思いを、願いを、決意を抱えてレジスタンスに入ってる」
彼は慈愛に満ちた面持ちで首に下げている指輪を握りしめる。いつもよりも神妙な何かに思い馳せるような表情。アイツというのは女性だったのだろうか。それも和馬にとって近しい大切な。
「もうアイツみたいな犠牲は出せない。だから俺は戦う。それだけのハナシよ」
皆が皆、それぞれ色々な思いを抱えているのだろう。
防衛省にいたころはレジスタンスの思いなど何も考えたことがなかった。だがこの者たちはリミテッドを守るため、同時に自分の中にある誇りを、決意を。そういったものに率直に戦っているのだ。
なんとなく感傷に浸って慰霊碑を見て回っていると、見慣れた人影が視界に入る。大理石をじっと見つめている真那の姿である。
「真那、お前も誰かを――――」
彼女に近寄りだが茫然自失とする。真那の頬を一筋の雫が滴り落ちていた。
堰を切ったように泣き叫ぶわけでもなく嗚咽を漏らすわけでもない。ただ悲壮感にその身を焦がすように頬を濡らしていた。
少し離れたところで思わず足を止めて彼女の見つめる名前を探す。すぐに想像していた名前が視界に収まった。
『GENMA HIJIRI』
息が詰まり血流が速くなる。眩暈に似た感傷だった。以前彼女の口から聞かされていたが、本当に聖玄真は、真那の親父は死亡していたのか。
脳裏に、幼少時代から自分を育て養成してきた彼の姿が張り付く。この慰霊碑に刻まれているということは――。
「親父さん――アンタに、何があった?」
自衛隊員ではあったが、彼は時雨の所属していた防衛省管轄の孤児院『救済自衛寮』の院長だった。少なくともレジスタンスなどの紛争に巻き込まれた、ということは考えにくい。あるとしたら――――。
動かない視線を無理やり動かし真那をもう一度見据える。滴る雫はなだらかな曲線の頬を伝いあごを経て、そして床に弾けた。その造形品のような横顔は儚く美しく、そして脆い。
「何が、俺達の環境を壊したんだ」
「時雨……」
時雨の存在に気が付いていたのか。あるいは気が付いていなかったか。どちらにせよ、真那は抑揚なく時雨の名前を口にしただけだった。静かに視線を振り向かせ見やる。
「何が、おっさんを死に至らしめた」
「……」
「何が、真那をこんな苛酷な環境に陥れた」
「時雨……?」
声音から心のうちに湧き出す激しい焦燥に気が付いたのかもしれない。真那はどこか心配そうに時雨の顔を直視してくる。そんな顔をさせているのは、全てはこの狂った世界の思惑だ。
真那は時雨の存在を記憶していない。救済自衛寮における時雨との記憶を根こそぎ失っている。そのこと自体はいい。記憶はこれからも培って行ける。
だがそれでも真那は本来このような闘争の渦中にいていい存在ではないのだ。彼女は救済自衛寮で、あの向日葵の監獄で、ただ何も知らずに生きているべきなのに。
それなのに何故ここにいる。誰が何を真那にしたのか。
「あなたは……不思議な人ね」
胸中から湧き出してくる様々な感情に翻弄される時雨をじっと眺めながら、真那は抑揚なく呟いた。彼女にとって時雨は元々赤の他人だ。
その他人である真那に対し干渉する時雨のことを不審に感じたのか。それとも時雨の感じている悲壮感に通ずるものがあったのか。
「私は自分でこの環境に足を踏み入れた。誰の策謀でも何の誘導でもない。自分のあるべき姿で、ここにいる」
ただ彼女は慰霊碑に指先を触れさせたまま決意をその言葉に表明していた。そんな堅実な彼女の姿にその内側の儚い部分を重ねずにはいられない。
「私は……待っているの」
「いつか、助けてくれるのを……」
本拠点に来る前、そう悲しげに呟いた彼女の顔を忘れてはない。真那はどこか脆く危うい。
「真那……俺は、」
「あなたは私を、助けてくれるの?」
彼女が発したその言葉にこめられた意味。理解など出来ようはずもなかったが忘れることはきっとないだろう。
◇
────いつのことだったろうか。
遠い昔、絶望のさなか。時雨は彼女にひとつの約束をした。
それは彼女と時雨にとっての折衷策で、そして最悪の結末を肯定する約束だった。
絶望の渦中で彼女が流した一滴の涙。それを忘れることなど決して許されはしない。
「今回は、私があなたを助ける番、なんだから」
何故ならそれは、時雨にとって最大の罪なのだから。
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