第1120話 『森の精 作品15』 シベリウス

 この作品には、ふたつのバージョンが残されているようです。


 まず、『管弦楽のためのバラード』、とされる、演奏時間21分半くらいかかる、かなり大きな管弦楽曲。


 それから、ナレーターが入った、メロドラマ形式にされた、10分ちょっとのバージョンです。


 どちらも、1894年の作品とされます。


 スウェーデンの作家、ヴィクトル・ルネヴェルイさまのバラードによる作品で、管弦楽バージョンは、4つの部分に分かれ、前半は、主人公ビョルンさんのカッコいい森の中への侵入。


 後半には、森の精に誘惑され、最後に悲劇的な結末になる。という流れを、忠実に追ったという作品で、2年前の『エン・サガ』に匹敵し、さらに拡大した、大交響詩という風情であります。


 ところが、『エン・サガ 作品9』は、今日まで、長く、しかも、良く、親しまれてきましたが、『森の精』は、音楽を聴く限り、ちょっと複雑ではあるけれど、けっしてひけをとらない魅力がある(やましんにいわせれば、より魅力的)にも関わらず、なぜか、長く忘れ去られてしまい、カリ・キルペライネン先生による調査により、埋もれていた楽譜を、探し出して復元したうえ、1996年に、オスモ・ヴァンスカさま指揮により、復活演奏、録音されました。いま、聴いているのは、その世界初録音となったCDです。(BIS-CD-815)


 これには、メロドラマ・バージョンも、一緒に入っております。


 管弦楽バージョンの初演は、1895年4月17日とのこと。


 初演自体は成功だったようなので、なぜ、出版されなかったのかは、やましんには、わかりません。別のバージョンを、同じ年に作ったというのは、だから、再起を掛けたわけでもないと思われるので、なおさら不思議です。


 もしかしたら、ちょっと、一般には、長すぎたのかもしれないし、演奏がやりにくかったのかも?


 なかなか、前半の推進力は凄まじいのに対して、後半は表現が難しいかもしれないです。


 ラストの高揚は、かなり息が長く、力業的になるかも。


 ときに、深い森には、恐ろしい魔物が住んでいて、うっかり入り込んで、接触すると、破滅する、というストーリーは、デンマークの、ニルス・ガーゼ(ガーデ、ゲーゼ)さまの、カンタータ『妖精(王)の娘』に、似ています。


 森にまつわる音楽によるお話は、ワーグナーさまの『ニーベルングの指輪』や、ウェーバーさまの『魔弾の射手』、ドヴォルザークさまの『ルサルカ』、フンパーディンクさまの『ヘンゼルとグレーテル』、あたりも、有名です。シベリウスさまの、最高傑作のひとつ『タピオラ』も、具体的な物語ではありませんが、精神的に、森とは切れない存在でありましょう。


 ヨーロッパに、森は、必ず付いて回るようです。


 やましんには、未知の領域ですが、ゲームに『ヴァイスシュバルツ』『シュバルツシルツ』というのがありますが、そう言われると、『シュバルツバルト(黒い森)』を思い出しますが、それは、むかしむかし、『シュバルツバルトのウタちゃん』というお話を、ドイツ語の授業で読まされたことによります。



・・・・・・・・うつ 🌳🌲🎄🐻

うつ ・・・・・・・・



 

 

 


 


 


 

 

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