第4話 普段の幸せ

~ゆずりの思い~

 放課後、五紀にメールを送ろうと携帯を開いたら、先に五紀から来ていた。どうしたんだろう、五紀からなんて珍しいな…。そう思ってメールを開いた。

『悪い!!先生に呼び出された!終わったら連絡するから待っててくれ!』

 よ、呼び出し!?い、五紀、何か悪いことでもしたの?それに、『待ってて』って、五紀が帰り遅くなる時は『先に帰ってて』って言うのに…。

 何か、あったのかな?

『分かった、待ってるね!ってか、呼び出しって、何かしたの?心配だな~。後で話聞かせてね!』

 そうやって返したけど返信はなかった。もう、先生の所行ったのかな?

 とりあえず、何か他の事をしてないと心配で居ても立っても居られないから、勉強でもしてよ…。

 でも、結局勉強なんて出来なかった。最終下校時刻ギリギリになって五紀からメールが来た。

『遅くなってごめん!やっと終わったから、迎えに行くな!』

『大丈夫だよ。じゃあ、校門の前で待ってるね。』

 ああ、心配だー!と、とりあえず荷物まとめて教室でよう!

 そんな感じですごく心配してたのに、五紀ったらすごいいい笑顔で迎えに来るんだもん。心配して損した。

「お疲れ様、何かいいことあったの?」

「ああ、すげーいいことあったんだよ!なんだと思う?」

 う、出た!五紀のいつもやるやつ!でも、いつも以上にいいことあったみたい。うーん、当てたいなあ…。あ!

「分かった!前にコンテストに出したって言ってたあの映像、いい賞取ったんでしょ!」

「正解!!さすがゆずりだな!」

 そう言って五紀はとびっきりに笑顔を見せてくれた。

「ほんとに!?おめでと!!」

「ありがとう!ほら、これ通知書!」

 そう言って五紀は見せてくれた紙には『最優秀賞』と書いてあった。

「わあ!最優秀賞って一番いい賞じゃん!すごーい!」

「へへ、すごいだろ!」

 そう言う五紀はとってもかわいくて思わず周りの人に「うちの彼氏かわいいでしょ!」って言って回りたい!あ、とりあえず明日はなびには自慢する。「五紀すっごく可愛いんだ」って。

「こんな賞もらったのゆずりのおかげだ!ほんと、ありがとな!」

「え?なんで、私のおかげ?…あ、そう言えば、今回の作品ってどんなやつなの?」

「へ!?あ、いや、その…こ、こんどな、今度!」

 あ、あれ?なんで教えてくれないの?作ってるのは知ってたけど、まさか変なやつなのかな?

「え~?教えてよ~!」

「…恥ずいんだよ~!」

 は、恥ずかしい?

「賞取ったのに?」

「うっ!…わ、分かった。いつか見せるからちょっと待っててくれよ…。」

「?分かった。」

 どうしたんだろう?話、変えたほうがいいよね。

「でも、ほんとすごいね!この通知書、英語で書いてあるしもしかして海外のやつなの?」

「え?あ、ああ、そうなんだよ。先生がネットで調べて応募したらしくてさ。」

 そう言ったとき、つないでた手に力が込められたのが分かった。

 クリスマスのイルミネーションがあたりを照らす中、五紀はいつもと同じように笑ってるのに、何か悩みがあるのかいつもと違うよって教えてくれた。

「…どうかした?」

「…いや、何でもない!」

「そっか!」

 そう言うのに五紀の手には痛いほど力が入っていた。でも、言いたくないよね。だから平気な振り、してるんだよね。なら、何も聞かないよ。

 でも―

「頑張りすぎないでね。」

 そう言って私も五紀の手を握り返す。頑張りすぎて、五紀が壊れちゃうのは、いやだよ?

「分かってるよ、なんかあったらちゃんと言う。…ありがとな。」

「うん、分かった。約束だよ?」

「ああ、約束。」

 そう言うと空から天使の羽のようにゆっくり、私たちに振ってくるものがあった。

「お、雪だ!」

「きれいだね…。」

 私たちはしばらく見入ってしまった。

 きれいなイルミネーションと、そのイルミネーションの光を受けてきらきら光る雪は、恋人たちをまるで見守るかのように、優しく包み込んでいた。


~はなびの思い~

 放課後、いつも通り駐車場で柳を待つ。でも、いつもの時間になっても本人来ないし、メールも来ない。心配になって私からメールをする。

『いつもの所で待ってるけど、まだ来ないの?』

 そう送ると、すぐに『教室に来て』と返信が来た。どうしたんだろう?

 心配ですぐ教室に行くと柳が机に突っ伏してた。

「どうしたの?」

 そう言って声をかけると柳は顔を上げた。

「んー、ちょっと…ごめん。」

「ん、なに?…ん!!」

 いきなり柳にキスされた。そんなに長い時間ではなかったけど…。

「え?なに?ほんと、どうしたの!?」

「いや、疲れたから癒してほしかっただけ。」

「そ、そっか。」

 そう言って少し沈黙。そのうちに柳が話し始めた。

「俺さ、最近生徒会のやつに悪口言われててさ…。もう、苦しくて…。」

「そうだったんだ…。」

 苦しくなっちゃったって事は、結構前からだったんだよね。全然気づいてあげられなかった…。

「だから、さっきので充電させてもらった。」

 なのに、そんな顔で笑ってくれる。優しすぎるよ…。

「…充電できた?」

「ああ、充分!」

「そっか、良かった。私が癒しになれたなら…。」

「…ありがとな。はなび。」

 そう言って頭ポンポンしてくれた。

「えへへ、ありがとう。これ大好き。」

「はは、知ってる。」

 笑ってるくせに、笑ってない。少しでも、笑顔になってほしくて私は柳の頭をわしゃわしゃした。

「ちょっ、髪ぐしゃぐしゃになるだろ~!」

「えー?たまにはいいじゃん!」

「良くない!ったく、仕返しだ!」

 そう言って柳にわしゃわしゃし返された。

「きゃー、やめてー!」

「ははは、可愛いなあ、お前。」

 そう言ってやっと笑ってくれた。

「あ、やっと笑ってくれた!良かった!」

 私がそう言うと柳はびっくりしたように目を見開いた。それから少し優しい顔をしてから笑った。

「やっぱお前といると楽しいわ!」

「そ、そうかな?…あ、そろそろ玄関しまっちゃう!帰ろ!」

「おう!」

 ふう、良かった、柳が笑顔になってくれて…。やっぱ柳は笑顔が一番!

 そう思って一人でニコニコしてると…。

「…い、おーい、はなび!」

「え?」

「聞こえてたよ…。」

「え?な、何が…?」

 ま、まさか…。

「ははは、まさかって顔してる!『笑顔が一番』って聞こえたよ!」

「う、うそでしょー!」

「俺が嘘つくと思うか?」

「う…もー、今日は色々やんなっちゃう!」

「ははは、悪いって!でも、ありがとな。」

 そう言われちゃうと、許すしかなくなっちゃうじゃん…。

「いいよ、でもその代わりに、罰を与えましょう!」

「え?な、何?」

「何かおごりなさい!」

「あ~、はいはい…。」

「やったね!」

 こんな風に、たまにごちゃごちゃしちゃうけどこれからもずっと二人で支え合っていけるといいな…!

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