土地面積の難問 1
さんすうの授業が始まる。
美和子先生がやってきて、
「では定規や電卓を取り出して下さい」
そういうと生徒達は机の中の道具箱から、定規やら電卓やら分度器を出してきた。
私もそれにならい計算の道具を机の中から引っ張り出す。
問題の書かれたプリントを配る。つづいて美和子先生は黒板用のでっかい三角定規で、プリントとの問題と同じ四角い図形を描き出す。
縦と横の長さを書き込み、生徒達に、
「ではこの図形の面積はどれくらいしょうか?」
そういって解答を求める。
本日は面積を求める問題をこなしていくらしい。
答えを求めると、すぐに生徒達の手が複数上がった。
先生はひとりの生徒を指さすと、その生徒は
「21平方メートルです」
正解を答える。
一つを解き終えると、また次へ、次へと授業は進んでいく。
出される図形はどれも簡単な四角形であり、すこしだけ歪な台形や菱形などもあるのだが、ごく簡単に解ける問題ばかりであった。
しかし子供達は夢中に飽きずに問題に取り組んでいく、おそらく重要な教科であろうという事をなんとなく認識しているのだろう。私もさんすうは最重要科目であると考えている。
なぜなら、この教科は、最低限な事を出来なければ生活に支障をきたしてしまう。
例えば歴史など知らなくても社会人として生きていけるし、
最低限の意思疎通さえできれば複雑な国語の授業なども要らない。
高校の時にならった古文の授業などは、大人になってからは一切使わない不必要な教科だった。
あんなものなら、社会にでたときに使う『例文の書き方』でも教えたほうが役に立つ。
さて、私は建築業界に努めていたので、こういった図形に関しては
この手の図面は日頃からある程度は見なれていて、計算をせずとも縦と横の長さだけで、おおよその空間の大きさが検討がつく。
出された問題を見てふと考える。しかし、この勉強はあまり役に立たないかもしれない。
実際の土地はどこか欠けていたり飛び出ていて、出された問題のような綺麗に計算できる土地はかなり珍しいと言っても構わない。
それに面積があらかじめ書かれていない設計図などは、お目に掛かったことはなかった。
この手の図面には必ず記載されているし、もし仮に記述しない測量会社などがあるとすれば、そんな会社は瞬く間に潰れるだろう。
簡単な問題が終り、文章問題がでてきた。
美和子先生は図形を書き上げて、生徒に問う。
「佐藤さんが、マイホームを建てようとしています。
その土地は平行四辺形をしており、以下のような長さとなっております。
この土地の面積はどれくらいでしょうか?」
図形を見てみると、ごく簡単な平行四辺形なのだが、本来は面積を求める際に必要な、高さが記述していない。
しかしそれを計算ではじき出す為に必要となるような数字は書かれていた。
角度があり面積は計算してみないと分らないが、一辺が5mとか一部の長さが3mとか書かれている。
生徒達は途端に頭を抱えて悩み出す。
私は直感的に違和感を覚える。これはマズいと感じた。
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