奴隷邂逅

作者 紙谷米英

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★★★ Excellent!!!

ハードボイルド風の硬派な文章がかっこいいです。
そこにメイドさんが加わるとどんな展開になっていくのか、これからが楽しみです。
SASも個人的にお気に入りの特殊部隊なので。
それにしても、作者さんは、表現の多彩さと、相当な(特に軍事関連の)知識を持っておられていて、かなりの本を読まれた事でしょう。
楽しんで読めて、勉強にもなります。

★★★ Excellent!!!

心に傷を抱えた男と、身元すら知れぬ奴隷の少女とが、ぎこちなくも心を通わせていく物語。物語の基盤だけを見て言えば、実にシンプル作品だ。
が、いざ読んでみるとどうだろう。文中で描かれるイギリスの空気はどことなく湿り気を感じさせ、主たる舞台の一つであるSASの連中は、基地内でたむろしている時こそ童貞をこじらせたガキのような冗談を飛ばしあいながらも、一たび銃を握れば任務のために最善かつ全力を発揮するプロフェッショナル集団と化す。
彼らが繰り広げるオペレーションの情景は、事前に立てられるプランから実際の行動のシーケンス、瞬間瞬間の迅速な判断まで、執念すら感じるほどの精緻さをもって読者を圧倒する。
主人公ヒルバートの周囲を取り巻くそうした環境の描写は、彼自身の懊悩が透けて見えるような皮肉めいた軽妙さと、絶望を抱えるが故の重苦しさが見事に同居している。
そして、悪夢や幻覚など様々な形を取って現れる彼のトラウマは、致死性の呪いかあるいは汚れた泥のような不快感を伴って読者にもまとわりつき、飲み込まんとする狂気を容赦なく叩きつけてくる。
ロマンにあふれたテーマと題材を、徹底的なリアリティで砕き、抽出した良酒のような作品だ。読めば読むほどに、この作品の綿密な筆致に感嘆せざるを得ない。

これだけ書くと本作がなんだかただ重苦しいだけの作品と取られかねないので、ここからは一番のメインたるヒルバートとブリジットについてクローズアップしよう。
この二人の交流、本当におっかなびっくりで、微笑ましくなると共に野次馬めいたもどかしさを感じずにいられない。
奴隷として躾と精神を叩き込まれてきたブリジットと、彼女に自身の境遇を重ね、彼女を一人の人間として尊重しようとするヒルバートの触れ合いは実に緩慢としており、読者はおろか、二人を取り囲む義理の家族をもさぞかし悩ませていることだろう。
しかもそんなヒルバートの態… 続きを読む