第6話 ナイチンゲール

パパは愛人と戯れることが楽しくて一緒にいるんでしょう?

ママとは違う感覚だから、そうしていたいんでしょう。

どうして軽井沢には連れて行かないのかしらね。

うん。ママと一緒でなければ平気なんじゃないかしら。

私は嫌だけどね。パパの気持ちがわからないのよ。


パパは軽井沢では、とてもリラックスしてるわね。

掃除をしたり料理をしてる時、ふと浅間山をベランダから確かめるように見ながら。

ママだってそうじゃないかしら。朝は遅くまで寝ていて、パパが用意したブランチをとり、本を読んだり外に出たり。


夕食は3人一緒で、少しワインに酔ってなのか昔話をするとママは頷くように聞いてるの。

ママはそれで幸せそうな顔をしていたし。薄化粧だったからカテロラリーにもcupにもグロスがべったりとつくことはなかった。


・・・・・・・


愛人は、時々「私の目を盗んで」パパとどこかに行くのよね。

ある日、私は足音が聞こえないようにこっそりと2人の後をついて行ったの。

こんな外で何をするのよ・・・もっと近づきたいのだけど、葉っぱの隙間から目を凝らしていたら、ふーん。


愛人ったら外でも声を出すんだから。

小枝でデルタゾーン、ん、どこかしら。

そうね、黒い繁みをパパがかき分けるように、されるがままになっている。


「ああ、あっ。あっ。」

いつもとは違う声を震わせるように出しながら

「あな・・・た。ああ。もっと。もっとよぉ。」

そんなにせがんでは、パパが困るんじゃなくて?

パパは汗が出てるじゃないの。


「あっ!」

風の悪戯で、私のかぶっていた帽子が飛ばされて、パパに見つかってしまった。

いつもは優しいパパなのに怖い顔をして近づいて来るから、私、体が動かなくて。

「見ていたのかい?」

「・・・。」

「手を出しなさい。」

私は怖くて言うとおりにすると小枝で手を叩かれた。

愛人は自分がされたかのように体をビクッとさせる。

麻縄で胸を二捲きされて木にもたれていた彼女は、桃色の乳首をたてながら、こう言うのよ。

「いけない子ねぇ。あっちにお行き。」


悔しい。

私は走って、そこから離れ、彼女の部屋に行くとドレッサーの中から白粉と口紅を出して鏡を見た。

ベルトがあったから胸に巻いてみる。

こうすれば、パパは私に小枝を使ってくれるかしら。汗をかきながら、手でなくて彼女にしたようなことを。


・・・・・・・


ある夜、愛人の部屋に近づくと声が聞こえてきたの。


”西からの風よ

いつ吹くのだろう

小さな水滴が落ち 雨となる

今もまだ 愛する人を繋ぎ止めていられたなら

きっと私は ベッドでまどろんでいたはず”

(映画『ブーリン姉妹』の中から)


壁にもたれて歌う彼女の涙が頬をつたう。

驚いたわ。でも、哀しいわけでもないようにも見えた。



・・・ナイチンゲール(夜鳴き鳥)が鳴くから帰る

貴方は私の手にキスをして頬に触れる

それでも振り返ることなく部屋を出ていく


私も泣きましょうか

そうしたら貴方はどうするのかしら


窓を開けると風

ほら、こんなに体が震えてる

熱くなりすぎた体を鎮めるためにベッドで

まどろんでいたかったのに


ナイチンゲールが鳴くから 鳴いてしまうから・・・貴方は帰る


私は自分でシルクのガウンを羽織るしかないの

次に愛する貴方が来ても同じこと


私はもう 泣かないわ 泣かない・・・わ



貴女は夏にブルーベリーを食べるべきだったわね。

でも、私ね、本当に驚いたのよ。

貴女が、とても可愛く見えたの。


どうしよう。

ブルーベリーを「Lotus」を1粒、口に入れてあげましょうか?

ううん。貴女にはあげない。


あら、金魚が。

下から私をつつくのよ・・・ほら、今度は赤い金魚が近づいてきたわ。

水面に移る月が揺れる。

その月の黄色くうっすらとした灯りで、黒い金魚も見えるわ。

私もね、揺れるのよ。揺れるlotusよ。


ねぇ、金魚達、私は?

私は可愛いのかしら?


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