第943話 『フルートとハープのための協奏曲ハ長調 K.299』 第2回  モーツァルト


 昨日、なさけないですが、久しぶりに、ムラマツのフルートを叩き起こして、この作品の第2楽章を吹いてみました。


 なにしろ、結構長く寝ていたので、なかなか、鳴らないです。


 まあ、でも、そのあたりは、気は心でございまして、無理矢理、鳴かせてみました。


 で、痛切に思ったのですが、やはり、この作品は、ただものではない。


 たしかに、音楽的に、大きな問題を提起はしないし、革新的な音楽というわけではないかもしれない。


 多数のピアノ協奏曲や、クラリネット協奏曲イ長調には、歯が立たないかもしれない。


 アマチュアを念頭に書かれたという側面がありますし。


 しかし、それにしては、けっこう、難しいのです。


 当時のフルートは、まだ、未完成状態でしたから、なおさらではないか、と、思いますが、


 第1楽章や、第3楽章は、現代のフルートからしても、なだらかに、うまく演奏するのって、大変なんです。


 早いパッセージもあるし、下のdから一オクターブ跳ねあがったり、いや、もっと跳ね上がるところもある。かなり、長い伸ばしもある。息が苦しいぞ。


 指使いが、なかなか、難しいところも散見されます。


 でも、たいへんに、カッコ良いです。


 第1楽章の第二主題なんか、スッゴク美しい。


 ハープさまも、当時の楽器は、まだ半音階を自由に出せるものではなかったようですが、そこは、モーツァルトさま。フルートにしろ、ハーブにしろ、楽器の性能をフル活用します。


 で、第2楽章。


 頭から、非常に、スッキリとした、しかし、独特の雰囲気があるのです。


 あたまの主題は、単に美しい、と、いうのではなくて、天国か、異世界か❗なんだか、隠れ里みたいな。


 というような、深い神秘感さえ、漂うのです。


 中間どころに出てきます、高いdの音から、最低音のcにまで落ちるところなど、うまく演奏できたら、素晴らしい効果があります。(プロの方は、簡単そうにやりますが。)


 これ、なかなか、難しいです。


 短い中間部を挟んで、最初の主題が帰ってきまして、やがて、カデンツァが入ります。


 わたくしは、既存のカデンツァは、難しすぎることもあり、演奏する場合は、自作のカデンツァを使いました。


 それが、本道だとも、思いますし。


 で、カデンツァの後が、もう、独特の雰囲気で、ちょっと他に類がない、まさに、筆舌に尽くしがたい、深淵ななにかを感じるわけです。


 なんだか、不可思議な、どこか、厳かに、しんとした、でも、楽しい、独特の状態をきたします。


 まあ、たいへん、有名な音楽で、『いやしの作品集』てきな、寄せ集めCDなどにも、かなりの高確率で、採用される楽章です。


 ただ、わたくし思いますに、やはり、全曲の中にあってこそ、最大の効果を生むのだ。


 と、いうわけですから、せっかくなので、お忙しい方も、たまには、協奏曲全曲を聞いてください。


 そんなに、長すぎることは、ありません。


 30 分開けていただけば、良いのです。


 有名作品なので、録音は、山とあります。


 1778年4月に、パリで書かれました。


 発注したのは、ド・ギーヌ公爵さま。


 なかなかうでのたつ、アマチュアフルート吹きだったようですし、最新型の、良い楽器を持っていたのかもしれません。


 ハープは、娘さんが演奏し、これも、なかなかのうでだったらしい。


 普段、同業者に対しては、かなり口の悪いモーツァルトさまですが、このおふたりは、誉めていたよう(まあ、お客さまでもあり、)であります。


 いずれにせよ、こうした作品が残されたのは、人類には、大きな至福の宝物であります。 


 まだ、聞いてない方。ぜひ、生きてるうちに、聴きましょう。




・・・・・・・・・・ うつ 😢 うつ ・・・・・・・・・・ 

 


 


 

  


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