第8話 ひきこもりの休日 そのにっ!
「・・・ったく。なんだってんだよ」
まだまだ夏の暑さの野郎がガンガンにガンをつけてくる今日この頃。俺はある人と待ち合わせをしていた。
まあ待ち合わせといっても彼女と、とかではなく相手は姉なんだがな。
それも、ひきこもりの。
ひきこもりがこんな人の多い駅前に出てきて大丈夫か、と疑問に思う人もいるだろう。が、考えてもみてほしい。アニメやマンガにでてくるひきこもりのような行動が、現実でとれると思うか?まあ無理だろう。
『自分の部屋に一日中いたってなんも楽しくないよ。』
とは、現役ヒッキーの姉の言葉だ。信憑性は高い。
とまあ、こんな非生産的なことを考えてしまうくらい今の俺には心の余裕がある。
・・・ぶっちゃけ、まあヒマなんだわ。
昨日約束した姉との待ち合わせ時間は九時。
わっと たいむ いず いっと なう?
ハイ八時二十分いただきました。
なぜ俺がこんなにも早く待ち合わせ場所に来ているのかというと・・・かというと、俺にも分からん。朝早く姉さんのニーアタックでたたき起こされ、朝ご飯を口に詰め込まれたかと思うとお茶を流しこまれ、あれよあれよという間に家を追い出されてしまった。そしてその時間、八時二分。
えらく慌てていたが何かあったのだろうか。まあ、母さんもいるし変なことにはなってないと思うが。
「ごめ~ん、待った~?」
・・・ハッ!!後ろから声をかけられ、完全に宇宙の彼方へとんでいた意識が引き戻される。
八時二分からの記憶がない。あれから俺は暇すぎて、返事がないただの屍になっていたようだ。
「待ってないよ・・・・・・と俺が言うと思ってそのセリフを吐いたのなら、残念だったな。一時間近く待ってやったぞ」
文句を言いながら振り向くと、やけに気合の入った服装をしている遅刻魔がニヤニヤしてやがる。
女の人は準備に時間がかかると言うが、遅れてきてこの態度はないだろう。
今日の服?
似合ってるよ、チクショウめ。
「どうよこの服?かわいいと思わない?」
「あーはいはい。すげーかわいいよー」
「か、勘違いしないでよね!別にアンタのために着て来たんじゃないんだからねっ」
「いや、何でここでツンデレ放り込んできた。・・・昨日もだったけど、テンション高いな。何かあったの?」
「無きにしも非ず、ね」
どっちなんだよ。
「ま、いいわ。とにかくレッツゴーよ。ついてきなさい!」
「・・・あいあいさ~」
遅れてきたことなど微塵も気にする風もなく、今日も今日とて自由奔放。そんな姉の背中を追いかけるのが不肖弟の役目である。
人が多く、声のボリュームを大にしないと会話もできないのに、早くしなさいという姉の声だけはしっかりと聴きとれてしまう。これが弟の悲しい(?)性なのかね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます