第11話~一緒に~

 そして、ついに…。

「脚本、完成!!!」

「お~!!」

「おめでとう、ゆずり!!」

「ありがとう、咲楽、楓くん。」

 昨日、やっと完成した脚本を五紀たちに見せて、何とか間に合った。

「それで、二人にお願いしたいことがあるんだって。今日の放課後空いてる?」

「うん、大丈夫よ。」

「俺も問題ない。」

「じゃあ、放課後、五紀の学校に行く感じで。」

「了解~。」

 そう言ってるとチャイムが鳴った。ああ、早く放課後にならないかな…。


 そして放課後。五紀の学校の前まで行くと、三人が待っていてくれた。

「みんな、お待たせ。」

「そんな待ってないぞ~。」

 声をかけると、五紀がそう答えてくれた。

「うわ!またかわいい子が来た~、お隣は彼氏さんかな?」

 陽太くんは通常運転だな~。あ、新くんが頭叩いてる。

「聞いてただろ、事前に!全く。とりあえずここじゃなんだし、ファストフードの店で話そうか。」

「それもそうだな。」

 そう言って二人は歩きだす。こっちの二人はポカンとしてる。

「ごめんね、これが普通なの…。」

「なんか、あの二人、濃いね…。」

「これが普通か…。なんか楽しそうだな五紀。」

「毎日大変だ…。後チャラいのは本当にチャラいだけだから気にすんな。」

「そ、そっか…。とりあえず行くか。」

 そう言って二人を追いかける。確かにこの二人といると楽しそうだもんね。


 注文を済ませて席に着く。ポテトを食べながら話は始まった。

「えっと、単刀直入に言うと、二人に俺たちの卒業制作に出てほしいんだ。」

 新くんはそう言う。

「え、で、でも、俺たち学校違うのに、いいの?」

 楓くんの言葉に咲楽も頷く。私は何となく想像してたから驚かなかったけど、二人と同じ意見だ。

「いや、実は俺たちの学校で募集掛けたんだけど…。」

「誰も応募してくれる人もいないし、そもそも恋愛系なのに女子はいないからどっちにしろ女子は他校にお願いしないといけない。」

「そこで、ゆずりに聞いてた二人に白羽の矢が立ったわけだ。」

 三人は口々にそう言う。

「…う~ん、それは分かるんだけど…。」

「ね、ねえ、聞いてもいい?」

 咲楽は手を挙げてそう言う。

「ゆずりじゃダメなの?」

 そう言われて、三人は顔を合わせる。

「「「確かに!!」」」

 私も考えてなかったから、頷いてしまった。

「でも、ゆずりは良いのか?」

 五紀は私に気遣ってそう言う。

「う~ん…。」

「ゆずりかわいいしさ、相手役、五紀くんならいいんじゃない?」

 咲楽にそう言われて、チラッと五紀を見る。かわいいはともかく…。

「五紀が、いいなら…。」

「五紀ならいいと思うぞ!」

 そう言ったのは陽太くんだった。

「五紀もいつか撮られる側も経験したいって言ってたもんね。」

「お、お前ら…。」

 二人に言われて、五紀はそう言う。それから、私のほうを見る。

「ゆずり、やってくれるか?」

 正面からそう言われる。

 脚本をお願いされて、引き受けた時、五紀を何かやってみたいと思ってた。でも、それに自分が出ていいんだろうか…。

「なあ、ゆずり。」

 優しい声でそう言ったのは楓くんだった。

「お前と五紀が一緒に映ることってないじゃん。ほら、五紀はお前のこと撮ること多いけど、二人で取ることはないだろ?」

「うん。」

「ならさ、たまには一緒に映るのもいいんじゃないか?俺たちも協力するから。」

 楓くんの言葉に気付かされる。そうだ、五紀と一緒なんてほとんどない。なら…。

「やって、くれるか?」

 不安そうに五紀は言う。そして手を差し出される。私は心を決めた。

「…うん、頑張るよ。」

 そう言って手を取ると、五紀はパッと明るい顔になった。

「やった!主演決定!!」

「二人も、友人役とかで出てくれると嬉しいな。」

「「はーい!!」」

 そう言って私たちは、映像を撮り始めることになった。

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幸せな日々 雪野 ゆずり @yuzuri

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