第9話~悩み~
五紀たちに脚本づくりを頼まれてから一週間。なかなかうまく出来ず悩んでいた。
「はあ…。」
「どしたの?」
脚本を書いているノートをにらみながら、ため息を吐くと咲楽が肩を叩いた。
「あ、咲楽…。」
「最近おかしいよ。ずーっとノート見てるし…。」
咲楽は心配そうに私を見る。
「ごめんね、心配かけて…。」
「いやいや、謝ってほしいわけじゃないけど…。困ってたら相談してほしいな。」
そっか、相談…。五紀には特に相談しちゃいけないとは言われてないし、思い切っていってみようかな。
「咲楽、お昼休みでもいい?ちょっと長くなるかもだから…。」
「オッケー!あ、楓も呼んでいい?心配してたから。」
「いいよ。」
私が頷くのを待っていたのか、そのタイミングでチャイムが鳴って、咲楽は席に戻って行った。
そしてお昼休み。屋上で食べたいという咲楽のリクエストで、私たちは屋上に向かった。
「いや~、誰もいないね!こんなにお天気良いのに。」
「まあいいじゃん。ゆずりもこのほうが話しやすいだろ。」
「うん、ありがとう。」
もしかすると、咲楽、気を使ってくれたのかな?まあ、聞かないほうが良いよね。
「さ!ゆずりの悩みは何かな?」
「あ、えっとね…。」
ご飯を食べながら、五紀に頼まれたことと、今の進捗を見てもらった。
「ゆずり、これ、一人で…?」
読み終わった二人は、心配そうに私を見る。
「えへへ…。たまに五紀に見てもらってるんだけどね。それに今日は進捗報告会に行くの。」
笑顔で言ったけど二人はため息。あ、あれ?もしかして、おかしなところあった?
「ゆずり…。」
「は、はい!」
楓くんに肩を掴まれて、ちょっと緊張する…。
「この話、めっちゃいい!」
「へ?」
楓くんは笑顔だ。咲楽のほうを向くと、グッドサインをしてくれた。
「初めて作ったんだろ?」
「う、うん…。」
「すごいな…。でも、一人でよくやったよ。」
「ほんとだよ!一人でここまで大変だったでしょ?よくやったよ。」
咲楽は頭を撫でてくれた。嬉しい…。
「よかった~、まだ四分の一くらいだけど、ここまでおかしくないなら今日は胸張っていけるよ!」
私は少し力が抜けた。ほんと、よかった~。
「ところで、なんで受けたの?」
「え?」
「あ、それ、俺も気になってた。ゆずり断りそうっていうか…。あ、変な意味じゃないぞ!なんて言うか、ゆずりってこういう目立つことってしないじゃん?だから、意外っていうか…。」
そう、私は目立つことは大嫌いで、普段の私なら、こんなこと絶対しない。
「その、五紀と、何か作ってみたかったの。」
顔がカーっと熱くなるのが分かる。
「五紀、いつも私を撮るんだけど、そうじゃなくて…。最初から、一緒に作るのは初めてで…。だから、お願いされたとき、嬉しかったの…。子供みたいでしょ?」
「そんなことない。そう思うことは普通だよ。」
咲楽は私の目を見て言ってくれた。笑われるかもって思ってたから、ちょっとびっくりした。
「作り上げられるといいな。」
楓くんもそう言ってくれる。
「何かあったら言ってね!できることは手伝うから!」
「二人とも、ありがとう!」
そんな話をしていると、予鈴がなってしまった。放課後、五紀たちに伝えなくちゃ!
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