第11話 傷と敵対組織
敵対組織、いずれできるとニュースになっていた。
その参加すると予定の企業の中に、私が元々つとめていた会社と、元彼がつとめていた会社が入っていた。
気が付くと、私はもっていた新聞をビリビリに破いていた。
ダークが家に戻ると、破かれた新聞を散乱させ、呆然としているマイを発見する。
彼女の手には破いたであろう新聞の切れ端が握られていた。
呆然とする彼女から聞くのをためらい、彼女の過去を思考を読みとることにした。
読みとった結果、新聞からかつて自分の働いていた場所と、元彼の働いている場所が、現在自分達の敵対組織の作成に参加しているのを見たというところが強烈に残っていた。
ダークはこの新聞を早々に処分しなかった過去の自分に内心罵声を浴びせる。
そして、呆然としているマイの目の前で手を振るが、反応がほぼない。
舌打ちし、残った新聞の破片を彼女から取り上げ、抱き抱えて寝室へと向かう。
ベッドに寝かせて、耳元で囁く。
「今は、眠れ」
その言葉に、何らかの効果があったのか、マイは目を閉じ静かな寝息を立て始めた。
眠るのを確認すると、下にあった新聞などをかき集め、Dr.の部屋へ一瞬で移動する。
「おい、邪魔するぞ」
「おわぁ?! ダーク様どうしました?」
「凡ミスした、一つずつならともかく一気に二つはきつかったようだ」
「どういう意味で?」
Dr.が首を傾げると、ダークは新聞をどさっと、空いたスペースにおいた。
「今後は新聞かってきても注意しなければな」
「あ――なるほど、過保護ですねぇ」
「悪かったな」
「いやいやぁ、悪いことはありませんよぉ、かつてならダーク様に殴り飛ばされたり痛いのが多かったですから、行動の刺激は相変わらずですけど、自分が痛いのが実験以外では減って助かって――」
「よし、首をもいで欲しいんだな?」
「なんでそうなるんですかぁー!!」
Dr.の実験室から彼のギャーという叫び声と、楽しそうなダークの笑い声が響いた。
施設から戻ると、寝室に向かい寝ているマイにダークは近づく。
手など体を確認し、自分を傷つけていないのをみると安心したように息を吐く。
そして、耳元で再度囁く。
「起きろ」
その言葉に、マイの目がゆっくりと開いた。
頭がぼんやりとする。
何か見ていたような気がするが、記憶がおぼろげだ。
新聞を見ていて、何かを見た気がするが思い出せない。
ぼんやりと上を見上げると、彼が少し不機嫌そうな顔でこちらを見てた。
「あびゃぁ!?」
いつものように奇声を発して飛び起きる。
何かまずいことをしちゃったのかと、内心震えながら。
「あ、あの……」
「何をしてたか覚えているか?」
「す、すみません……覚えてないです……」
怖々と、事実を語ると、何故か彼は安堵したような息を吐き出した。
「そうか、それならいい」
みない方がいいものでもあったのかと内心困惑しながら、私は何も言えなかった。
「貴様は私が許可だすまで、ニュースとかを調べるのはやめろ。私達の活動に関わることはな」
「は、はい……」
彼の言葉には何か強制力を感じた、普段はこんなことは滅多にない。
私が記憶が曖昧になる理由がそこにあるのだと感じると、私のメンタルがやられかけたのではないかと感じた。
理由は解らないけれど、それを気にしてるのなら、優しい彼ならそういうのも納得する。
でも、弱すぎる自分にまた嫌気がさすのも事実。
「マイ」
「はい?!」
突然名前を呼ばれて現実に引き戻される。
「余計な事を考えるな、貴様は貴様の心身の保護だけを考えろ、いいな」
「は、はい……」
強制力は感じない、けれども、私の体と心を気にした言葉に申し訳なく思う反面、嬉しく思う自分がいる。
本当に自分は恵まれていると感じて、申し訳なさとうれしさが入り交じった複雑な気持ちになる。
「あと、今日はテレビをつけないほうがいいな」
「はぁ……」
「では、私は出かける、貴様はいつも通りにしておけ」
「うん……」
彼がいなくなると、私はいつものように施設に赴き、植物の世話を開始する。
音楽をかけて、植物に話しかけるいつものお仕事。
退屈かもしれないけど、今の私にはちょうど良い仕事なのだ。
「……」
深夜、完全にマイが眠りに付いたことを確認すると、ダークは施設へと向かった。
Dr.の研究室へと移動する。
「ダーク様、どうしたんです?」
「ちょっと、これをな」
そういってモニターをつけるとニュースが流れる。
「このニュース治安維持と銘打ってますが、私たちへの敵対行動ですよね」
「そうだ、愚かな行動だ、でマークをつけた奴の顔を覚えておけ」
「はい?」
マークをつけて表示されたのは若い男性と、50代程の男性だった。
若い男の方は、依然マイの前に姿を現した彼女の『元恋人』だった男だ。
「マークをつけたの二人程ですネェ」
「若い方がマイの『元恋人』、もう片方が『元上司』だ。マイを追いこんだ元凶だ」
若干苛立ったような口調でDr.につたえると、Dr.はなるほど、といわんばかりの顔でうなづく。
「この二人、調べればいいんですねェ」
「その通り、この二人には地獄を見せてやると決めていたのでな、特に『元恋人』は姿を見せたあの時点で特に念入りに地獄送りにしてやると決めたのでな」
「うわぁ、ダーク様こわいですねェ……いや冗談じゃなくマジで!」
邪悪で、機嫌の悪さを隠さない表情に、Dr.はひえっと悲鳴を上げる。
「悪かったな」
「いえいえ、寧ろ久々に見たので。あっちにいるときはよくその表情になってましたから、何というか実家に帰った時の安心感といいますかァ」
「馬鹿にしてるのか?」
「いえいえ!! めっそうもございません!!」
普段から血色の悪いDr.の顔がますます血色が悪くなる。
「ダーク様の根っこが変わってないのに安心しただけですよォ」
「私が変わったと?」
「私から見れば、十分変わりになられたと、やはり『恋人』ができたのは大きいように見えますよォ。以前なら『恋人』を作ること自体考えられませんでしたから」
Dr.の言葉に、ダークはそうかと返した。
「壊れている彼奴に『恋人』になってやるといいだしたのは私だ、到着した直後のな」
「その時点で驚きですよ!! 美人かと聞かれたらどっちかというと可愛い系で理知的ではないけど、迷惑のかからない面白い感じの子が好みだったんですかァ?」
「あ――かもしれんな、向こうは美人だろうが可愛かろうが、ほぼ全員ねじがぶっとんで迷惑かけられたからな」
「なるほどォ」
Dr.はダークの台詞に、かつての『世界』を思い出したのか納得したような顔をする。
「ア―確かに美人だけど、可愛いけど、だいたいダーク様に迷惑かけようとしてきてますよねェ、悪意だろうが何だろうが」
「マイは迷惑をかけることを申し訳なく思ってるからな、かつての女共にかけられた迷惑と比べたら、比較しようもない程かわいいもんだぞ」
「でしょうねェ」
Dr.はそういってモニターに視線を戻す。
「しかし、いろんな企業やらが参加してますねェ、いやはや楽しくなってきましたよォ」
「そうか、ならいい」
Dr.がけたけた笑いだしたのを見て、ダークも漸く本来の邪悪な笑みを見せた。
「それにしても、まさかカオルの件、まさかバレるとは思わなかったぞ!」
「私もですよォ!! だって姿も全部隠すバトルスーツですし、声も変えてるしスタイルだってごまかしてましたしィ!!」
「最後の発言カオルにいったら殴られるだけじゃすまなそうだから言うなよ」
「はいィ……自分でも言っててそう思いましたァ」
「まぁ、奴から情報は漏れないようにはなってるし、大丈夫だろう」
「なるほどォ」
ダークはモニターを消すと、ニヤリと笑った。
「どっちにしろ、組織としては以前程ではなくとも、楽しい戦いになればいいな」
「そうですねェ……!! ああ、色々試したいィ!!」
「相変わらずだな」
Dr.の奇声もいつものことなのか、苦笑で返す。
「さて、では派手にやろうではないか」
「はい、勿論ですゥ!!」
嫌な記憶は忘却するに限る。
それで、傷つくと、余計に傷をふやすことになるのだから。
だから傷は増える前に、その元は根絶やしにしなければならない。
もしくは、傷つかぬ程に、心を強くもてればいいのだが、それを求めるのは荷が重すぎる。
ならば、私がそうならぬよう、支えるだけだ。
壊れぬように、支え、傷をつくらせるものは根絶やしにするだけだ。
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