土地面積の難問 2

 さんすうの面積を求める問題を解いている。

 簡単な問題ばかりであったが、すこし複雑な文章問題がでてきた。


「佐藤さんが、マイホームを建てようとしています。

 その土地は平行四辺形をしており、以下のような長さとなっております。

 この土地の面積はどれくらいでしょうか?」



    /│ ̄ ̄ ̄ ̄/┐

   / │   /

  /  │  / 5

 /   │ /

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄┘

└ 3 ┘

└  5   ┘


 土地の図形は平行四辺形をしており、『底辺X高さ』という単純な計算で解くことができる。

 しかし右に傾いたこの歪んだ四角形は、底辺は5メートルと記述されているものの、高さは記されていない。

 そのかわりに、左上の角から落ちるように真下に向かって補助線がひかれており、底辺と直角で交わった箇所から左下の角までは3メートル、斜めになっている部分は5メートルと数字が振られている。



 必要なハズの高さが記述されておらず、生徒達は途端に頭を抱えて悩み出す。


 私は直感的に違和感を覚える。これはマズいと感じた。



 まず、手始めに面積を求める。左下の角度を分度器で測ってみると、53度という数字が出る。

 コレをもとに高さを求める。


 スマフォの電卓アプリをまず関数電卓モードにする。そして『53』続いて『sinサイン』ボタンを押すと『0.799』という数字が表示された。

 つまり『sin(53)』はおよそ『0.8』となる。

 ここに斜めになっている部分の5メートルを掛けると、高さは『4メートル』という数字が出てきた。


 念の為、ほかの方法でも確認する。

 電卓に『53』という数字をいれ、今度は『tanタンジェント』ボタンを押す、する と『1.32』という数字が出てくる。

 ここに底辺の交わっている部分までの距離、3メートルを掛けると『3.98』やはり高さは『4メートル』だ。


 底辺5メートル、高さ4メートル、面積は20㎡という恐ろしい数字がでてきてしまった。

 やはり悪い感は的中した。



 建物を建てるに当たっては、建ぺい率という数字が重要になってくる。

 この数字は『土地の面積に対して、どのくらいの割合までの建物を建てて良い』という国が許可する数値で、この数値は住宅地や工業地帯などの地域ごとに設定されており、一般的な土地では普通は60%、上限は80%となっている。ごく一部の例外で100%などもあるのだが、ここでそれは考えなくても良いだろう。


 ここで、20㎡という猫の額ほどの土地に適用してみると。

 建ぺい率60%で12㎡、80%でも16㎡という非現実的な数字がはじき出される。

 狭い6畳から7畳ほどのワンルームマンションでも20㎡くらいはあるのだというのに……


 試しに12㎡で考えてみよう、これを丸々部屋に置き換えるとおよそ7.5畳になる。

 これだけだと広そうに感じるかもしれないが、トイレなどひつようなモノが一切無い。

そこでトイレとユニットバスがセットになっているものを入れる。たしか最小のものでも2.5畳ほどだったのでそれをひくと居住スペースは5畳ほどのこされた。さらに玄関は必要なのでこれも削って4.5畳ほど。これは辛すぎる。せっかく建てたマイホームが4畳半とは……


 これではいけない二階建てで考えてみよう、一階にバス、キッチンなどを集中させ、2階を丸々部屋にする。

 1階は階段とキッチンでさらに面積が削られて3.5畳ほどしか残らないだろうが、二階は階段をのぞき7畳分は確保できるのでこれなら住めそうだ。


 しかし、新築でこの物件を建てる予算があれば、もっと良い分譲マンションが買えるはず。

 正直言っておすすめ出来ない。家族は是が非でも、このマイホーム計画を止めるべきだろう。



 しばらく時間が経過して、美和子先生が生徒に解答を求める。

 だが、いつまで経っても手が上がらない。

 そこで私に白羽の矢が立った。美和子先生が私に問いかける。


「鈴萱さんはこの問題は出来ましたか?」


「はい、出来ています」


「では、説明をお願いします」


「わかりました」


 こうして私はこの問題を説明する事となる。



========================後書き========================

図形の問題を文章だけで説明するのは無理がありました。

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