第２話『贖罪』

　『サイコパワー』……日本語にすれば、どこか安直に聞こえるが、この概念を言い表すには妥当だろう。

　『ランドパワー』『シーパワー』という地政学用語がある。

『ランドパワー』は、国家が持つ陸地の力、陸地開発能力や農地などの生産能力、そして陸上の軍事力を包括した総称であり、ロシアや中国などが『ランドパワー』が強い国と言われる。

　一方『シーパワー』は、海上輸送能力や、海上における軍事力を包括した総称であり、日本やイギリスが『シーパワー』の強い国と言われる。どちらも、イギリスの政治家兼地理学者のハルフォード・マッキンダーが提唱した言葉である。

　後に『エアパワー』という言葉が提唱される。戦闘機などの空軍力や、航空輸送能力だけでなく、人工衛星技術などの宇宙関連の能力も『エアパワー』に含まれる。

　この３つの地政学概念に、もうひとつが付け加わるとするならば、それは『闘波』による『サイコパワー』だろう。

　人々の深層心理に訴えかける力。他国から信頼や理解を得る力、他国と友好を築く力。国際社会で優位に立てる魅惑の力である。この『サイコパワー』の重大さを知る一部の国家は、精神世界という領土を求め、策を張り巡らしていた。

　手段はただ一つ。有力な『闘波使い』を、他国より多く有することであった。

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