ルペンの憂うつ
Jack-indoorwolf
第1話ローカルエリア・グラフィティ
クソみたいな……失礼、バラ色の世界へようこそ。まだ俺たちは自分に
俺は大学の昼休み、近所の和食レストランで友人2人といっしょにご飯を食べていた。
「
俺はスマホを見ながらぼそりとつぶやいた。
「なぜ?」
「知らんよ、アメリカの
「……それかフランスのルペンが自宅の階段で
「ああ……かもね」
俺は北海道でザンギと呼ばれる
「株なんか持ってないくせに」
テーブルをはさんで俺の前で蒼士と並んですわるルリがバカにするように言った。
「そう、俺たちは株を持っていない」
「あんたらバカ?」
それが何か、という感じの蒼士、ルリは俺たちに食ってかかる。
「バカかもしれないし、そうじゃないかもしれない……そうじゃなかった場合、ルリ、俺と寝るなら今のうちよ」
俺はいやらしく笑いながらルリにささやいた。ルリは全く
「やっぱりバカだと思うからやめとく」
俺たちが入った和食レストランは大学近くの
「童貞のくせに」
昼食時の無駄話が続く。さっきの会話の流れでルリが俺を攻撃して来た。
「確かに俺は童貞だ……しかしそのおかげで俺のおちんちんはピンク色だし、その上グリコのプッチンプリンの味がするのだ」
「今どきそんな堂々とセクハラするな、気持ち悪い。もうグリコのプッチンプリン食べられないじゃないか」
はっはっは、俺の勝ちだな。ルリは今食べているサバの味噌煮込み定食もゲゲッという感じだ。
「蒼士、歩が私にセクハラしてくるぅ、助けて」
「知らん」
「私は蒼士にぞっこんなのに」
「僕が愛してるのはプリンスだけだよ」
ルリは蒼士のことが好きなのだ。でもなぜだか彼はそっけない。ちなみに蒼士が言うプリンスとはアメリカのミュージシャンだ。数々の伝説を残し2016年4月21日に数々の伝説を残しこの世を去った。蒼士はそのプリンスの熱狂的ファンなのだ。
「誰とつないでるの?」
ごちそうが乗ったトレイの横に置かれたスマホでルリは誰かとテレビ電話でしゃべっている。俺は気になってのぞき込む。
「
葵とは俺たちとよく遊ぶ同じクラスの女だ。彼女は午後からの講義がないようで……そういうわけだ。
「葵、アニソン歌ってくれ」
俺はチャチャを入れた。
「
「え」
「実家のクリーニング屋が経営破綻だって」
最近、陽太の様子がおかしいことはみんな薄々気づいていた。こんなことになるなんて。陽太は大学入学時のオリエンテーションで俺たちのグループリーダーになった男だ。みんな色いろ世話になってる。
俺も蒼士もルリの言葉にびっくりした。
「……俺らがここに来て一年半か」
和食レストランを出てアスファルトの歩道を3人で歩きながら俺がしみじみ言った。クラスメイトが大学から去るのは初めてのことだった、
「うちの大学、経済系がメインじゃん」
蒼士が俺とルリに言い聞かせるように語る。
「陽太が一年半勉強したことが親父さんのビジネスの
「パパがトラブル
俺は半分あきらめて言った。本当のことだ。
「わが家が普通の家庭だったら今ごろ俺は早稲田あたり通ってたんじゃないかな」
「バカなことを」
「うん、バカなことだな」
俺の迷いを蒼太が冷静にたしなめる。俺は現実を受け入れざるを得なかった。
「で、ルペンは?」
「骨でも折ったんじゃね」
ルリの
ルペンの憂うつ Jack-indoorwolf @jun-diabolo-13
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