第28話 エルヴィン・ユークリッド
中央広場を北側へと真っ直ぐ進む、何故ならその先はグランティアロ城
そして、エルヴィンの目的地はグランティアロ城の玉座の間だからだ
先ほどまで嶋村くんと本気の殺し合いをしていた、そして俺は殺すつもりで全力で戦った
お互いに、迷いもなく殺しあっていた
両腰にはそれぞれディフェンダーⅡ、そして嶋村くんが使っていたブレイブソードが下げられている
ブレイブソードは戦って勝ち得たもので、そしてそれは俺が嶋村くんを殺したという何よりの証だ
「飯島さん、この戦いが終わったら俺は……旅に出る」
「旅?」
「自分自身を見つめ直したいんだ、そして……世界中にいる困っている人を助けたい」
「贖罪のつもりか?幸平」
「ラングレイさん……」
「シオが死んだのも、嶋村くんが死んだのも結果は君が与えたものだ。君は罪を犯していない」
「でも、俺は……」
ガチャリ、ガチャリと重い金属音が聞こえてきた
音の重さ的にこれはハーフプレートだろうか、自分達以外の誰かだ
それに、ビリビリと重い殺気を放っている……自分に敵意を向ける者、それは……
「弟子は師匠に似るっていうけど、全くその通りだね」
「エルヴィン・ユークリッド……!!」
「訂正してもらおうかな、今の僕はエルヴィン・グラン・ユークリッド……メルドニアの国王さ」
「何故ここにいる!?」
「テリウス陛下もその家族も国民を置いてとっくにどこかへと逃げちゃったらしくて、これって不戦勝だよね?」
「逃げた……?まさか、リオウ大佐が不在なところを顧みるに親衛隊を集めて何かしらの反撃作戦を練っているところだろう」
「ふーん……だったら、僕が大暴れして街を破壊すれば炙り出せるかもしれないって事だ。民思いの優しい王様って評判だから、最大出力のオメガ・エレメントでも乱れ撃ちすれば慌てて出てくるだろうね」
「貴様……!!」
「冗談冗談、これから治める街を破壊するなんてデメリットしか無い行為をする訳ないじゃん!だけど……もしいつまでも出てこなかったらそうするのも仕方ないかもね。だから……精々足止めして見せる事だ!」
エルヴィンが王家の剣を抜き、ラングレイさんに斬りかかる……がラングレイさんは瞬時に盾でそれを防ぐ
「剣では防ぎきれないと踏んだか……けど」
ビキビキとラングレイさんの盾、マスターガードにヒビが入っていく
「牙断ちっていうのは、何も武器を破壊するためのものじゃない。戦いはメンタルが大きく左右する……ラングレイが咄嗟に盾で防いだのは不安の表れだ、その盾が今……破壊される」
「……!!」
マスターガードがバラバラに粉砕され、音を立てて崩れ落ちていく
「盾を失った君は不安に駆られる、マスターガードを破壊するほどなのだからグランドスラムも破壊されるかもしれない……真っ向から斬り合うのは危険だ!」
エルヴィンはラングレイさんにラッシュをかけるが、それを必死に避けていく
「グラビティプリズン!」
俺は咄嗟にエルヴィンにグラビティプリズンをかける、ターゲットを指定しエルヴィンにのみ重力の牢獄に閉じ込める
とはいっても2〜3秒持てばラッキーというレベルだけど
「……!!フリーズボディ!!」
「まったく、嫌になっちゃうな!!搦め手ばかりでさ!!」
グラビティプリズンで身動きを取れなくし、その瞬間にフリーズボディで身体機能を低下させる
「豪爆・波動掌!!」
飯島さんは体内のクリアスを爆発的に燃焼させ、それを直に叩き込む荒技をエルヴィンに仕掛ける
「流石に不味いか……舐めプして殺されるのは嫌だし……」
エルヴィンの瞳が妖しく光り、グラビティプリズンとフリーズボディを解除し豪爆・波動掌を回避しカウンターを放つ
「!?」
飯島さんは咄嗟に宙返りでそのカウンターを躱し、急降下キックをエルヴィンの腕に喰らわせる
「ッ!!キミ、なかなかとんでもないね……型の決まった武術なんだからセオリーに沿いなよ!!」
「ごめんね、私殆ど我流だから!!」
「まったく……」
腕を蹴って身体を捻り着地、それを狙いエルヴィンは魔導弾を撃つが飯島さんは姿を消しエルヴィンの背後を取る
「どいつもこいつもラングレイの技を真似したがる……」
瞬光斬は対応が遅れれば、死に繋がる
だからこそ、必ず剣は自身の背後に向く
「夏樹くん、今だ!!」
「ああ、力を借りるよ!!」
地走烈破、大地を浮き上がらせるほどの斬撃だ
閃空の地上版といったところで斬撃を飛ばすスピードは閃空にやや劣るが威力は数段上だ
「そっちが本命、いいや違うな……」
エルヴィンは地走烈破に勘づき、大きく跳躍しそれを躱し……
「殺気を強めすぎだ、ラングレイ!!」
ラングレイさんの奇襲に対応する
「アルティメット・フォース、発動!!」
「アルティメット・フォース……そんなものを発動する暇は無かったはず!?そうか、彼は……」
「大嵐の刃……!!」
ラングレイさんは驚き戸惑うエルヴィンの隙を突き、蹴り落とし飯島さんは地上から剣気を飛ばす大嵐の刃を放ち
それに遅れてラングレイさんまた大嵐の刃を放つ
「大嵐の刃……いいや、大嵐の双刃だ!!」
エルヴィンは体勢を崩しているため、これを躱す事が出来ずにまともに受けてしまう
「くぅ……ッ……!!」
ズタズタに斬り裂かれるはずのエルヴィンだが、咄嗟に物理防御のシールドを張ったのか思いの外ダメージは少ない
「防がれたか……!!」
俺はルファードとスピリットバンドを発動し、ノーチャージでアクセルを発動しエルヴィンと距離を詰める
「剣気で守護防壁を張ろうと、零距離で閃空を受ければ!!」
「ダメージは免れないはず!!」
「くそ……!!舐めるなぁ!!」
零距離で閃空を放つが、エルヴィンが発したクリアスエネルギー……闘気と呼ぶべきかがそれを弾き飛ばし俺たち全員を吹き飛ばした
柱や家屋に飛ばされる俺たち、特に攻撃をしただけでなく闘気を発しただけ
しかし、それに圧倒されてしまった
「なんなんだ、これ……」
「オーバーロード、エルヴィンさんが持っているスキルだ」
嶋村くんが解説を入れる
「オーバーロード?」
「集中力を極めた先にあるスキルだ、誰もが容易に習得出来るスキルではあるけれどオーバーロードに辿り着けるのはほんの一握り……僕だって夏樹くんとの戦いで漸く体得出来たくらいだ」
「あれか……」
ノーチャージでのギガフレイムバースト、地走烈破を追い越すスピード……あれをエルヴィンがやるのか
「夏樹幸平……さっきのアルティメット・フォースはどういう事だ」
ここで突然の質問、戦闘中にも関わらず
本当にこのエルヴィンという男はよく分からない、心の底が見えないというか何を考えているか分からないというか……
「どうって、飯島さんに大嵐の刃を使わせるために」
「地走烈破を放った直後、チャージも無しに発動したね。あれは君には不可能なはずだよ……集中力すら使えない君が」
「アルティメット・フォースは俺のスキル、きちんとチャージはしてある。だけど、地走烈破は嶋村くんの力を借りた」
「力を……借りた?」
「スピリットバンド、俺のスキル」
「スピリットバンドは心が繋がった相手とシンクロする特殊なスキルだ、非常にマイナーだが双子でスピリットバンドを使い武勲を挙げた歴史上の人物がいる、それほど高度なスキルを死者と……」
「待て、幸平!確か、嶋村くんに敗れた後冥界に行って追い返された夢を見たと言っていたな!?」
「ええ、はい。その時に戦争で死んだ人や戦死したリン曹長……それから、俺の葬式で泣いている父や母の姿を見ました。俺と飯島さんは階段で落ちて頭を打って向こうでは死んだみたいで」
「ふふ……はははっ!!なるほど、生きているか死んでいるかも曖昧な存在、だからこそのスキルという訳か!!」
エルヴィンが突然高笑いをして一人納得したかのような事を言う
「夏樹幸平、君はこれまでに4回死んでいるはずだね?そして、元の世界で死亡した瞬間にこちらの世界へと転移し『この世界の意思』により肉体が形成された。つまり、君は生者であり死者でもある!存在そのものが曖昧であるが故に他者と簡単にリンク出来るようになったわけだ!!」
「あの、ハイテンションなところ申し訳ないけど私も一応向こうで……」
「それは君がスピリットバンドの適性が低く、かつ鈍感だからだよ」
「あっはい」
「さて、夏樹幸平。君に決闘を挑みたい、条件はスピリットバンドを完全開放して全力でぶつかる事だ……君が勝てば、王座を夏樹幸平かラングレイ・アルカストロフに譲渡する。敗北すればエルネーベをこのまま殲滅する」
あまりに一方的な要求だ、しかしこの条件を飲まなければエルネーベは本当に壊滅してしまうだろう
はっきり言って、先ほどの闘気だけでもかなりのダメージだ
ラングレイさんや飯島さんでも勝てる見込みは殆どないが、俺のスピリットバンドを完全開放すれば可能性はある
3対1の方が勝てる見込みはあるかもしれないが、完全にオーバーロードを開放した場合飯島さんもラングレイさんもやられてしまうだろう
「その勝負、受ける!!」
「それでこそだ」
不敵な笑みを浮かべるラングレイ、何かを企んでいるというよりは戦えて嬉しそうだ
「幸平!?本気なのか!!」
「オーバーロードを受け止められるのは、スピリットバンドを開放した俺だけです!!だから、やります!!」
———————
和也が言うには地球の日本という国は「戦い」が容認されない国だという、魔物もいないし戦争も無い平和な国
しかし、その分窮屈で居心地が悪い国だとも
そんな世界で生まれ育った少年が僕の眼前に「最強の敵」として立ちはだかっている
「迷いのない、いい眼をしている」
「だからどうした」
「僕の最後の戦いに相応しいと思ってね、この戦いを終わらせれば後はもう強敵などいない……戦いにすらならない戦いだけ」
「それはどうかな、君の協力者ももう残っていない」
「メルドニアは受け入れたよ、命が管理された正しい人間だけが生きていく社会を」
「違う、正しく生きるようにさせられるだけだ!貴族社会よりもタチが悪い、心の自由すら許されない圧迫された社会だ!!それに……命の管理なんかしたら命の尊厳すら失われていく、その先にあるのは破滅だけだ!!」
「命の管理に成功すれば、罪の概念が無くなる」
「罪の概念……?」
「例え間違いを犯したとしても、命が帰ってくればその罪すらいずれは赦されるだろう。お互いが許しあえる優しい社会を形成できる」
「……優しさは強要するものではない、それにそんなの間違ってる!!命は、一つでないと……その価値は……」
「君が殺めた和也も、シオも帰ってくる。アルバート氏もその家族だって、元の幸せな生活を取り戻せるしリン・スティンバー曹長も……和也と深雪さんを再会させる事も」
「黙れッ!!」
「頑なだね、どうして命を管理する事が間違いだなんて言い切れる?法律を変える、ルールを作るだけじゃ人間は変わらない。変えるにはその在り方すらも変える必要がある……そうは思わないか?」
「エルヴィン、アンタのやり方が絶対に間違っているなんて言わない……だけど、そのやり方はいずれ世界をダメにする!!だから、俺は否定する!!」
「……狂ってる」
「は?」
「君、狂ってるよ。そうやって和也の死もシオ君の死さえも背負っていくつもりかい?信念のためなら、親友さえも殺してしまう……その殺した人間が帰ってきて幸せな生活を送れるかもしれないのに、その可能性すら閉ざす。君さぁ、僕を悪人だと断じたけれどどっちが悪人なわけ? 死んだ人間が生き返れるかもって提示してるのに、それを破壊しようとするなんて殺人者と何が違うの?」
「俺は……俺は……!!」
「迷ってるんでしょ?だったら、大人しく降参しなよ。君の事も、生きられるようにしてあげるからさぁ」
夏樹幸平は俯いている、それはそうだ
人が人らしく生きていられる、引き裂かれた絆が元通りになる
人が過ちを犯すのは、罪と喪失の概念があるからだ
本当は夏樹幸平のスピリットバンドと全力でぶつかってみたかったが、舌戦で落ちてしまった
「……嶋村くんにもまた会いたい、リリアとシオを幸せにしてあげたい、アルバートさん一家を元の幸せな家族にしてあげたい、リン曹長とまた一緒に任務がしたい、ミラちゃんをまた家族に会わせてあげたい!!だけどッ!!」
しかし、彼は顔をあげた
顔は真っ赤で、眼も涙で真っ赤になってしまっている
「だけど、命は一つでやり直しが効かなければ人は命を大事にしなくなる!!かけがえのない時間が無限になってしまえば、それは呪いにしかならない!!短い時間だから、楽しいんだ!!たった一つの人生だから楽しいんだ!!それに……」
「それに?」
「俺、死んでしまった人たちの誇りとか情熱とかを守りたい」
「君の決断を聞いてさ、もし君が勝ってしまったら何人の人間が君を憎むだろうね」
「構わない、俺は……俺が出した答えを信じる!!」
「悲壮な覚悟だ」
彼は悪人ではない、彼の出した答えもまた真理だと僕は思う
口が裂けても彼には言わないけど
たった一つの命だから燃やせるものがある、僅かに与えられた時間だから楽しい
ほんの短い時間だからお互いを大切に出来る
僕は彼がその決断を下してくれてそれが嬉しかった、僕を否定する存在が最大最強の敵になった
僕がやっている事は物語の主人公的とは言えないだろう、どちらかと言えばもがいて苦しんで罪を背負って誰かから愛されてライバルと戦って……そして辿り着いた宿敵といったところか
夏樹幸平は、僕が憧れた主人公だな
「アンタを討って、この戦いを終わらせる!!もう誰も、傷つけさせない!!命の管理なんかしなくても、人は生きていける!!」
「……負けないよ、幸平」
「えっ?」
「もっとラスボスらしくした方がいいかな? 世界は我が手に、我が名はエルヴィン・ユークリッド也!! 我が覇道を阻む者は何人たりとも斬り捨てる!!」
「エルヴィン……なんでアンタ、そんなに優しい顔をしているんだ」
「さて、どうしてかな? 君のことが男として少し好きになったから……かな。だけど、僕は僕の正義が正しい事を証明するために、負けるわけにはいかないな」
———————
「夏樹くんは、命の管理を選ばなかった。彼は迷っていたね、最後まで」
「俺たちが生きた誇り……か」
「こんな事言ったらおかしいけど、ずーっとこれから和也と一緒にいられるし……和也といた時間は楽しかったよ」
「苦しい時もあったけど、リリアといた時間は今でもはっきり思い出せる」
「少し残念かも〜なんて思ったけど、そうだな。正しく生きる事ってのは間違った道を歩まされるんじゃなく、自分で歩くからいいんだよな!!それに、短いからこそ思うぜ……いい人生だったってな」
「ラングレイ、私いつまでも貴方を見てるわよ。イライザ……頑張ってね。私、貴女が貴女の気持ちに気付くの待ってるから……少し悔しいけど、ラングレイを幸せにしてあげてね。この子といつまでもここで待ってる」
「ほら、たかいたかーい!!……お、顔ははっきり見えないけど笑ったぞ、シア!!」
「あら、本当!?」
「オホンッ!! さて、幸平がお呼びだぜ!!いくぞお前ら!!」
———————
「オメガ・エレメント・スプレッドシュート!!」
「拡散した……!?なら!!」
俺とエルヴィンは激しい空中戦を繰り広げていた、お互いに能力を最大限まで開放したところエネルギーの翼が生えて空を飛べるようになったらしい
「瞬光斬の高速移動を活かして避けるか……だけど!!」
エルヴィンがギガフレイムバーストを剣にエンチャントさせ、巨大な炎の刀身を形成する
それを振るうと巨大な炎の竜巻が襲いかかってくるが、なんとか回避する
だが、刀身が大きければ大きいほど隙は生じるもの
その隙を突いて剣を大回転させる事で竜巻を発生させる大技、旋風乱牙を使う
本来は軽く浮き上がらせる程度なのだが、今の完全開放状態ではトルネード級の大嵐となる
「それが……どうしたああぁぁぁぁぁぁ!!」
風属性最強魔導、街を一つ消しとばすほどの雷を呼び起こすジャッジメントゲートを発動しそれをエンチャントするエルヴィン
それを閃空で放ち、俺を跡形も無く消しとばすつもりだろう
「消し飛べ、夏樹幸平ッ!!」
「ならば、グラビティ・カタストロフ!!」
マイクロブラックホールによる対象物の崩壊を引き起こす、地属性最強魔導で迎え撃つ
マイクロブラックホールに瓦礫や樹々が集まり、崩壊していく
そして、そのマイクロブラックホールをエルヴィンに向かって撃ち出すと閃空とぶつかり超大規模な爆発が起こりお互いに身体が吹き飛ばされる
———————
「夏樹くん、あと数分で僕達も限界だ……これ以上は夏樹くんの肉体に大きな負荷がかかるよ」
「あと一撃……あと一撃で勝負は決まる!!」
「分かってる、頼んだよ」
「ああ!!」
———————
オーバーロードは集中力の上位互換だ、集中力に比べても肉体にかかる負荷もかなり軽減され肉体にブーストされる能力も桁が違う
とはいっても、流石にこれだけの規模の戦闘は身体が持ちこたえてくれないらしい
次の一手で全てが決まる、早く夏樹幸平との合流を急がなければならない
しかし、不思議とワクワクしている
今日で全てが終わり、自身が殺されるかもしれないのに
城戸桜が負けた、イライザが心変わりしてラングレイ側についた
そして、嶋村和也が何らかの要因で敗北した
はっきり言ってかなり追い詰められている、仮にこの戦いに勝利したとしてもラングレイや飯島恵にのされて終わりだろう
今後は参謀も頼れる戦闘員達もいないし変態科学者ももういない
「詰んでるなあ……僕」
思えば、自分自身がどこまでやれるかという思いつきからだった
あっさりと何でもできてしまう、目標にしていた聖騎士の座も簡単に手に入った
趣味の芸術も上手くいくし、女の子にだってモテる
ちょっと頑張ったら王座だって手に入った
はっきり言って今回の戦いだって、理由は後付けで「どこまでやれるか」というものだった
「神様気取りはよくないね、夏樹幸平。どうやらそういう考え方の人間に運は回ってこないらしい……けど、神様気取りにも意地があるんだ。生まれて初めてだよ、負けたくないだなんて思ったのは」
「アンタは……俺とラングレイさんがそっくりだと言ったけど、エルヴィンは嶋村くんそっくりだ、そうやって油断を誘ってミスを誘う」
「失礼な奴だな、エルヴィンさんと一緒にしないでよ」
「聞こえてるよ、和也」
「凡人にも意地がある、ここで負けてゲームオーバーはゴメンだ。全開で行くよ、嶋村くん!!」
「ああ!!」
「さあ、ラストバトルだ!!」
お互いに飛び出したタイミングは同時、狙いは……牙断ち
だがそれはエルヴィンも同じだった、剣士は命懸けで剣もまた命懸け
剣士にとって剣は誇りだ、酸いも甘いも苦いも涙も汗も血も全てを剣に委ね生きてきた
「うおおおおおおおお!!」
ディフェンダーⅡが砕けていく、しかし俺には親友から委ねられた剣が残っている
「嶋村くん、ブレイブソードを使う!!」
「ああ、牙断ちだ!!」
ブレイブソードを瞬時に抜刀しエルヴィンの剣を砕く、しかしブレイブソードもまた砕かれてしまった
「チィッ!!」
エルヴィンが舌打ちするが、オメガ・エレメントをノーチャージで撃とうとしている
だが、そんな事は構わない
剣が折れようと、砕かれようと俺は剣士だ
心には、剣を持っている
残っているのは鞘だけ、でも刀身が無くてもそれは剣である
「くらえええええええぇぇぇぇぇ!!」
半狂乱でエルヴィンは叫ぶが、俺は真っ直ぐに見えない刃をエルヴィンに叩きつける
「な……!?」
「まだまだぁ!!」
もう片方は相棒のディフェンダーⅡだ
エルヴィンのプレートアーマーにははっきりと刀傷が残り血が噴き出し、ディフェンダーⅡの鞘を突き立てた場所には穴が穿たれ血液が噴き出す
それと同時中エルヴィンの掌のオメガ・エレメントが消失していく
俺の、俺たちの勝ちだ
———————
「剣気だけで、あそこまでやるとは……剣を砕いても剣士は生きている……基本的な事が抜け落ちていた」
「エルヴィン・ユークリッド」
「エルヴィン・グラン……いいや、王位をラングレイか君に譲渡する約束だったね」
「俺は異邦人です、王位なんていりません」
「そうか……」
「あの、最後まであなたの本意が分かりませんでした」
「スピリットバンドがあるのに、分からないんだ」
「ええ……分かりません」
「僕はやりたいようにやっただけ、世の中が気に食わなかった。僕の才能を何かに活かしたかった……人生がつまらなかった……それだけだよ」
「やっぱり、分からない」
「分からなくていいよ、簡単に理解されたら天才の名折れだ」
「もしも……もしも、あなたが望んだ世界になった時にあなたが何かしらの理由で命を落とした時、生き返らせますか?」
「何それ、心理テスト? やだね、こんな厄介な奴生き返らせないよ」
「なるほど、やっぱり分からない」
「何それ……」
———————
それからしばらく時間が経つと、エルヴィンは静かに息を引き取った
エルヴィンの最期はどこか寂しげで、でもどこか満足気で、どこか嬉しそうで……上手く言葉にできない
それから、魔王ゼクシオンの核はメルドニア城の地下に保管されているらしい
———————
「幸平!!やったんだな、お前が……聖騎士エルヴィンを討ったんだな!!」
「俺だけじゃないですよ、みんなが力を貸してくれたお陰です」
「とにもかくにも、やったんだよね!?夏樹くん!!」
「うん、やったよ」
「やったー!!やったー!!」
「……」
「どうしたの?夏樹くん」
「何でもないです……。 そうだ!!ラングレイさん、勝利宣言しないと!!」
「おお、そうだったな!!」
この日、新生メルドニア王国は国王及び側近達の戦死により現政権は空中分解した
エルヴィン・ユークリッドの宣言により国王の座はラングレイ・アルカストロフに明け渡され、議員は選挙により決定される事が明らかになった
エルヴィン・ユークリッドにより、反貴族へと世論が傾いたためラングレイは国民に迎えいれられた
皮肉な事に、エルヴィン・ユークリッドが行った貴族撲滅運動により貴族社会は事実上の終焉を迎える事となっま
それにより、治安は安定し犯罪は激減しメルドニアの社会は新しく変革する事になり時代は新たなるステージへと向かう事となる
そして、魔王ゼクシオンの核は物理的な攻撃はともかく超大規模な魔導攻撃さえも受けつけないためメルドニア城の奥深くへと安置される事となった
それから月日は流れ、夏樹幸平と飯島恵は19歳となり……
続く
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