第6話 少女が見た悪夢

前回までの主人公になりたい人生だった



夏樹幸平


職業:戦士

レベル12


主人公、そろそろバトル物の主人公として必殺技の一つでも習得しなきゃいけないんだけどなかなか上手くいかない

強敵とか現れて新要素を提げて、ボロ負けしてからの修行が王道ってところだが……



装備

ディフェンダー


スキル

無し(涙)


飯島恵


職業:学生

レベル24


嶋村くんに恋する女の子だったんだが、今じゃイキイキとバトルガールをやってる

なんかもう、嶋村くんの事とか忘れてない?


装備

アイアンナックル


スキル

剛・波動掌

烈風脚


嶋村和也


誰だっけこいつ……


職業:学生

レベル:?


装備品:?


ラングレイ・アルカストロフ


職業:ナイトマスター

レベル45


HP524

MP398


装備品

グランドスラム(剣)

リフレックス(鎧)

マスターガード(盾)

破邪の聖刻(アクセサリー)


スキル

守護防壁

天雷絶剣

大嵐の刃

瞬光斬

剣気


つよーい!!

今ではすっかり幸平の師匠ポジションだけど、本当は多忙なお方



オルディウス・グラン・メルドニア


職業:国王

レベル20


HP155

MP50


装備品

王家の剣

王家の鎧

王家の盾

王家の兜


スキル

アークストライク

アークシールド


最近だとテロの動きに勘づいたらしいよ


イライザ・エルテミシャ


職業:占い師

レベル34


装備品

プリズムダガー(短刀)

占い師の服(衣服)

マジックブースター(アクセサリ)


スキル

未来予知

スペルアクセル

マジックシールド


占いというよりは、クリアスの動きなどを研究をするのが本業の人

アナライズもその研究成果の一つ


———————


ディフェンダーにも慣れてきて、思い通りに動けるようになってきた

イメージ通りの動き……といっても集中力を発動した時ほどではないけれど、概ね調子は良好

「そっちに行ったぞ!!幸平!!」

リン軍曹が叫ぶ、ウィンディウルフと呼ばれる魔物が俺の頭上を飛ぶ

風をまとったかのような狼、そのスピードは厄介だけど野生の魔物だから殺気は読みやすい

「そこだ!!」

背後、身体の軸をズラさずに振り返り斬撃を叩き込む

ウィンディウルフの身体は真っ二つになり、返り血を思い切り浴びるがそのまま動きは止まる

いつぞやのアーマードベアのように脳天をかち割っても動くなんてのはゴメンだが、さすがに真っ二つに斬り裂いたのだから沈んで欲しいが……

「よくやったぞ幸平!こいつは……今日の晩飯だな」

「ええ、大物です」


———————


「ウィンディウルフの肉は身が引き締まっていてな、結構美味いんだ。みんな喜ぶぞ」

「肝とかは俺たちが食べちゃいましたけどね」

「仕方ない、ウィンディウルフの肝は味わい深いけどアシが早くてシメた直後しか食えないんだ……まぁ、こういう任務に就いた人間の特権さ」

今日は俺とリン軍曹の2人で森林地帯の魔物討伐の任務、ゲームの世界じゃそういうのは勇者に任せきりだけどこの世界じゃ兵士は魔物狩りで大活躍だ

傭兵ギルドはダンジョンなどの危険地帯を、俺たち兵士(先日遂に入隊した)は危険のないよう一般人でも立ち入る場所や街道の掃除だ

「しかし、骨とかまで持って帰るんですか?」

「骨だって需要があるんだ、アクセサリに使ったり料理にも使える。店に売れば高い金で買い取ってくれるぞ」

「へえ……」

ずっしりとのしかかる骨やら肉の重量、水が無いから充分に血抜き出来ていないのもある

筋力をつけるためのトレーニングにもなるが、これが結構重い

「まぁ、こうやって荷物持たされるのも新人のうちだけだよ。今は我慢して、筋力つけとけ」

「はい……」

そう言えば、筋トレをしなかったわけじゃないけどこんな風に重い荷物を運んだりするのはやってなかった

盲点だったな……

「うえぇぇぇぇ〜〜〜ん!!」

子供の泣き声がどこからか聞こえてくる、こんな『フィールド』で、親とはぐれたのだろうか?

いずれにせよ、尋常ではない事態だ

「走れるよな?スタミナおばけ!」

「スタミナおばけって……走れます!!」


———————


泣き声のする場所には、思っていた以上に凄惨な光景が広がっていた

人の形を留めていない人間「だったもの」があちこちに散らばっている

本来は荷物運びや買い物へと向かう平和な道だが、そこは地獄のような血の海へと変貌しており

泣き声の主……見た所8〜9歳の少女は血で真っ赤に染まっている

「これは……街道は滅多に魔物が出ないはずなのに」

むせ返るような鉄臭さ、死臭というか人間の『肉』の臭い

真っ二つにされた上に頭から喰われた人間をつい先日見たばかりだが、じっくりと死んだ人間を見るのは初めてで思わず吐き気を催すが

リン軍曹の目の前で、そんな情けない姿は晒せない……それを必死に堪える

「ああ、そうだ。これは魔物の仕業なんかじゃない」

「魔物の仕業じゃない?でも街道でこんな……」

「魔物がなんで人間を襲うか分かるか?」

「そりゃあ魔王にとって、人間は邪魔な存在だからですよね」

「魔王にとって人間は邪魔だから魔物を作って、人間を襲わせている。それは魔王の都合、でも魔物には知性が無い……行動原理は野生の生物とそう大差が無いんだ」

「つまり、人間は狩りの対象って事ですか?」

「その通り……っと幸平、人命救助が最優先だ。その女の子を連れて城へ行って報告するんだ。殺人事件が発生したとな」


———————

泣き声の主である少女は泣き疲れたのかすっかり寝てしまったため、片手に戦利品の袋を持ち背中には少女をおぶっているという状態だ

正直重くてしんどいが、緊急事態である今そんなことを言っている余裕は全くない

「夏樹伍長、リン軍曹はどうしたんだ?……その子は!?」

「あなた……!!その子、ミラちゃんじゃないの!!血塗れになって、どうしたんだい!?」

予想していたが門をくぐると、大騒ぎだ

商店街でよく買い物をしているおばちゃん、警備兵のヨクドル准尉が慌ててやってくる

「街道で、少し ……」

「幸平……?その子は」

ラングレイさんが駆け寄ってきた、今日は休日らしく日課の巡回をしていたところなのだろう

「確か今日はリン軍曹と共同の任務だったはずだな、それに……その子はエルオーサ家の御息女だったか」

「ミラちゃんって言うんですか?魔物討伐の帰り道で泣き声が聞こえて慌てて駆け寄ったら、街道が血の海になっていて……」

「分かった、報告は駐屯地で聞くことにする。リン軍曹は無事なんだな?」

「はい」


——————


駐屯地の会議室、ラングレイさんが兵士達を集めて俺に報告をさせる

正直、こんなに『目立つ』場所で報告をするなんて生まれて初めてというか全校集会ですら表彰されたりとかスピーチをした事も無いので結構緊張するがそんな事を言っている場合ではない

「まず、何があったんだ?簡潔に頼む」

「魔物討伐の帰り道、子供の泣き声が聞こえたので慌てて泣き声の元へ駆け寄ると街道にバラバラにされた死体がありミラちゃんがそこで泣いていました……死体は目測で3人分。ミラちゃんの保護を優先と判断したリン軍曹は現場に残っています……それから、殺人事件が発生したと報告しろと言伝を受けました」

兵士達がざわつきはじめる、城下町の外……フィールドと呼ばれる場所での殺人は街道などの目立つ場所では行わないのがセオリーだからだ

それに、死体の状態からしてそれほど時間が経っていない……魔物は血の匂いに引き寄せられるためミラちゃんが無事だった事から考えてもそれほど時間は経っていない

だとすれば事件が起きたのは任務完了直後……4時前くらいか

あまりにも大胆すぎる

「殺人事件だと!?そう言ったのか……!!死体はどんな状態だった?」

「首や脚部、胴体などに分けられ分割されていました」

「なるほど……腕や脚、下腹部は食事を目的としているなら持ち去るはずだ。ありがとう、朝から魔物討伐で大変だっただろう!今日はもう休んでいいよ」

普段なら、ここで退勤をしてから自主練をして食事をして寝るところだが

血塗れのミラちゃんを思う……恐らく被害者はミラちゃんの家族だ、目の前で家族を殺された

野生の怪物である魔物が相手ならあまりにも不幸な事故、しかし家族は人間に殺された……目の前でバラバラにされたのだ

「待ってください!!俺も、この事件に加えてください!!」

「……地球という星の人間は、余程働き者らしい。捜査及び犯人の討伐には幸平、君も加える予定だ。だが君はもう休むんだ……疲れた身体じゃ頭は働かない」

国立軍……なんてホワイトな職場なんだ

なんていうか、訓練はハードだけど寮は完備だし社会保険もしっかりしてるし医療費は全額免除だし昇給もしっかりしてる……日払い対応なのも嬉しい

実はすっごい良いところに勤めているんじゃないか俺


———————


ノックの音、オルバックさん以来の来客だ

「はい、開いてますよ」

「失礼します」

幼い子供の声、思わず振り返る

そこには昼間の泣き声の主、ミラちゃんが立っておりその傍にはリン軍曹と飯島さんが困ったよな表情をしている

「リン軍曹!!良かった、無事だったんですね……飯島さんも、ミラちゃんを連れて……」

「血の匂いに釣られて魔物が2〜3匹出てきて焦ったけどな、恵さんが突然現れて一瞬で片付けてくれた」

なるほど、彼女を敵に回してはいけない事がよーく分かった

「お兄ちゃん、恵さんも勇者なんでしょ!?お話に出てくるの!!別の世界からやってきた人は勇者っていって悪いヤツをやっつけてくれるんでしょ!!」

ミラちゃんが力強く言う

「どうしてもって言うから連れてきたんだけど……疲れてるでしょ?」

「いや、平気……でも勇者だなんて柄じゃないよ俺は。そこにいるリン軍曹と剣の腕も変わらないし、試合じゃ時々負けちゃうし飯島さんになんか全然勝てない」

「でも……でも……」

ミラちゃんは目に涙を溜めると、言葉を絞り出す

「夢を見たの、アタシ……パパとママが、苦しそうに叫ぶの……助けて!!って、お兄ちゃんが早く逃げろって……頭から離れないの!!ずっと、声が聞こえるの!!」

俺は彼女の家族が殺される瞬間を見たわけじゃない、見たのは人の形を失い変わり果てた姿だけ

思えばあの死体……いや、彼女の家族は身なりの良い格好をしていた

楽しい家族とのお出かけで、生まれて初めて武器を向けられて斬りつけられた

誰もいない街道で、誰にも届かない助けを求める叫びをあげた両親と溺愛する妹を助けるために逃がそうとする兄の姿を彼女は見たのだ

愛する家族が人の形を失うまで、ゴミのように斬りつけられる最期を彼女は目撃したのだ

「ミラ……ちゃん。俺は勇者じゃない、でも俺はこのお城の兵隊さんだよ。リン軍曹にだってたまに負けるけど、リン軍曹はすごく強いんだ!そのリン軍曹にも俺はたまに勝てるんだ!!安心して、ミラちゃん」

「うん、私も手伝うよ!!その強いリン軍曹に勝てる夏樹くんよりもずっとずっと、私は強いし!!」

「だから安心して、ミラちゃん!俺たちが絶対に犯人を捕まえるから!!」

ミラちゃんが俯き肩を震わせる、ワナワナと怒りを吐き出すように

「捕まえるんじゃダメなの……殺して!!」



続く

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