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4月。入学式を明日に控え,発電協力に来ていた高齢者たちが体育館に集められた。
「皆さん,これまで本校の発電にご協力頂きありがとうございました。明日から新入生が登校しますので,生徒たちだけで電力を賄えると思います。また,来年の3月になりましたらご協力を――」
教頭がそう謝辞を述べると,どこからともなく声があがる。
「えぇー,私らここ来るの気に入っとったんだがなぁ」
「そうじゃそうじゃあ。孫がたーくさんできたみたいで楽しかったのに」
その様子を体育館の入り口辺りで見ていた松岡は教頭の元に駆け寄った。
「教頭先生。こちらの皆さんにはこれからも学校に来て頂けば良いんじゃないでしょうか。生徒たちもお年寄りとの交流を続けたいようですし」
その言葉に,教頭も迷いが消えたようだった。
「そうですね。ボランティアでお願いしているのでコストがかかるわけでもないですし,問題ないでしょう」
数日後の3限目。松岡は音楽室で授業をしていた。オペラ鑑賞の講義のために,モーツァルトの「魔笛」のCDを流していると。
バツン!
音が途切れ,代わりに何人かの女子生徒の短い悲鳴があがる。(新入生は入学したし,高齢者のボランティアも継続していて,発電量は十分なはずなのに…?)松岡は不思議に思いつつ,音楽室の生徒に静かに待つよう指示し,1人職員室に向かった。
松岡が職員室に戻ると,壁際に数人の先生たちのかたまりができていた。その奥には確か配電盤があったはずだ。
かたまりの中から,物理の沢井先生の声がした。
「んー,これは…ダメですね」
どうやら発電量が多すぎて,配電盤がショートしてしまったようだ。
停電は突然に 㼾-シカワラ- @y-w
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